<底意地の悪い演出?>「クイズ☆スター名鑑」の今後の可能性
メディアゴン / 2016年10月18日 7時30分
高橋維新[弁護士/コラムニスト]
* * *
2016年10月16日のTBS「クイズ☆スター名鑑」初回2時間スペシャルを見た。
この番組は、2012年3月までレギュラー放送をしていた「クイズ☆タレント名鑑」の復活版である。1回限りの復活ということではなく、今後は7時台のゴールデンタイムでレギュラー放送をしていくということである。
「タレント名鑑」は、有名人にまつわる様々なクイズを出題する番組だった。番組の魅力は、クイズそのものではなく、クイズを通じて題材にされた有名人について解答者(主に芸人)が好き勝手に繰り広げる下世話な会話である。
それが最も発揮されるのは、番組の看板クイズである「芸能人!検索ワード連想クイズ」である。これは、ある芸能人について、その人の名前と一緒に検索されている単語を順番に出していき、そこからその芸能人を当てるというクイズである。
当然ながら、解答においては大喜利状態が生じる。例えば最初の検索ワードで「逮捕」と出ると、解答席にいる有吉弘行やFUJIWARA藤本、おぎやはぎが逮捕歴のある芸能人の名前を好き勝手に挙げ始める。
当然この大喜利がメインなので、司会のロンブー淳も彼らのボケをしばらくは泳がす。テレビ朝日「金曜★ロンドンハーツ」でもよく共演している面々なので、この辺の掛け合いはお手の物だろう。
これは、大喜利としては非常に理想的な状態である。まず、「IPPONグランプリ」のようにボケるのが正解なのではなく、ちゃんとした正解は別にあるのである。
だから、正答からのズレを観客が明確に認識することができ、奇襲・不意討ちの妙味も失われない。そのうえ大部分はアドリブであって、台本がない(もしかしたらあるのかもしれないが、少なくともあるようには見えない)。アドリブだからこそ、誰かのボケに乗っかってそこを広げていくということもできる。学校の授業で先生からの質問にみんなでふざけて答えているような楽しさ・リラックス感が心地よいのである。
【参考】<フジ「IPPONグランプリ」の弱み>芸人を「かっこいいもの」と扱うのはもう限界
筆者は、この「ちゃんとした『正答』がある状態で、アドリブで大喜利をする(代わる代わるボケていく)」というのが人工ボケの笑いの一つの完成形だと思っている。コント55号や明石家さんまがやるコントも、みんなこの完成形を基本としている。
逆に、「タレント名鑑」ではこの「芸能人!検索ワード連想クイズ」以外のコーナーはさほどおもしろくなかった。そして今回の「スター名鑑」においても、この「検索ワード連想クイズ」以外はそんなにおもしろくなかった。
全体的には、番組に出てもらったベン・ジョンソンやボビーや芸能人夫婦をナレーションやテロップで悪し様に言ったり、感じ悪く見える映像をそのままカットせずに流していたりする演出が少し不気味だった。
これは解答席にいた有吉や藤本も指摘しており、筆者も見ていてあまり気持ち良くはなかったので、もう少し抑え目にした方がいいのではないか。「水曜日のダウンタウン」(TBS)にも通じる底意地の悪い演出である。
「トリビアの泉」(フジテレビ)にも番組への協力者をイジるこの手の演出は見られたが、もう少し抑え目できちんと笑えるレベルに止まっていた印象である。トリビアにおいては、VTRを見ているビビる大木などがきちんとイジられている人にフォローを入れていたから見てられていたという側面もあるだろうが、この番組でVTRを見ている有吉や藤本はイジリに乗っかってしまうため、何というか、救いがなくなるのである。
きちんとフォローを入れてもらう方向に舵をとった方が、安心できる仕上がりになるのではないだろうか。
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