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<部活動の外部委託>時給5000円の委託講師でも顧問はできない

メディアゴン / 2017年5月22日 7時30分

黒田麻衣子[国語教師]

* * *

部活動の外部委託について、議論が進んでいる。それに私は、諸手を挙げて賛成することはできない。部活動の指導に情熱を傾けている先生もいらっしゃるからだ。

たしかに私自身、かつて学校教員だったが、その時分には、外部委託を熱望した。教師になって10年以上も、教科指導、生徒指導、進路指導と部活動の指導、すべてに手を抜かずがんばろうとして、365日休みなく働いた。

その結果、私は「燃え尽き症候群」になって、みずから退職した。これ以上、教師を続けると、死んでしまうと思ったからだ。もちろん、今なお、教育への情熱は人並み以上に持ち合わせているつもりである。それでも、いや、だからこそ、続けることが非常に苦しい仕事だった。

外部委託により、部活動を教師の仕事から完全に切り離してくれていたら、きちんと週に1、2回の休日を取れていたら、私は、辞めずに今も学校教師を務めていたかもしれない。

教科指導やクラスの生徒の指導にもっと時間を使いたいと思っている先生にとって、部活動を外部委託できることは、朗報以外の何物でもない。

しかし、学校教師のなかには、部活指導がしたくて先生になった人もいるということを忘れてはならない。「選手」としてはたどり着けなかった甲子園に、国立に、花園に、代々木体育館に、今度は「監督」として、と新たな夢を見て教師を目指す人がいる。

部活動を通じて、多くのことを学び、親友を手に入れた人も多い。部活動指導に情熱を持って当たっている先生は、全国にたくさんいらっしゃるのだ。

たとえば、私は、今までに何度も教え子の結婚式に招かれたが、そのほとんどは、部活動の顧問として指導した生徒たちだった。卒業後10年以上経っても「仲間」として集まるのは、部活動を共にしたメンツだったりする。

「仲間」の集まりに呼ばれる先生は、担任ではなく、部活動の顧問だったりする。実は、担任よりも部活動の顧問のほうが、ずっと深い人間教育ができることもあるのだ。人間教育をできる「場」が、部活動に多くあるからだ。それを、肌で感じている先生方のなかには、部活動指導が外部委託されることに、反対の人もいらっしゃると思う。

【参考】<キンコン西野が直言>「授業を聞かなくなるから」でスマホを禁止する教師は怠け者だ(http://mediagong.jp/?p=15546)

部活動が先生方の人間らしい生活を圧迫していることは事実だ。

しかし、だからと言って、学校教師のすべてが、部活動指導をやりたくないと思っているわけではないということは、知ってほしい。みんながみんな、イヤイヤやっているわけではないということを知ってほしい。学校の先生方は、部活指導がイヤだと言っているのではなく、休みが欲しいと言っているのだ。

先日ニュースで、東京都内の部活動外部委託の取り組みを見た。外部委託指導員には、時給5000円も支払われるのだそうだ。教師が休日に部活指導をしていただける手当は、4時間以上(時間制限の上限なし)でわずか1500円程度だ。放課後の指導には、いっさい手当がつかない。

外部講師は部活動の技術指導はしてくれるのだろう。しかし、部費の管理、生徒の人間関係などの問題解決、対外試合への手続き、引率、学校備品の管理、施設の施錠など、顧問としての仕事の大半は教師が抱えたままである。

外部講師に時給5000円も支払う余裕があるなら、教員数を増やしてもらいたい。そして、部活動の顧問を持っている教師には、きちんと代休を取れる余裕を作ってもらいたい。部活動の時間分、朝の出勤をゆっくりにするとか、クラス担任の業務を外すとか、土日に出勤するぶん、平日に定休日を設けるなど、教師の数を増やしてくれれば、かなり解決する部分があるはずだ。

部活指導を、近隣の学校と合同で行うなどの柔軟性も加えると、より効率的であろう。

もちろん、外部講師に技術指導をお願いすることが悪いわけではない。悪いわけではないが、それですべてが解決できるわけでもない。

財務省は、児童生徒数の減少を理由に、学校教員の数を減らしたがっている。減らす前に、見直すべき労働状況があるのだということを、もっと考えていただきたいものである。

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