なぜ『ブレードランナー』はSF映画の金字塔なのか?
メディアゴン / 2016年9月9日 7時30分
茂木健一郎[脳科学者]
* * *
映画『ブレードランナー』(1982年)のラストシーン近く、ルドガー・ハウアーが演じるレプリカントが、ハリソン・フォードが演じるブレードランナー(脱走したレプリカントを追い詰め、「処分」する役割)に向かって「独白」する場面があるが、すばらしい詩情に満ちている。
「雨の中の涙」モノローグと言われるこの独白の中で、レプリカントが言う言葉は、一部が、ルドガー・ハウワーがその場で工夫し、つけくわえたもので、撮影の時にハウワーがこの言葉を言い終わると、撮影クルーからは拍手が起こり、中には泣いた者もいたという。
「私は、あなたたちが信じられないようなものを見てきた。オリオンの肩で炎上する戦闘船や、タンホイザー・ゲートの近くの暗闇で光るC-光線などを。これらのすべての瞬間は、もはや失われる。雨の中の涙のように。死ぬ時がきた。」
これが、ハウアー演じるレプリカントの最後の独白である。
【参考】<AIに作らせた方がマシ?>「2016年版ゴーストバスターズ」は駄作
ちなみに、「タンホイザーゲート」が何を意味するのかはよくわかっておらず、ワグナーのオペラ「タンホイザー」で救済を求めて放浪する主人公の姿と、レプリカントのあり方をかけたとも言われている。同時に、「オリオンの肩」も何を指すのかよくわかってはいないとのこと。
いずれにせよ、『ブレードランナー』の中のこの独白が、SF映画史上でも最も素晴らしいものとして評価されているのは、それが、レプリカントという、人工的につくられた人間そっくりの存在が、経験と自己省察という意識を持つ者を特徴づける性質を持つことを、劇的に示すからだろう。
『ブレードランナー』には、二つのテストが隠れている。一つは、人間そっくりのレプリカントと恋に陥ることができるかというテスト。もうひとつは、レプリカントは自己意識を持つかというテスト。ハウアーの最後の独白は、後者にかかわる。
『ブレードランナー』のディレクターズ・カットでは、レプリカントを追い詰めるハリソン・フォード自身が、実はレプリカントであることを示唆するシーンも含まれている。ぜひ見ておくべき、SF映画、いや全映画ジャンルの中の金字塔である。
(本記事は、著者のTwitterを元にした編集・転載記事です)
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