<日本も米財務省「監視リスト」に>安倍首相が金融緩和=円安誘導を目指したのは事実-植草一秀
メディアゴン / 2017年2月7日 7時25分
植草一秀[経済評論家]
* * *
米国のトランプ大統領が1月31日に、日本の為替政策について「円安誘導」だと批判したことについて、毎日新聞が次のように伝えている。
「トランプ米大統領は先月31日、米製薬大手幹部との会合で『他国は通貨安に依存している。中国はやっているし、日本が何年もやってきたことだ』と発言し、日本の為替政策を批判した。米大統領が主要国の為替政策を名指しで批判するのは異例。安倍晋三首相は1日の衆院予算委員会で『円安誘導という批判はあたらない』としたうえで、『首脳会談の際には、反論すべき点があれば反論していく』と話し、日本側の立場を説明する姿勢を強調。10日に開かれる日米首脳会談で、為替政策が論点となる可能性が浮上した。」
2月10日、11日に予定されている日米首脳会談で為替政策が論点になる可能性が浮上しているが、安倍首相は国会答弁で、為替政策はトップ同士で論じるべき話題ではないと発言している。しかし、時と場合によっては、首脳が為替政策について論議することもあり得るわけで、為替政策が首脳会談の議題となる可能性をあらかじめ排除することは適正でない。
米国財務省は、半期に一度の外国為替報告書で、2016年4月、初めて「監視リスト」を公表し、中国、日本、ドイツ、韓国、台湾の5カ国・地域を指定した。「為替操作国」として認定していないが、その前段階となる外国為替報告書では、上記5ヵ国に加えて、スイスが「監視リスト」に掲載された。
10月の報告書では、日本について、5年にわたって為替介入をしていないが、日本の当局者らは「円高抑制を狙って」何度も公に発言したと指摘している。
米国財務省のチェック項目は、
1. 対米貿易黒字が年200億ドル超
2. 経常黒字が国内総生産(GDP)の3%超
3. 一方的な為替介入による外貨買いがGDPの2%超
であり、3項目に該当すれば「為替操作国」との認定を受ける。
中国は、経常収支黒字が引き続き基準を下回り、為替介入の目立った動きが見当たらない場合、本4月に監視対象から除外される可能性がある。
ブルームバーグニュースは次の事実を伝えている。
「安倍首相は2月1日午後、衆院予算委員会でトランプ大統領の通貨安誘導発言について、日本は『2%の物価安定目標を到達』するために、適切な金融政策を日本銀行に委ねており、『円安誘導という批判は当たらない』と言明。必要なら米側に日本の姿勢を説明する考えを示した。」
これに先立ち、浅川雅嗣財務官は同日午前、記者団に対しトランプ氏の発言について、「日本の金融政策はデフレ脱却という国内政策目的のためにやっている」のであり、「為替を念頭に置いたものでは全くない」と述べた。
その上で、「為替相場はマーケットで動いている。操作をしている訳ではない」と反論。日本はしばらく為替介入もしていないとも話し、真意について「もう少し説明がないと分からない」と述べた。
しかし、事実は違う。安倍首相は、2012年12月に首相に再就任する直前、日銀による量的金融緩和の目的について、円安誘導とインフレ誘導であることを明言している。http://www.nicovideo.jp/watch/sm19359610(3分~3分15秒の部分参照)
財政出動のための国債発行金額分を全額、15~20兆円の国債を日銀が市場から買い取る、お金を刷る、このお金は直ちに建設に向かうわけで、このことによって、間違いなく、円安とインフレが誘導される、と述べている。
安倍首相がアベノミクスとして提示した日銀の金融緩和政策強化は、インフレ誘導とともに円安誘導を目指すものであった。ところが、米国から「円安誘導」との批判が生じたために、途上から、「円安誘導ではなくインフレ誘導である」と説明を変えたのである。
過去の経緯について、事実と異なる説明をすることはやめるべきだ。
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