<建物の下はすべて空洞>移転どころではない豊洲新市場
メディアゴン / 2016年9月14日 7時30分
柴川淳一[著述業]
* * *
築地から豊洲市場への移転問題で敷地の地下に4.5メートルの盛り土が為されてなくて巨大な空洞が汚染水と危惧される溜り水と共に存在すると言う不祥事が新たに発覚した。
誰が何の為にこんな事をしたのか? はたまた、手抜き工事による作業放置なのか疑惑を呼んでいる。さらに、盛り土が未実施で空洞化した土地の下は汚染土が詰まっている。東京都民の食の安全を根底から脅かす大事件である。
市場関係者の中には「俺ら、魚屋をなめんじゃねえぞ!」とテレビのインタビューに答えて怒っている人もいた。一方でワイドショーのコメンテーターの中には「私は専門家じゃあないので、4.5メートルの盛り土が為されてないと言われても、どれ程の重大事なのか、よく分からない。」などと馬鹿な事を言う女性がいた。
素人でも分かることだが、例えば、お宅の家が建っている敷地の下に4・5メートルの空洞があったら、地震、津波、火災時に何が起きるの? と訊ねられたら答えられるはずだ。極めて危険な状態だ。こんなコメンテーターは要らない。
建物が建ってしまうと建物そのものが、まさに動かぬ証拠となる。建物に隠れた地下や周辺部分は、ひとたび災害が起きると建物に無惨な爪痕を残す。建物の倒壊、地盤沈下による浸水など、人命が危険に晒される。
ゆえに工事に携わる者は不正や手抜きを知った時には声を大にしてそれを言わなければならない。ゆめゆめ、侮るなかれ。さもないと、己れが人災の加担者となってしまう。
【参考】<台風18号の「人災」>繰り返えされた違法工事と放置された横浜市の「改善指導」
かつて筆者がまだ地方銀行に勤務していた頃の話だ。配属していた銀行支店の建物は、バブル期に経営不振となった地元の建設会社が自社ビルとして使用していたものを安価で、その銀行が譲受した訳あり物件であった。
その奇妙な鉄筋コンクリート造りの3階建は、1階を銀行の営業店舗として使用していた。2階は倉庫や従業員の食堂、更衣室等だった。不思議な事に3階部分はドアが施錠されたまま何人たりとも入れなかった。3階部分は、当時の支店長と本部の総務部長以外は誰も見たものはいなかった。
何か部下には秘密にしなければならない理由でもあるのかの如く、「決して3階以上には上がらないこと」等と言われると、尚更、自分の目で確かめたくなるのが人情と言うものだ。
ある時、支店長の出張を見計らって、後輩の預金担当の支店長代理と申し合わせ、3階へ続くドアの鍵を持ち出し解錠した。立ち入り禁止を暗示するような南京錠をはずすと、3階は広いぶち抜きのワンフロアの構造になっていた。
天井が低く作られていたが、蛍光灯のスイッチを入れると3階内部の全貌が露になった。そこは天井と壁の全てがアスベスト(石綿)で覆われた部屋だった。それは、まさに真っ白な地獄のような不気味な光景であった。
アスベスト(石綿)は肺癌の原因ともなる有害物質であり、発見次第安全対策を取るよう法律で定められている。不動産売買時には、仲介業者はアスベスト(石綿)の使用の有無を確認する事が強く義務付けられている。
その事実を出張から戻った支店長にそのことを告げた。すると支店長は「あれはアスベストではない。絶対ない。二度と言うな。この会社にいたいなら二度とあの部屋の事を言うな。」と恫喝した。もちろん、サラリーマンの悲しい性で、それ以上、あの部屋の事を追及することはなかった。このことは今も悔いている。
アスベストの被害は何年も経過してから現実化するからだ。将来、肺癌の発症者が出ないことを心から祈っている。豊洲市場の地下の空洞のニュースに接するにつけ、その時のことを思い出さずにはいられない。
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