変化する家族を描く小津映画と変化しない「サザエさん」
メディアゴン / 2016年10月30日 7時40分
茂木健一郎[脳科学者]
* * *
小津安二郎監督の代表作『麦秋』(1951)、『晩春』(1949)、『東京物語』(1953)、『秋刀魚の味』(1962)は、一貫して「家族の崩壊」を描いている。結婚や死別を通して、今までの前提になっていた人間関係が崩れ、その後に残る孤独を描いているのである。
家族は、常に変化する。子どもたちは大きくなるし、結婚すれば家を出ていく。家族の団欒は、ごくありふれた日常だけれども、そこに、人間の幸せの原点があって、それが時間の経過とともに変わっていく運命にあることを、小津さんは静かに描いた。
小津さんの描く家族のあり方は、あまりにも日本的に見えるが、そこに普遍的な人間のドラマがあることは、小津作品が世界的に受け入れられて、映画人の中では「神」の領域にあるということからもわかるだろう。
【参考】「サザエさん」から考える日本のテレビの問題点[茂木健一郎]
一方、「サザエさん」では、何年経っても、同じ家族のあり方が描かれる。サザエさんも、マスオさんも、カツオも、ワカメも、タラちゃんも、みんな同じような年齢で、無限に続く日常の中で、さまざまな出来事、騒ぎに巻き込まれる。
日曜の18時30分から、「サザエさん」はいつまでも変わらぬ家族のあり方を描く。しかし、それを見ている実際の家族は、時々刻々と変化していく。幼子はやがて声変わりして、親離れし、社会人になって一人前の人間として親をいたわるようになる。その間、「サザエさん」はずっと変わらない。
小津安二郎の映画と「サザエさん」は対象的だが、家族のあり方を描いている点においては同じである。実際の家族は、小津さんが描いたように時々刻々変化していくが、私たちの心のどこかに、「サザエさん」のように、永久に変わらない家族のあり方がある、いやあって欲しいと思っているのだろう。
(本記事は、著者のTwitterを元にした編集・転載記事です)
外部リンク
この記事に関連するニュース
-
妻夫木聡&渡辺謙インタビュー「北川悦吏子さんにお断りメール→3倍長い返信」 テレ東ドラマSP「生きとし生けるもの」5月6日放送
iza(イザ!) / 2024年5月4日 12時0分
-
「せっかくの誕生日になんでそんな話するの!?」毒親家庭で育った女性が、婚約者に怒りをぶつけてしまう“本当の理由”
文春オンライン / 2024年4月29日 11時0分
-
「あそこだけはすぐOKでした」岩下志麻が語る、小津安二郎に評価された“特別”なシーン《生誕120年》
文春オンライン / 2024年4月29日 6時0分
-
ADHD当事者、周囲の人、誰もが生きやすい社会とは?【 発達障害を映画化。北 宗羽介監督と考える】
OTONA SALONE / 2024年4月26日 19時1分
-
【神保町シアター】日本が世界に誇る映画監督・小津安二郎のサイレント映画をフィルム上映&ピアノ生伴奏で愉しむ企画「巨匠たちのサイレント映画時代2024」ゴールデンウィークに開催!
PR TIMES / 2024年4月26日 14時15分
ランキング
-
1人気バンドマン 「ラヴィット」生放送でライブチケット1600枚売れ残っていると告白 スタジオどよめく
スポニチアネックス / 2024年5月3日 13時23分
-
2鈴木亮平、2011年のブログがネットで話題「マジですごい」「言霊ってあるんだ」「本当に夢叶えてる」
スポニチアネックス / 2024年5月4日 15時58分
-
3「オリラジ」藤森慎吾、「ブランチ」で結婚生会見…出会いは「ノブシコブシの吉村さんとのお食事会」
スポーツ報知 / 2024年5月4日 9時33分
-
4「マジで本当に怒ったことない」千鳥ノブ、人生で初めてマジギレした相手明かす「何してんだ、てめえって」
スポーツ報知 / 2024年5月4日 5時38分
-
5「まるでホスト」速水もこみちが“ワイルド系チャラ男”に激変イメチェンの現在地
週刊女性PRIME / 2024年5月4日 12時5分
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
エラーが発生しました
ページを再読み込みして
ください