<太陽光発電のムダ>累計買取費用32兆円でも電源割合わずか7%
メディアゴン / 2017年9月27日 7時30分
石川和男[NPO法人社会保障経済研究所・理事長]
* * *
原子力発電(原発)が大嫌いで、太陽光発電(ソーラー)が大好きな朝日新聞・毎日新聞・中日新聞でさえ、最近、原発批判一辺倒ではなく、太陽光発電に対する逆風の論調記事を連打している。
今まで、やや盲目的に礼賛してきた太陽光発電に関して、「やり過ぎ」感が出ている。ここ数週間だけでも、次のような報道ぶり。マスコミも、やっと冷静になり始めたようだ。
9/21 朝日「メガソーラーに住民が反対宣言 東浦、集会に150人/愛知県」
9/21 中日「太陽光施設「絶対反対」 東浦 住民団体が宣言採択」
9/20 朝日「メガソーラー「望ましくない」 和歌山市長/和歌山県」
9/18 中日「追う 国立公園 相次ぐ太陽光発電 樹木伐採に「本末転倒」」
9/15 毎日「豊島の太陽光発電計画:説明会に島民120人 反対強く/香川」
9/15 毎日「太陽光発電:熱海市届け出4カ所 建設相談は2カ所/静岡」
9/15 中日「諏訪の太陽光発電反対 茅野の住民 市長に署名提出」
9/13 朝日「メガソーラーに「慎重に対応を」 茅野の住民、県に要望/長野県」
9/13 毎日「みんなの広場:放置された太陽光パネル」
9/12 朝日「メガソーラー計画 高島の山林伐採し建設/滋賀県」
9/12 中日「反対署名2次分提出 高島 メガソーラーで住民団体」
2011年3月の東日本大震災による福島第一原発事故をきっかけに、急速に注目を浴びてきたのが、太陽光・風力・バイオマスなどの再生可能エネルギー。
国も、再エネ普及を促進するため、再エネを高値で買い取る「固定価格買取制度(FIT)」を12年7月に導入。再エネのうち太陽光だけは、FITより高値で買い取る「余剰電力買取制度」が09年11月に先行導入されている。
【参考】日経新聞でやっと出てきた真っ当な「再生可能エネルギー」報道
FITは、日本で導入される前から、欧米など多くの国や地域で採用されてきた再エネ普及策。世界的には、09年以降のシリコン価格低下によるモジュール価格低下や、それと並行した設置量の増加、買取価格の引下げにより、太陽光発電コストは大幅に低下(2009年35円/kWh → 2017年10円/kWh)。
しかし、こうした世界的な動きは、日本の一般消費者にはまったく利益を与えない。日本では、太陽光発電コストがいくら安くなっても、太陽光による電気を高値で買い取る制度が今後しばらく続く。
日本でも、太陽光による電気の買取価格、2009年48円/kWh → 2012年42円/kWh → 2017年21円/kWh と順次低下。だが、2012年のFIT導入以降、FIT認定を受けていながら太陽光パネルの値段が安くなるまで稼働を開始しない「既認定・未稼働」案件が続出。
これは、稼働し始めた日の買取価格ではなく、認定を受けた日の買取価格で10〜20年間の買取りを保証するという、現行FITの「大甘な」仕組みによる。このままでは、太陽光発電コストが安くなればなるほど、利益が増えるのは太陽光発電事業者側だけで、一般消費者への利益還元はぜんぜん見込めない。
経済産業省の将来試算では、2030年時点の太陽光関連の年間フロー額(買取費用)は2.3兆円。直近(2016年)の年間買取費用実績は1.7兆円に達しており、この費用が2030年の想定値まで直線的に増加すると仮定すれば、2012年のFIT開始から30年までの太陽光買取費用は累計32兆円。
これほどの費用を注ぎ込んだとしても、2030年時点の電源構成に占める太陽光の割合は、わずか7%程度の見通し。
2030年時点の電源構成で76〜78%を占める原子力・火力関連の年間フロー額(燃料費)が年間5.3兆円であることと比較しても、現行FITはあまりにも費用対効果が低い。だから、太陽光発電に係る日本国民の負担を下げていくことが必要となる。
それを実現していくための制度改革は、例えば次のようなものが考えられる。
(1)未稼働案件の買取価格は、認定日の買取価格ではなく、稼働開始日の買取価格とする。
(2)既稼働案件も、未稼働案件も、買取期間(10〜20年)を大幅に短縮する。
(3)既稼働案件の買取価格を大幅に引き下げる。
上記(1)〜(3)のいずれも、「太陽光既得権の打破」である。実現するかどうかは、国会と政府のやる気次第だ。
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