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<お笑いの変質>ダウンタウン以降の漫才はどこが変わったのか?

メディアゴン / 2017年2月28日 7時50分

高橋秀樹[放送作家/日本放送作家協会・常務理事]

* * *

ダウンタウン以降、漫才は変わったと言われる。どこが変わったのか。

それまで多くの人が踏襲していた漫才本来のボケとツッコミのやりとりの形が変わったのである。 1980〜1982年のごく短い期間であった「漫才ブーム」の時も漫才は代わったのであるが、それは後述する。

 ダウンタウンは漫才をどう変えたか。

松本人志がぼそぼそと声を張らずにネタをひとりで喋る。それに対して浜田雅功が「強いツッコミ」を発して松本をなじる。松本は、浜田のツッコミに反応しているフリだけして、実は相手にしておらず、自分のネタをまたぼそぼそと続ける。そのネタの視点が新しかったので、浜田の「強いツッコミ」に相まって新しかったのである。

ダウンタウンにつづく漫才師は、皆これを真似した。ただし、マネだけをした人は大きくはならなかった。

 話は「漫才ブーム」の頃にさかのぼる。この時代のツッコミは皆「弱いツッコミ」だった、B&B、ザ・ぼんち、のりお・よしお、ツービート、紳助・竜介、彼らの形式は皆、強烈なキャラクターのボケに対し、ツッコミは「よしなさい」「なんでやねん」などの話の展開を促すための「薄いツッコミ」や聞いているよという印に「肯き」を入れるだけである。

【参考】<該当者は誰?>お笑いで「スーパースター」になる5つの条件

このなかで、とくにB&Bと紳助・竜介を取り上げる。若き紳助は東京ヴォードビルショウとB&Bの島田洋七を見て芝居か漫才に進むか悩んだが、結果はご存じのとおりである。

 洋七の魅力は口舌の良さとテンポの速さである。だが、ネタ自体はゆっくり聞くとそう笑えるものではない。速さで客を攪乱しているのである。紳助はこれを直ぐに見抜いてあっという間にB&Bを軽々と乗り越えた。

 しかし、紳助は「弱いツッコミ」を変えなかった。

その紳助に憧れていたのが松本人志だというのは有名な話である。紳助・竜介の「薄いツッコミ」を、ダウンタウンの浜田は「強いツッコミ」に変えた。

 その「強いツッコミ」だけを真似してしまったのが、ナインティナインの矢部浩之である。先日放送された『めちゃ×2イケてるッ!』で矢部はピコ太郎に扮した光浦靖子や大久保佳代子など女性芸人をツッコんでいたが、そのツッコミは強いというより「きついツッコミ」。これを女性に使うと痛々しくて、可哀想で見ていられなくなる。

さて「ツッコミ」の中で最も高度に構造化されているのは「フリとしてのツッコミ」である。

この「フリとしてのツッコミ」は、ツッコむことでボケに次の行動の指針を与える役目を果たしている。だから、前述の「終わりという記号のためのツッコミ」ではなく「笑いをさらに続けるための(終わらない)ツッコミ」である。このツッコミは曖昧であることが肝要である。

最後に、このツッコミの例をひとつだけあげておく。

 ボケ「きのう、トロにソースかけて食った」
 ツッコミ「ビミョウ」
 ボケ(リアクション)

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