この世には「居場所のある人」と「居場所のない人」がいる
メディアゴン / 2016年11月21日 7時30分
茂木健一郎[脳科学者]
* * *
学会でサンディエゴに行った。それで、初めてウーバーを使ってみたり、レストランの人と話したり、いろいろな雑談をしたのだけれども、その過程で、トランプさんが大統領になろうとしている米国のあれこれが、肌で感じられた。
サンディエゴはメキシコ国境に近く、メキシコから来ている方々もたくさんいらっしゃる。その方々とお話していると、トランプさんが政権をとるということが、非常に重大かつ実際的な問題として感じられているということがわかって、ひりひりとした。
人は、どんな時に住んでいる場所を移動するのだろうか。メキシコ側の一日分の賃金が、米国の最低賃金とほぼ同じなのだそうだ。だから、そのような経済的な理由で、米国側に行きたいという気持ちを強く持つ人も出てくるだろう。
また、別の事情も見聞きした。
ウーバーの運転手さんなどの中に、アフガニスタンやウクライナから移住して来た、という方がいたが、それぞれ、ソ連のアフガニスタン侵攻、そしてソ連邦の崩壊がきっかけだったという。話しているうちに、そのような事情がわかってきたのだ。
人は、世界史に残るような激動において、住む国を変えることがある。その時、「居場所」がある人と、「居場所」がない人との間に非対称性が生まれる。トランプさんの問題は、結局、そこにあるように感じる。
ニューヨークの巨大な不動産の最上階に住み、移動もプライベートのジャンボジェットの人に、居場所がなくて国から国に行かざるを得ない人の気持ちは、よほどの知性や共感能力がなければわからないだろう。サンディエゴで私が話した人たちの世界から、トランプさんは星雲くらい遠く見えた。
この世には、居場所のある人とない人がいて、居場所のある人がない人を差別することはしばしばあるが、さらに、居場所がある人が、自分の居場所が脅かされるのを感じて、居場所のない人を排斥しようとすることもあるのだと思う。トランプ現象の本質はそこにあると、カリフォルニアで感じた。
(本記事は、著者のTwitterを元にした編集・転載記事です)
外部リンク
この記事に関連するニュース
-
『バイオ』でも話題に、アイルランド出身コスプレイヤーが日本に来た理由
エンタメNEXT / 2024年7月4日 6時0分
-
前嶋和弘・上智大学教授「日本には米国を国際社会につなぎ止める役割が期待される。世界秩序構築をリードする覚悟で」
財界オンライン / 2024年6月26日 7時0分
-
せっかく入れた学童に「行きたくない」。待機児童は解消しても継続率は低迷…保育に不満の声も
オールアバウト / 2024年6月23日 20時45分
-
「仕事のために生きているわけじゃない」元新聞記者・31歳男性が安定した職を捨て〈ワーホリ〉を選んだ理由
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年6月21日 8時15分
-
お金の専門家が米国旅行から考えた「金融株」が“追い風”の根拠
日刊ゲンダイDIGITAL / 2024年6月14日 9時26分
ランキング
-
1NYで人脈構築の小室圭さん、対照的な生活の眞子さんは「ほとんど外出せず」紀子さまが抱える“複数”の不安
週刊女性PRIME / 2024年7月4日 7時0分
-
2実刑判決で「頭が真っ白に」 法廷に両親の涙 静岡バス置き去り死
毎日新聞 / 2024年7月4日 20時58分
-
3「紅麹」サプリ問題、調査中の死亡事例81人に…先月末から5人増
読売新聞 / 2024年7月4日 20時59分
-
4新潟上越市でマンホール点検中の男性死亡 夕方になっても帰社せず捜索、マンホール内で意識不明の状態で発見
新潟日報 / 2024年7月4日 23時40分
-
5「魚民」の大量閉店は“大正解”か。運営企業「モンテローザ」の“稼ぐ力”は他社を圧倒
日刊SPA! / 2024年7月4日 8時53分
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
![](/pc/img/mission/mission_close_icon.png)
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
![](/pc/img/mission/point-loading.png)
エラーが発生しました
ページを再読み込みして
ください
![](/pc/img/mission/mission_close_icon.png)