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<バブル商品の結末>生保破綻のニュースが流れても酒に飲まれていた銀行支店長

メディアゴン / 2017年1月29日 7時40分

柴川淳一[著述業]

* * *

N生命保険会社が破綻したと言うニュースが流れたのは20年ほど前の初夏の土曜日の朝の事だったと思う。

その時、N生命と組んた商品を売っていた某銀行は、慰安旅行2日目だった。昨夜に続き羽目を外して支店長は朝から飲酒し酔っぱらった。真偽の程は不明だが、自分の過去の武勇伝を飲むといつも語り始める。時々、前回の話と矛盾するストーリー展開となるのは、やはり自分の過去を誇張し過ぎた為だろう。

 「おい。デブ(支店長の事)はまだ、あの馬鹿話やってるのか? 今、どのくだりを喋ってる?」
 「暴力団の親分が『チャカ持って来い。』と言うあたりを喋ってます。」
 「そうか。もう、10分くらいかかるな。」

毎回、飲むとその事件の話を語るので部下は全員食傷気味だった。皆、ストーリーを暗記するほど聞かされていてうんざりしていた。

特にその朝はN生命破綻の速報がテレビで流れたので、彼らには銀行本部から緊急召集がかかるかも知れない。最低でも支店長は本部に招致され善後策を協議と言うことになろうと皆思っていた。ただ一人、酒に飲まれて、自分を見失っている支店長を除いては。

【参考】<ぞっとする銀行の話>愛人への不正融資の果ての倒産と自殺

飲酒すると支店長が必ず話し出す武勇伝とは、ヤクザに融資しろと脅されて怖くて逃げ回っているうちに怒ったヤクザが支店長を拉致し、部下が警察に通報し救い出されたと言う話である。

その際、散々、ヤクザに恫喝され、融資を強要されたが屈しなかったと話を締めくくるのだが誰も本気にしない。

「あのデブ」と支店長をこきおろしたのは、この支店の次長だが、酒にしか興味のない支店長に代わって支店をまとめていた。その次長が、今、危惧しているのは、銀行がN生命と組んで売りまくった「一時払の個人年金保険契約」の事だった。

バブル期の典型とも言える保険商品で、例えば、顧客が30歳で100万円の保険料を全期前納一括払いすると、60歳の誕生日の前日解約で数千万円の解約一時金が手にはいると言う触れ込みのものであった。

銀行はその一時金100万円なりを顧客に融資すると言うものだ。その年金保険の引き受け元のN生命が破綻した。保険契約はパアーになり、後には銀行への借金のみが残る。プレスリリースされた以上、この商品を買った顧客は黙っていない。訴訟事件にもなるだろう。

その後、銀行は翌日曜日に全支店長を召集したが、事態を見守るとしただけで何ら手を打たなかった。翌月曜日には顧客から、苦情や問い合わせの電話が銀行本部の回線がパンクする程かかりっ放し状態となった。

予想通り、各地で訴訟が起こされ、この契約を売った何人かの若い営業マンは責任を感じて銀行を去って行った。

しかし、そもそも、保険会社との提携を決め、銀行の商品として顧客に販売するよう部下達に命じた銀行の幹部はもとより、破綻した保険会社の責任者も、被害者の顧客に対し、謝罪も補償もしなかった。

くだんの次長は支店の契約顧客すべてに説明と謝罪をして回った後、責任を感じ退職した。

 「俺が辞めたところで罪滅ぼしにもならないが、こんな商売は恥ずかしくてやっていられない。」

と最後に語った。その次長に「あのブタ」とこきおろされた支店長はその後も肥満を進行させ定年前にポックリと亡くなった。

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