<NHK取材の快挙?>週刊文春記者が「文春砲の伝える意義」を問われ、しどろもどろ
メディアゴン / 2016年12月24日 7時30分
高橋秀樹[放送作家/日本放送作家協会・常務理事]
* * *
NHKの「あさイチ」は時々、人が禁忌と考えている範疇をひらりと飛び越えてみせるので見逃せないときがある。
12月21日の放送では、埴輪のキャラクター「はに丸」が「何でもズバズバ聞いちゃうスゴ腕ジャーナリスト」を名乗って週刊文春を訪れた。編集部の中を軽くレポ−トした後、週刊文春(毎週43万部、毎号1億7千万円の売り上げ)のNO.2社員記者に、「スクープの秘訣」を聞く。
ジャーナリズムがジャーナリズムに「スクープの秘訣」を聞く等と言うことは、恥ずかしい限りであるので本当に聞きたいことは別にあると察しがつく。
はに丸「スクープの秘訣は?」
渡邊庸三氏(NO.2記者)「ズバッと書く」
と答えた記者は、知り合いだとしても容赦しないで書く、手加減すると、雑誌が売れない、取材対象との関係が壊れることもある。として週刊文春のキャッチフレーズを話す。
記者「(週刊文春のキャッチフレーズは)親しき仲にもスキャンダル」
さらに記事選びには(週刊誌として)「売れる/売れない」の軸と、(週刊誌として)「伝える意義がある/伝える意義がない」の軸があることを示す。
取材方法として技ありということも出来るが、NHKのずるいところはこのインタビュアーをゆるキャラのはに丸がやっているところである。普通なら険悪な雰囲気になってしまうであろう取材をはに丸の起用によってかわしている。
【参考】<パソコン未所有と貧困は無関係>NHKが描く「貧困女子高生」のリアリティの低さ
週刊文春の記者は「売れて」「伝える意義がある」対象として、政治家やNHKを例に挙げる。筆者は政治家やNHKの記事がすべて売れる記事だとは思わないし、取り上げられない記事も実際にはあるだろう。
さて、ここからが、はに丸記者の本当に聞きたいことだ。発言を一字ずつ拾う感じで書いてみる。
はに丸「(週刊文春の)伝える意義って何? 芸能スキャンダルとか色々ある」
記者「なんだろうなあ、これは公共性ってことになるんだろうけれど、やっぱりその、伝える意義があるというのは、なんだろうな、難しいね、ちょっと待ってね」
5秒ほど画面が静止画像になって「しばらくお待ち下さい」のテロップが出る。NHKも底意地が悪い。
はに丸「不倫とか、熱愛とかさ、難しいならなんでそんなに、切り込んで書いちゃうの?」
記者「え、それはだから・・・」
はに丸「(すかさず)売れるから?」
記者「売れるからもある」
はに丸「売れればいいの?」
記者「おっ、なんか、ずいぶん、そう言う聞き方するんだね」
はに丸「僕は、ジャーナリストとして行くときは行くんです」
記者「僕らは、別にプライバシーを曝きたい訳じゃないんだ」
はに丸「でも書かれちゃうじゃない。プライバシーに触れられたら人生が変わっちゃうことあるじゃん」
記者「そうだね。それはもともと、そういう風になれば良いと考えてるわけじゃないんです。人間ってさ立派な部分だけ知りたいわけじゃないじゃない。そういう話って、みんな知りたいんですよ。知りたい人たちの期待に応えるのが僕らの仕事でもある」
以上で取材VTRは終わりである。筆者は思うが、ジャーナリストなんていうのは「大衆のゲスな興味に答えるのが一義的な仕事で、その中にたまたま正義の一分野も存在することがある」という程度のことだと思うのである。
さらに、ふだん「嫌なことも人に聞く」仕事をしている者は「いつでも本当を答える覚悟」をしておけと言うことでもある。
今回は通常は上のプロデューサーが「止めとけ」というような取材をやったNHKにたいして、通常は受けない取材を雑誌の性格上、受けた文藝春秋社に対して、褒めておきたい。
NHKが芸能ワイドショー番組を持っていたら、週刊文春の売れ行きが振るわなかったら、なかった取材であることも書き加えておく。
ちなみに番組のこのコーナーは次のように終わる。
有働由美子アナ「納得いかない。知りたいことなら何でも書いていいのか、そこをもっと突っ込んで欲しかった」
はに丸「突っ込んだけどさ、それが僕らの仕事・・・」
そして、9時の定時ニュースが強制スタートした。
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