ちゃんとしていた「レコード大賞」はテレビとともに消えた?
メディアゴン / 2016年10月28日 7時30分
茂木健一郎[脳科学者]
* * *
時々は、「昭和」の頃を思い出すことがある。ユーミンや井上陽水の「ニューミュージック」が出てきたのは、ぼくが小学校5年、6年生の頃。あの頃、ニューミュージックの人たちには、「テレビはダサいから、テレビには出ない」という雰囲気があった。
しかし、そのテレビも、今に比べれば隔世の感があるくらい音楽的にも充実していた。何しろ、演歌が元気で、毎年のように名曲が登場し、天地真理さんや、花の中3トリオ、ピンクレディー、キャンディーズ、浅田美代、あべ静江といったひとたちが数々のヒットを飛ばしていたのだ。
そこに、「およげたいやきくん」なども入ってくるのだから、昭和のあの頃の楽曲の充実ぶりは、ちょっとカンブリア爆発のようで、そんな背景をもとに毎年行われる「レコード大賞」には、今とは比べ物にならないほどの価値があった。
【参考】なぜ『巨大なテレビ』は『小さなネット・コンテンツ』に苦戦するのか?
当時、レコード大賞は大晦日に行われていて、大賞などの受賞者は、やはり生中継の紅白歌合戦の本番に、かけつける、というのが独特の臨場感で、紅白の司会者も、「今年のレコード大賞を受賞されました」などとタイムリーな紹介をつけたりして、それがまた興奮を誘っていた。
今は、ラテ欄を見ても、民放のゴールデンは、なんだかげっそりするバラエティばかりで、どうせ芸人さんたちが内輪受けの話をしたり、手を大げさにたたいて笑ったり、汚いテロップが流れるんだろうと思うと、1秒も見る気がしない。
ぼくは、テレビというメディアが嫌いなんじゃなくて、単に今の日本の、特に民放のテレビの空気が嫌い、というか肌に合わないんだろう。昭和の民放は、素敵な歌番組もあったし、面白い番組がいっぱいあった。あの頃のレコード大賞は、ちゃんとしていた。単なるノスタルジアになってしまうけれども。
(本記事は、著者のTwitterを元にした編集・転載記事です)
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