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日ロ両政府が北方領土共同統治案を検討するホントの理由

メディアゴン / 2016年10月21日 7時30分

保科省吾[コラムニスト]

* * *

10月17日付け日本経済新聞朝刊が「日本政府とロシアとの北方領土問題の打開策として日ロ両国の共同統治案を検討している」と報じている。

9月2日、安倍首相はロシアのプーチン大統領と約3時間10分にわたる首脳会談を行った。この会談を含めて安倍政権は今、如実にロシアにすり寄っている。一体、何を話し合ったのか。

様々な憶測がされる。その重要事項のひとつは日本のロシアからのエネルギー輸入である。

経済産業省によれば、輸入量の多い順に、

1.サウジアラビア(523万キロリットル)

2.アラブ首長国連邦(430万キロリットル)

3.ロシア(180万キロリットル)

である。全体の輸入量が前年比で12.7%減少している中で、ロシアからは13.8%増加し、そのシェアも10.5%となっている。

一般的な見方は、エネルギー分野を中心にロシアとの経済協力を強め、北方領土を巡る交渉を前に進める狙いがあるとされるが、実態は逆ではないのか。エネルギーのロシア依存を高めることを正当化するために北方領土問題を絡めているのではないか。

アメリカはシェールガス革命により、エネルギーの中東依存率が低下していたが原油価格の下落によって、この革命の道筋は暗転して行っている。日本は対中東の主導権を握るべく米国を中心に結成された有志連合に参加し、比較的良好だった中東との関係も危うく成りつつある。

そこに来てのロシア接近である。

アメリカとロシアの中東政策は反目し合っている。日本はどっちなのだ、とアメリカもロシアも思っているはずである。

アメリカ主導のTPPの批准についても混乱が始まった。推進役アメリカの次期リーダー候補は二人ともTPP反対である。

その理由はTPPの合意内容がアメリカに不利な内容になっているからである。もっとアメリカ優位な貿易協定を結ぶべきだというのである。安倍政権は依然として、早期TPP批准を目指しているが、ここに来て、ナショナリストでありながら親米の顔をしてきた安倍政権の矛盾が出た形である。

【参考】日本文明の墓場行きTPPバスに絶対乗ってはいけない[植草一秀]

メディアは日ロ交渉等もふくめ、それぞれの事象の近視眼的な背景を伝えるだけで、その地政学的な大きな枠組みを伝えないので日本国民には誤解のみが広がっていく。

さて北方領土問題の日ロ共同統治案であるが、無理な話である。北方領土に住むロシア人に対してはロシア法律を適用し、日本人には日本の法律を適用とする矛盾は沖縄で既に実証済みである。

12月15日には、安倍首相の地元、山口県にプーチン大統領がやってくる。

通常、首脳同士が直に会うときは事前の事務方の協議で決まったなんらかの成果が発表されるのが普通である。会っても成果なしだとメンツ丸つぶれとなるからである。

果たして、12月15日にはどんな成果が示されるのか。

  「北方領土二島先行返還です!」
 「歯舞・色丹か!?」
 「いえ、国後・択捉です」
 「歯舞・色丹にはロシア軍基地!!」

そういえば、北海道には米軍基地がない。まさか、そんなことはないだろうが、安倍首相は12月15日の成果を持って年明けの解散総選挙に臨むかも知れない。

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