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トランプ大統領の暴言連発に日本人が学ぶこと

メディアゴン / 2017年1月25日 7時30分

高橋秀樹[放送作家/日本放送作家協会・常務理事]

* * *

トランプ大統領のやりかたは異様すぎるほど分かりやすい。

ひとつは「損得による判断」をし、自分に損になることはしない主義であるという点だ。中国との交渉を有利に進めるためなら、尖閣も、台湾も、将軍様の核ミサイルもカードに使う。

経済的にはトリクルダウン理論(trickle-down effect)なのだろうが、「富める者が富めば、貧しい者にも自然に富が滴り落ちる(トリクルダウンする)」というわけにはいかない。「自分が損はしない」という大前提があるからだ。

また、富める者は、特にキリスト教徒にはノブレス・オブリージュ(noblesse oblige)の考え方、つまり「高貴さは(義務を)強制する」という思想がある。財産、権力、社会的地位の保持には責任が伴うとの考え方である。

マイクロソフト会長のビル・ゲイツのように、ビル&メリンダ・ゲイツ財団 (Bill & Melinda Gates Foundation)のような慈善基金団体(世界最大)を設立し、世界における病気・貧困の撲滅への挑戦をするなど社会還元をする、というわけだ。

しかしながら、トランプ大統領のように、取引が基本理念ではこういったことも望めないだろう。

もうひとつのトランプ大統領の「本音で吠える」率直すぎる本音とやり方が、いかにアメリカ人でも、暴言と捉えるようなレベルのものになっている、ということだ。

【参考】<トランプというネタ>「ガチ」が「ネタ」に敗北した米大統領選

もちろん、日本人は婉曲や遠回しに言うことを美徳とするのでトランプ発言には驚くばかりであるが、しかしながら、ここに日本人が学ばねばならないことがあるように思う。

日本人は本音をオブラートで包む。だから「生活保護の不正受給者はクズだ」というような発言は絶対にしない、したら謝罪である。建前の発言は「生活保護の申請者には適格に対応するようにしましょう」になる。

こういう建前ばかり聞いていると、建前に慣らされて、騙されるようになってくる。「外国軍の駆けつけ警護も出来る普通の国」は「戦争の出来る国」であるし、共謀罪は名を変えた治安維持法である。筆者は2020東京オリンピックの開催に今も反対であるが、それを直接言うと、あと1年後くらいには非国民扱いになるだろう。

トランプ大統領の暴言爆弾は、そんな日本人を目覚めさせてくれるインパクトがある。

「世の中にはこんな本音があるんだ」ということに気がつくと、よく考えれば日本の政治家の建前発言の裏にも必ずやトランプ流の本音があるはずだ、ということにも気づかされる。この点がトランプ大統領に日本人が学ぶべきことだ。

それからもうひとつ大切なことは、トランプ大統領の本音発言も「建前だ」と考えてみる必要があるということだ。あのトランプの本音も実は「ブラフ(はったり)」ではないのか。ブラフの可能性を排除は出来ない。なぜなら、それは取引だからだ。ポーカーの駆け引きだからだ。

世界の外交や経済はカジノ主義に突入したのである。

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