元総務大臣の「蝶愛好家」鳩山邦夫さんが逝去[茂木健一郎]
メディアゴン / 2016年6月24日 7時40分
茂木健一郎[脳科学者]
* * *
ヘルマン・ヘッセの『少年の日の思い出』は、幼い時に、蝶や蛾を集めるという「趣味」に、主人公がいかに情熱を燃やすか、というその様子を描いたものだけれども、なんだか切なくそしてほんものの読後感がある。
鳩山邦夫さんは、蝶の本当の「マニア」だった。その情熱を示すさまざまなエピソードがある。鳩山由紀夫さんにもそれは転ったようで、事務所で、標本を見せていただいたことがある。ぼくも少年時代蝶に情熱を注いだ口だから、その気分はとてもわかる。
鳩山邦夫さんが亡くなった時、マスコミの報道は「元総務大臣」だった。確かに、世間的に見ればそうなるのだろう。「蝶愛好家の鳩山邦夫さんが亡くなった」とは報じない。
【参考】<日本は大丈夫か?>英国のEU離脱論議に見る民主主義の原則[茂木健一郎]
それでは、鳩山邦夫さんのご生涯で、鳩山一郎さんの伝統を受け継いで政治家を目指し、総務大臣をつとめられたというキャリアと、蝶を愛し、幼虫から一生懸命育てられていた、その時間の関係は、どのようなものになるのだろうか。
「聖」と「俗」という分類は、もはや大時代的にも見えるが、ぼくは、案外、「聖」なるものは、私秘的な時間にあって、たとえば、少年が蝶に向き合っている、その情熱の白熱電灯のようなあり方の中にこそ、人間としての存在の本質があるように感じる。
時間は経って、二度と戻らない。みんな、いつかは死んでしまう。そんな宇宙の神秘との向き合い方の一つの現れが、蝶との時間にある、という、そんなふしぎなプライベートと「聖」の交錯が、あるような気がする。
世間的には、総務大臣をつとめられたとか、そういうことが大事になるのだろうが、同時に、蝶に象徴されるような、私秘的な時間こそが、「私」というものの大切な場所になる。
そして、それは亡くなった時にしみじみ思い出される。それがわかっていることは、人間として、おそらく重大なことだ。
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