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<偶然ではない>小池百合子にまんまと利用されたメディア

メディアゴン / 2016年8月6日 7時55分

両角敏明[テレビディレクター/プロデューサー]

* * *

都知事選は小池百合子さんの圧勝でした。この結果にメディア関係者の中には、「どうにもすっきりしない何か」を感じている人もいるような気がします。

ひとことで表現することは難しいのですが、小池百合子さんにあまりにうまく利用されてしまったという気分、と言えばご理解いただけるかもしれません。

もちろん、どの選挙でも候補者にとってマスコミ対策は今や最重要事項です。とりわけ都知事選ではマスコミが関心を持つ有力な候補者は数名ですから露出度は高く、国政選挙などとは比較にならないほどマスコミ対策が重要になります。

福祉施設をたずねたりするパフォーマンスを取材させ好感度アップを狙うレベルならどの候補も同じです。小池さんはそんなレベルでは差がつかないことを充分ご承知ですから、マスコミが取り上げざるを得ないことを大胆に仕掛けます。

【参考】<代案よりも容赦ない批判を>日本の野党による与党の批判は生ぬるい

まずは都議会自民党をブラックボックスなど刺激的な言葉で決めつけて悪役に仕立て、正義のローンウルフが崖から飛び降りて正義の戦いに挑むかのような図式を見せつけます。ご自分が自民党都連の一員であることはお構いなしです。

テレビ討論では『冒頭解散』などという威勢の良いキャッチフレーズをかまします。不信任案が可決されないかぎり知事に解散権がなく、冒頭解散など非現実的であることは無視です。

こうした小池さんのやり方に対して自民党が推す増田さんが、「小池さんは劇場型に過ぎる」という趣旨の発言をしましたが、マスコミも冒頭解散をぶち上げる小池さんの魂胆は十二分に分かっていても、キャッチーなニュースを取り上げないわけにもいきません。

「都知事選挙における党紀の保持について」という小池さんへの応援を封じようとする自民党都連の文書はあまりに非常識で、小池さんにとってはごくおいしいエサでした。小池さんはこうした非道に対し、たった一人で組織と闘う女性というイメージをマスコミに乗せます。

さらに、石原慎太郎さんの「大年増・厚化粧発言」には、この暴言に切り返す形の発言をマスコミに乗せることで、おそらく10万票単位で増田氏に行くはずの女性票を小池票に変えたのではないでしょうか。

以降も小池さんは次から次へと度胸よくマスコミが食いつくような言葉やネタを提供し、これを取り上げることでマスコミは心ならずも小池さんのもっとも有能な運動員のごとき役割を果たすという構図が続きます。

そのうちになぜか好都合な週刊誌報道が世間を賑わします。鳥越さんのセクハラ疑惑や自民党都連のドン内田幹事長などが週刊文春や週刊新潮で取り上げられました。偶然なのでしょうが、いずれも小池さんへの強力な援護射撃のような形になりました。

  「メディアは私の最大の味方ですから」

とは小池百合子さんの言葉です。しかし今回の選挙報道においてメディアが小池さんの味方であろうとしたはずはありません。

【参考】<三宅洋平氏落選>実態なき支持層が産み出した「選挙フェス」という都市伝説

ところがメディアは結果として小池さんに乗せられ、小池さんの言うとおりの「最大の味方」になってしまった感が拭いきれません。このことに忸怩たる思いを抱くメディア関係者もいるのではないでしょうか。

今回の小池劇場の大成功から、これからますます選挙ばかりでなく、政治をはじめとするあらゆる方向で、「メディアにうまく乗ろう」を越えて、「メディアをうまく乗せてしまおう」という動きが激しくなるに違いありません。その力はますます巧妙に、厚顔に、そして時として強権的にメディアに迫ってきます。

今日もテレビは小池さんや丸川オリンピック担当大臣の「お召し物の色の話」で盛り上がっています。相変わらずおふたりの魂胆にまんまと乗せられているようですが、メディアはいつも乗せられているだけの存在ではありますまい。

そのうちきっと見せてくれるはずの、メディアの意地と知恵に期待します。

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