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プロ野球で頻出する「国歌斉唱」とマスコミの沈黙

メディアゴン / 2017年10月2日 7時30分

上出義樹[フリーランス記者/上智大学メディア・ジャーナリズム研究所研究スタッフ]

* * *

<内心の自由に関わる国旗・国歌問題>

米国のプロスポーツ界ではトランプ大統領の人種差別的な言動に対し、アメリカンフットボールの黒人選手らが試合前の国歌斉唱に抗議する動きが広がっている。

米国のようにトラブルが起きているわけではないが、日本のプロ野球をテレビ観戦していると、試合前に両軍選手が整列し、国歌が流れる光景がやたら多い。

当然のように観客にも起立を促している。公の場での国歌斉唱は、個人の内心の自由に関わる大きな問題のはずだが、マスコミは卒業式・入学式以外で、国旗・国歌問題をほとんど報じることがない。

<パリーグは毎試合、セリーグはカード初戦に君が代>

複数の球団によると、セリーグは2014年以後、3連戦あるいは2連戦のカード初戦、パリーグは原則として毎試合「君が代」が流れ、有名歌手が独唱する場合もある。

昔はスポーツで「君が代」が斉唱・演奏される場面と言えば、国際試合を除くと大相撲の千秋楽くらいだったが、1999年の国旗国歌法の制定で徐々に増加。

【参考】<「一同、起立」さえNG?>「乱れる成人式」は日本古来の儀式を軽視した学校教育の責任

プロ野球の場合は、安倍晋三政権に媚を売るようなタイミングで国歌斉唱のセレモニーが定着した観を否めない。

<国旗・国歌問題に感度が鈍いメディア>

国旗国歌法の制定に際し、当時の小渕恵三首相は国会で、国旗や国歌が国民に「義務づけ」するものではないとの趣旨の答弁をしている。ところが、実際には卒業式で国歌斉唱時に起立をしない教員が処分されるなど、「強制」がまかり通っている。

アジアの人々から日本の侵略戦争の象徴ともされる日の丸や、天皇を賛美する歌詞が付いた「君が代」に抵抗感を持つ国民は決して少なくない。その点で、国旗・国歌は極めて政治的な意味合いが強い。そんな国旗国歌問題に本来、メディはもっと敏感でなければならないはずだ。

<中央省庁の記者会見場にも昔はなかった日の丸が鎮座>

同法の施行直後には、閣僚記者会見の会場への国旗持ち込みに体を張って反対した記者もいた。しかし、自省を込めての報告になるが、今は中央省庁の記者会見会場に当たり前のように日の丸の旗が鎮座し、記者たちから抗議の声が聞かれることはない。

本題に戻ると、プロ野球でなぜ、頻繁に国歌を流す必要があるのか。それを問う記事を見たことがない。当たり前の「日常風景」にしてしまってよいのだろうか。

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