テレビ界から消えた「キラキラ光る」才能を持った作り手たち
メディアゴン / 2017年12月4日 7時30分
高橋秀樹[放送作家/日本放送作家協会・常務理事]
* * *
20世紀から21世紀に変わる頃、テレビのエンターテインメントの現場にはキラキラ光る才能の持ち主がいた。出演者のことではない。ディレクターやプロデューサー、AD、放送作家、美術スタッフ、デザイナー、照明、大道具・小道具、カメラマン。そういった制作側の現場スタッフのことである。
今、テレビの制作現場にそんな「キラキラ光る人」は見当たらない。
「キラキラ光る人」がいなくなったのがいつ頃からだろうか。あくまでも筆者の感覚だが、だいたい2005年あたりからと感じている。つまり、ここ10年以上、「キラキラ光る人」に出会えていないことになる。
筆者は放送作家だから、新人のディレクターを毎年紹介される。そんな新人ディレクターや新入社員たちの中に「これは!」と思う人が入ってこなくなったのが、だいたいその頃である。
エンターテインメントは凡庸では作れない。しかし、その頃からテレビ業界は、頭は良さそうだが凡庸な人、頭も悪そうで凡庸な人ばかりになってしまったような気がする。偶然か必然か、テレビ離れが加速し、テレビという業態の衰弱と時を同じくしての変化であった。
民放の場合、この凡庸な人たちの集団のいわば2軍というべき人が作っているものがBS放送であることが多い。当然、面白いはずもない。
【参考】「欽ちゃんのタレント生命危機」はジャニーズネタの濫用?
現場ではない編成局という場所にも昔は「キラキラ光る人」がいた。編成局は番組の企画を決め、ラインナップを決めるテレビ局の心臓部である。大量に集まる企画の中からヒットするであろう企画を選ぶのには相当の眼力を必要とする。
他の編成局員が反対する中、自分はこの企画を支持すると言って孤軍奮闘、予算をきちんとつけてくれる編成マンがいた。しかしながら、現在は合議の多数決で番組が決まっている。
筆者は30年も放送作家をやっているため、若い放送作家も色々とたくさん知っている。その中にはまだ実力がなく、筆者から見れば放送作家と名乗ってはいるが、実際はただの人でしかないような人も仕事をしている。
そんな人に誰が仕事を依頼するのかと不思議になるが、「そんな人」にも仕事はある。何故なのか? 筆者には「そんな人」にも仕事があることが不思議でならなかった。しかし、ある時、気づいた。
「そんな人」に仕事を発注する凡庸なディレクターがいるからであった。凡庸なディレクターと凡庸な放送作家は、2人ともレベルが同じだから話が合うのである。低空飛行同士で安心感もあるのだろう。そんな人たちが面白くもない凡庸な番組を作っている。
これから民放は特に、物作りの会社ではなく、管理会社になっていくだろう。
実際に番組を作るのはテレビ局ではなく、番組制作会社と言うことになるが、この制作会社にキラキラ光る才能がいるか? と問われれてもなかなか見当たらない。制作会社とはテレビ局の「薄れて読めないカーボンコピー」のような存在であるからだ。
ただし、制作会社のディレクターの場合は、番組をハズしてばかりいると、仕事を失い、食っていけなくなるという「マイナスのインセンティブ」がある分、まだまだ有利だろう。少なからず危機感もあるからだ。
以上を踏まえて、これからのテレビの作り手対して筆者が思うことは、
「テレビ番組を作るディレクターを皆、フリーにすれば良いのではないか?」
ということである。
外部リンク
この記事に関連するニュース
-
なぜ裏方だった佐久間宣行はお笑い界、テレビ界で無視できないほどの快進撃を見せているのか?
集英社オンライン / 2024年11月13日 11時0分
-
「僕たちテレビは自ら死んでいくのか」相次ぐ大物テレビマンの独立だけではないテレビ局を巣食う「組織の論理」の息苦しさ
集英社オンライン / 2024年11月12日 11時0分
-
「女にテレビは作れない」「仕事できねぇくせに」ハラスメント、性差別…氷河期世代プロデューサーが語る“壁”
CREA WEB / 2024年11月7日 17時0分
-
「聞いてもらえるまで20年かかった」女性プロデューサーが語る、テレビでハラスメントが起きる理由
CREA WEB / 2024年11月7日 17時0分
-
東京03「つまらない素材を編集で全く違うものに作り変えた」 オークラの実話エピソードに驚がく
ORICON NEWS / 2024年10月29日 19時27分
ランキング
-
1斎藤元彦氏側が知事選で「広報全般を任された」会社に報酬支払い、SNSでは違法との指摘相次ぐ
読売新聞 / 2024年11月24日 1時20分
-
2石破首相、日朝首脳会談に意欲「会いもせず非難しても始まらない」…家族会は「タイムリミットがある」
読売新聞 / 2024年11月23日 19時13分
-
3標津川で「流された」男児が死亡 通報から3時間後に下流で発見
毎日新聞 / 2024年11月23日 20時56分
-
4車動き出し下敷き、71歳妻死亡 群馬の温泉旅館駐車場
共同通信 / 2024年11月24日 1時16分
-
5神戸港沖合で貨物船と押し船衝突、押し船の3人投げ出され2人救助されるも1人死亡…1人不明
読売新聞 / 2024年11月24日 0時6分
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
エラーが発生しました
ページを再読み込みして
ください