<代案よりも容赦ない批判を>日本の野党による与党の批判は生ぬるい[茂木健一郎]
メディアゴン / 2016年8月3日 7時30分
茂木健一郎[脳科学者]
* * *
いつの頃か、「批判だけでなくて、代案を」というようなことが言われるようになった。誰がどう言い出したのかわからないけれども、おかしな話だと思う。批判と代案は独立であり、批判は批判で大切にきまっているからである。
諸国の議会の様子を見ていると、与党に対する野党の役割は、何よりも「批判」である。しかも、容赦ない「過酷なまでの批判」である。英国でも、アメリカでも、その他の国でも、野党は与党の政策を徹底的に批判する。それが野党の存在意義だからだ。
批判は、カトリック教会における「悪魔の代理人」に似ている。提案されたある政策に、どのような欠陥があるのか、矛盾があるのか、岡目八目で検討し、批判する。そのために野党があるのであって、批判のない野党はない。
【参考】<三宅洋平氏落選>実態なき支持層が産み出した「選挙フェス」という都市伝説
そもそも、野党に相当する英語は、opposition(抵抗・反対・妨害)である。最初から、与党に対立するものとしてそれが前提とされ、期待されているのである。そうでなければ、野党の存在意義がないと言えるだろう。野党に対して、「批判よりも代案を」というのは、議会制民主主義の本質を知らない人だ。
「批判だけでなくて、代案を」という一見もっともらしいスローガンの矛盾は、野党の代案が通る確率がそもそも低い、ということからもわかる。むろん、与党との話し合いで代案の一部が反映されることはあるかもしれない。その場合も、十分な批判がなければ、そもそも議会が機能しない。
諸外国に比べて、日本の野党による与党の批判は、むしろ、まだまだ生ぬるい方だと私は感じる。これは、日本人気質によるところが大きいのかもしれない。日本の政治に必要なのは、代案よりも、むしろ、より本質をとらえた、容赦ない批判の方だろう。
(本記事は、著者のTwitterを元にした編集・転載記事です)
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