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夏目三久キャスターは企業CMの出演を直ちに止めるべき

メディアゴン / 2017年2月13日 7時30分

高橋秀樹[放送作家/日本放送作家協会・常務理事]

* * *

堺雅人氏と夏目三久氏が共演するのは、スカパー!の新TVCM「スカパー10日間無料『堺議員 夏目秘書登場』篇」である。

このCMを初めて見たとき「まずいんじゃないか」と瞬間的に思った。堺雅人氏には何の問題もない。問題は夏目三久氏である。

 夏目氏のCM出演がダメな理由は、日本テレビで報道番組「バンキシャ!」のキャスター、TBSで情報番組「朝チャン!」のキャスターを務めているからである。

事実を報じることが使命のキャスターは自分の番組に、利益誘導の疑いや、不祥事隠蔽の疑いがかけられることがあってはならず、その嫌疑をかけられないためにも、私企業の商業CMには出ないのが通例である。自らのジャーナリズムの正当性に影を投げかけることになるからである。良心的ニュースキャスターなら選ぶ道である。

 夏目氏は、「私はタレントで、ニュースをやっているつもりはない」と主張することも出来るが、それはテレビを見る人が判断することでもある。

以下は一般論である。テレビ局は、スポンサーの絡みの問題もあるので出演者が、新たにCM出演をする時は所属する芸能プロダクションを通じて報告を受ける。報告を受けるのは各テレビ局の編成局番組担当者である。ただし、契約書に明記されていない場合、これを省略してしまうこともあり得る。

今回指摘しているCMの場合、 堺雅人氏も夏目三久氏も田辺エージェンシー(田邊昭知社長)所属であるから、上記番組を放送する日本テレビと、TBSには当該プロダクションから報告があったはずである。

報告があったとすれば、今もCM放送が続くことから、日本テレビとTBSの幹部がニュースキャスター夏目三久氏の商業CM出演を、特に問題がないと判断したのか。それとも、問題はあるが有力プロダクションから言われたことだから、目をつぶろうという判断を下したことが考えられる。

【参考】<SMAP解散>北朝鮮状態のジャニーズは芸能界の縮図

もうひとつ考えられるのは「問題だと感じる想像力のある人」が関係者周辺に全く存在しないという可能性である。

CM出演には巨額の出演料が支払われる、それは同業他社の番組には出られなくなるため、その保証をするという意味を持つ。テレビ局は通常、報道番組出演者にはCM自体に出られなくなるための保証も上乗せした報酬を払う。このあり方のバランスが崩れてきたのか。

 *ポスト・トゥルース(post-truth:世論形成において、客観的事実が、感情や個人的信念に訴えるものより影響力を持たない状況)の時代と言われ、

 *オルタナティブ・ファクト(alternative-facts:トランプ新政権の大統領顧問ケリーアン・コンウェイ氏が言う、気にくわない事実は「オルタナティブ・ファクト=代替可能の事実・もう一つの事実」にすり替えろ)と言う考え方が跋扈する時代にあって、

 *メディアにはファクト・チェック(fact-check:事実確認)が求められている。

この状況を鑑みるとニュースキャスターである夏目三久氏が商業CMを続けるのはメディア側の怠慢だと思わざるを得ない。

夏目三久氏側に求められるのは「長いものに巻かれろ主義」ではなく、「李下に冠を正さずの矜恃」なのだと筆者は思う。

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