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<日馬富士事件>重大傷害事件を軽微にするメディアの印象操作-植草一秀

メディアゴン / 2017年11月22日 7時30分

植草一秀[経済評論家]

* * *

想定されたとおりの情報操作、印象操作が行われている。横綱日馬富士による貴ノ岩に対する傷害事件に関してである。印象操作を主導しているのはNHKと相撲協会。朝日新聞も明らかに相撲協会寄りの情報発信を行っている。

NHKや朝日新聞が強調しているのは、「ビール瓶で殴っていない」ことと「診断書が二通あること」だ。

さらに、二通目の診断書を書いた医師が、「髄液漏」だけでなく「頭蓋底骨折」も確定診断ではなく、「疑い」であると新たに説明したことが繰り返し報道され、「重症との報道に驚いている」とのコメントが繰り返し報道されている。

しかし、診断書として「頭蓋底骨折」や「髄液漏」の「疑い」があるとの診断は、常識的に重大な診断である。決して軽傷というものでない。

また、「脳振とう、左前頭部裂傷、右外耳道炎」については、「疑い」ではなく、確定診断である。裂傷については、10針を縫う傷であると伝えられており、仮に、10針縫ったというのが事実であれば、基本的には「重症」の範疇に入ると考えるのが常識の判断である。

診断結果として、相撲を取ってもよいとの判断だったと医師が説明しているとのことだが、上記の診断があるなかで、頭から激しくぶつからなければならない本場所の取り組みについて、高ノ岩あるいは貴乃花部屋が「大事をとった」としても、まったくおかしくない。

これを「仮病説」の見出しで報道すること自体が極めて悪質な「印象操作」であると言わざるを得ない、「ビール瓶」について、日馬富士もこれを否定したと報道されているが、他方で、「カラオケリモコン」で殴打したことについては認めているとの報道もある。

こちらには、カラオケリモコンで「軽く殴った」との本人説明が報じられているが、激高した局面で、カラオケリモコンを用いて「軽く殴った」のかどうかを客観的に証明することは極めて困難だ。「10針も縫うような裂傷」が存在したのかどうかが、暴行の態様を決定づける最大の焦点になると見るべきである。

NHKや朝日新聞の報道は、「ビール瓶でなぐっていない」「素手で殴った」ことを、ことさらに強調し、「ビール瓶以外の凶器を用いたのかどうか」についての事実関係の説明を意図的に省き、さらに、「左前頭部裂傷」について、意図的に、これを無視する傾向を強く持つ、極めて偏った報道であると言わざるを得ない。

「ビール瓶を用いていない」「骨折はなかった」ことを根拠に、重大な傷害事件ではない、軽微な傷害事件として処理するための「情報操作」、「印象操作」が大規模に展開されている疑いがより濃厚になっている。

メディア・相撲協会・警察検察当局が利権複合体を形成していることを背景に、傷害事件を不問に付す可能性が探られている気配が漂い始めている。

貴ノ岩はモンゴル出身力士でありながら、モンゴル力士勢力の「互助組織」に加わってこなかったと伝えられている。

本年の初場所14日目に貴ノ岩が白鵬に勝利して白鵬の優勝を阻んでいる。

このことを白鵬が根に持っているとの見方も指摘されている。

貴乃花部屋の「ガチンコ」体質が背景になって、貴ノ岩がモンゴル力士勢力に疎まれていたことが今回の傷害事件の背景にあるとも見られている。メディアの偏向した情報によって、悪徳の力によって真実が覆い隠されぬよう、市民が監視を強める必要がある。

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