<SEALDsの運動に新しい歌はあったか?>映画『わたしの自由について~SEALDs2015~』を観て[茂木健一郎]
メディアゴン / 2016年6月8日 7時40分
茂木健一郎[脳科学者]
* * *
1960年代から1970年代にかけての「学生運動」の評価はさまざまだろうが、ひとつはっきりしていることは、その時代の気分を表している名曲がたくさんあったことだと思う。自由や希望といった未来への風が吹いた。
フォークソングは、日本でもアメリカでも、他の国でも、学生運動の象徴的存在だったし、運動自体がすっかり廃れて、輝きを失った今でも、それらの歌は、聞かれているし、映画などで使われることも多い。
なぜそんなことを思い出したかというと、昨年の安保法案の際に盛り上がったSEALDsを中心とする運動に「歌はあったかな」と考えたからだ。コールなどのリズムは、確かに新しい音楽性だったが、そこには、象徴的な歌はなかったような気もする。
映画『わたしの自由について~SEALDs 2015~』を見て、私は「SEALDsは新しい音楽だった」という感想を持った。コールの仕方や、打楽器などのリズムが、それまでの運動とは違う音楽だったのである。
【参考】 若者を無個性化させる「就活文化」の異常性
映画の上映のあとの討論会で、SEALDsのメンバーの方が、youtubeなどで、海外のactivityのやり方、コールのリズムなどを見て参考にした、と言っていた。そういえば、昨年シカゴで見た、パレスチナに関するデモンストレーションと、音楽が似ている気がした。
リズムなどの音楽性においてはSEALDsは確かに革新したが、その一方で、象徴する歌がなかったのは、運動の力の足りなさか、あるいは、そもそも、音楽というものがそういう位置づけになっていない時代なのか、私にはわからない。
一方で思うことは、ジョン・レノンの「Imagine」や「War is over if you want it」や「Give peace a chance」のような、ラブ・アンド・ピースの思想は音楽になりやすいけれども、少数派を迫害するヘイトは、音楽になりにくいということだ。
少数派のやつら、お前ら出ていけ、たたきだぞ、みたいな歌詞が人の心を動かす音楽になるとは、どうも思えない。ラップはどちらかと言えば体制に対する異議申し立てで、体制寄り添いは音楽にならない気がする。
ヘイトなどの少数派迫害思想、国家主義などの全体主義の特徴は、新しい音楽を生み出すというよりは、どちらかと言えば音楽自体を圧殺する方向に行くということではないか。以上の論考は、思想自体の是非に関係なく、音楽との関係性を客観的に観察した結果である。
(本記事は、著者のTwitterを元にした編集・転載記事です)
外部リンク
この記事に関連するニュース
-
ヒューマンサウンド代表、「琉球かれん」開発者 米須清二郎氏のインタビュー記事を『人民日報海外版日本月刊』にて公開
@Press / 2024年11月21日 11時0分
-
「インディアン」も「ジプシー」も差別用語ではない…異常な"言葉狩り"にアメリカ先住民族がついに声を上げた理由
プレジデントオンライン / 2024年11月18日 17時15分
-
玉木氏「不倫報道」も無傷?国民民主が大躍進の訳 政党優先より政策優先、卓越したバランス感覚だ
東洋経済オンライン / 2024年11月11日 18時40分
-
[社説]トランプ氏勝利 ガザ停戦急ぎ住民守れ
沖縄タイムス+プラス / 2024年11月7日 4時0分
-
のび太のように「運動神経のない子」を徹底的に見えない化! 運動会の「教育的配慮」はアリかナシか?
オールアバウト / 2024年11月1日 21時45分
ランキング
-
1斎藤元彦知事ヤバい体質また露呈! SNS戦略めぐる公選法違反「釈明の墓穴」…PR会社タダ働きでも消えない買収疑惑
日刊ゲンダイDIGITAL / 2024年11月25日 11時3分
-
2歯磨きのあとに口をゆすいではいけない…毎日磨いているのにむし歯になる人がやっている「誤解だらけの習慣」
プレジデントオンライン / 2024年11月25日 6時0分
-
3「絶句」 ユニクロ新作バッグに“色移り”の報告続出…… 運営が謝罪、即販売停止に 「とてもショック」
ねとらぼ / 2024年11月25日 13時52分
-
4ISSに到着したロシアの補給船「プログレスMS-29」で異臭と飛沫を確認
sorae.jp / 2024年11月25日 11時21分
-
5充電しながらiPhoneを触ってはいけない? 劣化が早まるリスクも!?【スマホのプロが解説】
オールアバウト / 2024年11月24日 21時25分
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
エラーが発生しました
ページを再読み込みして
ください