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<「めちゃイケ」の堕落>工夫なき元バラエティの雄

メディアゴン / 2017年5月2日 7時30分

高橋維新[弁護士/コラムニスト]

* * *

連続でドッキリ企画を放送した2017年4月8日・4月29日放映の「めちゃ×2イケてるッ!」(フジテレビ・以下「めちゃイケ」)を見た。8日は2時間半のスペシャルで、29日がその残りだった。「今テレビで流行しているドッキリをめちゃイケがやったらどうなるか」というのが番組内での煽り文句である。

とはいえ、「めちゃイケ」は昔からドッキリをたくさんやってきた番組である。これまで主なターゲットになっていたのは濱口であるが、往年の「めちゃイケ」のドッキリは、非常に大掛かりで、全体を通した壮大なストーリーがあるのが特徴であった。

しかし、今回のこの「ストーリー」が見られたのは、最後に矢部浩之が岡村隆史に仕掛けたドッキリだけだった。ドッキリの内容は、矢部が「(自分の)不倫の現場を週刊誌に撮られた」と岡村に嘘をつき、それを聞かされた岡村のリアクションを見るというものである。

【参考】<スタッフ劣化?>「めちゃイケ」の編集がヘタすぎる(http://mediagong.jp/?p=14838)

矢部の不倫相手ということでドッキリの冒頭に名前の出てくる「優」(扮するのは濱口優)が最後に登場するというのが大オチになっており、序盤に張った伏線が時間をかけて回収されるという壮大なストーリーができている。

ただ、岡村も本番でその出来を心配していた通り、彼の「素」を隠し撮りしていたため、素で面白い芸人ではない岡村にテレビ的に映えるリアクションがなかったのが残念である。「素の岡村を撮ってもあまりおもしろくないだろう」という判断があったからこそ、今まで岡村を隠し撮りするドッキリはやってこなかったのではないかとすら思える。

笑えるリアクションがあまりなかったからこそ、基本的に感動寄りの演出・編集にしてドキュメンタリーっぽく仕上げるしかなかったのだろうと推察する。やっぱり、素のリアクションがおもしろいのは濱口を始めとする天然の人たちなのである。

他の細かいドッキリはと言えば、完全に「最近のダメなロンハー」程度のクオリティしかなかった。「ロンドンハーツ」を見せられているのではないかと思ってしまったほどである。壮大なストーリーも何もあったものではなく(濱口に対するドッキリや加藤浩次に対するドッキリには若干伏線めいたものもあったが、薄めであった)、ターゲットに短めのイタズラを仕掛けるだけで、ドッキリというよりはリアクションである。

同じイタズラをターゲットを変えながら何回も繰り返しており、ターゲットの間にも相互の関連性は希薄なので、ただ映像を足し算して尺を埋めただけなのである。「めちゃイケがドッキリをやったらどうなるか」という煽り文句なのに、他の番組のやり方をそのままなぞっているので、この煽り文句が空しく響く。「めちゃイケ」でわざわざやる意味がない。

その大して面白くないドッキリを見てやいのやいのと楽しむ「めちゃイケ」メンバーも、見ていて辛い。彼らは演者である以上見せられた映像を(自分の本心からは離れて)おもしろがる(ことで視聴者の笑いを呼び起こす)のが仕事なので、彼らを責めることはできない。

しかし、こういう凡庸な演出を茶化してこそ「めちゃイケ」なのに、いつの間にかこれらの演出を多用する「凡庸な番組」と同じフィールドに立ってしまっているのである。

4月29日放映分の「めちゃイケ」も、8日放映分のドッキリ企画の残りであり、単発のドッキリを積み重ねて尺を埋めただけで面白みがなかった。筆者が一番笑えたのは小峠英二にドッキリを仕掛けた西村瑞樹のヘタクソさ加減だったが、それだって西村が笑わせようと思ってヘタクソにやっているわけではない。

非常に、良くないと思うのは筆者だけだろうか。

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