脳科学者・茂木健一郎は「脳トレという言葉が嫌い」
メディアゴン / 2016年9月19日 7時50分
茂木健一郎[脳科学者]
* * *
先日、読売新聞の企画で石川善樹さんと対談して、とてもおもしろかったのだが(特に、public healthというアプローチの根源的脆弱性)、その時、「ぼくは『脳トレ』という言葉が嫌いだから」と言ったら、石川さんが、「え、そうなんですか」と言った。
「嫌いに決まっているだろ〜」と言ったら、石川さんが「そうですよね」と納得した顔になった。それはそうである。『脳トレ』なんて言葉を、自ら進んで使うはずがない。世間にそういう需要があるから、また、メディアが便利に使うから、仕方ないからおつきあいで使っているのだ。
というわけで、「読売プレミアム」の連載で、ヨミウリ・ウィークリー時代からお世話になっている大切な二居隆司さんが、タイトルを『脳トレ』としてきたときには、正直「まいったなあ」と思ったが、この際だから、「うっちゃり」みたいなことをやろうと思って、書いている。
【参考】為末大氏「パラリンピック報道に違和感」
世間の『脳トレ』についての浅薄な期待を逆手にとって、たまには『脳トレ』をしないことが『脳トレ』だと書いたり(だってDMNが働くから)、ワグナーの「ニーベルングの指環」のように、『脳トレ』なんという浅薄な領域を越えたものが芸術である、みたいな技を仕掛けて実は連載書くのが楽しい(笑)。
自分が何かをやっているときに、『脳トレ』なんて意識でやっていることは1秒もないに決まっている。世間がなぜそんなものを求めるのか、ぼくは理解したことがないけれども、人間社会というものは常にそういうものなのだろう。
たとえば、小林秀雄が晩年にいろいろと模索して、考えていることを『脳トレ』という言葉で語ることがナンセンスなのと同じように、それぞれ一回だけの人生で、考え、感じることを『脳トレ』なんていうパッケージでくくることの愚かさは、時々誰かが言った方がいいのだと思う。
世間がある思い込みで動いていて、メディアが軽薄にそれに乗っているときに、それにお付き合いしつつ、土俵際でうっちゃることでしか伝わらないことがあると思っているから、私は現場で何かに抵抗しているのだと思う。『脳トレ』なんて、一秒もやらないけどね。
(本記事は、著者のTwitterを元にした編集・転載記事です)
外部リンク
この記事に関連するニュース
-
「子どもがうるさくして、すみません」より効果的…躾への"お叱り"を穏便にすませる「魔法のひとこと」
プレジデントオンライン / 2024年7月1日 10時15分
-
『あぶない刑事インタビューズ「核心」』重版出来記念対談 高鳥都+近藤正岳「確信」
ガジェット通信 / 2024年6月21日 12時0分
-
都知事選の全裸ポスター騒動 脳科学者「みんな怒ってるけど…何を今さら」
日刊スポーツ / 2024年6月21日 10時4分
-
“脳トレ”川島隆太教授「スマホを長時間使う子供の学力は極端に低い」
RKB毎日放送 / 2024年6月11日 16時19分
-
喜怒哀楽の中で人間が最も想いを乗せられる感情は「怒」…怒りを文章にする際、何よりも大切にするべきたったひとつのポイント
集英社オンライン / 2024年6月6日 11時0分
ランキング
-
1呪術廻戦、実写CMで「塩顔イケメン」Xトレンド入り 「ドンピシャ配役」人気キャラ再現に大興奮
J-CASTニュース / 2024年7月4日 18時30分
-
22024夏ドラマ“見逃したくない作品”5選。「期待度の高い社会派ドラマ」が揃いぶみ
日刊SPA! / 2024年7月3日 15時50分
-
3「他に言い方がありますよね」工藤静香、テレビ出演で放った“ファンに失礼”発言が物議
週刊女性PRIME / 2024年7月4日 18時30分
-
4女子小学生向け書籍『かわいいのルール』が異例の大ヒット…ロングセラーの裏側には“意外な読者層”の存在
女子SPA! / 2024年7月5日 8時46分
-
5アンミカ 本名&旧芸名を明かす まさかの芸名に「えー!?」スタジオ仰天
スポニチアネックス / 2024年7月5日 10時8分
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
![](/pc/img/mission/mission_close_icon.png)
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
![](/pc/img/mission/point-loading.png)
エラーが発生しました
ページを再読み込みして
ください
![](/pc/img/mission/mission_close_icon.png)