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<前川・前事務次官中学校講演>文科省の難癖メールを学校長らが見事に論破

メディアゴン / 2018年3月24日 22時22分

<前川・前事務次官中学校講演>文科省の難癖メールを学校長らが見事に論破

上出義樹[フリーランス記者/上智大学メディア・ジャーナリズム研究所研究スタッフ]

* * *

<名古屋市立中での前文科省次官の講演がヤリ玉に>

「オイコラに回帰しそうな文科省」。3月17日付の朝日新聞朝刊「朝日川柳」に掲載された一句である。この川柳にある通り、加計学園問題で「行政が歪められている」と証言し、安倍政権を公然と批判した文部科学省の前川喜平前事務次官が名古屋市の公立中学校の授業で講演したところ、同省はこの人選に難癖をつけるようなメールを市教委に送り付け、報告を求めたことが大きな問題になっている。

国から「圧力」を受けた中学校長や市教委はさぞかし萎縮しているかと思いきや、そうではなかった。毎日新聞17日付電子版に載った両者のメールのやりとりからは、同省による教育現場への行き過ぎた介入ぶりとともに、校長らが同省の執拗な問い合わせにも臆せず回答し、見事に論破していることが読み取れる。

<前川氏を悪者扱いし学校側に執拗な質問>

前川氏は2月16日に名古屋市立八王子中学校の総合学習の授業で講演し、全校生徒約300人のほか保護者や校下の市民ら約200人が受講した。これを報道で知ったという文科省教育課程課が、授業内容に細かく立ち入る質問や講演の録音提出を求める異例のメールを同市教委に送付している。

両者のメールの全文を掲載した毎日新聞電子版によると、同省からの問い合わせは追加分も含め26項目わたり、「具体的かつ詳細にご教示ください」と半ば命令口調で回答を求めるなど、高圧的で執拗で内容だ。

何より、特徴的なのは前川氏を悪者扱いしている点。「天下り問題により辞職し、停職相当」「出会い系バーの店を利用」していることなどを強調し、「こうした背景がある同氏」に「どのような判断で講師を依頼したのか」と詰問している。

さらに同省は、「様々な人の生き方を学び、自分の生き方を考える」ことを目標とする同校の総合学習の授業内容自体に立ち入り、①前川氏のどのような生き方を生徒に学ばせたかったのか②保護者らにも公開した理由は何か③受講した生徒や保護者らの反応はどうだったか-などの質問をぶつけている。

<実際の講演は生徒の学習意欲高める内容>

講師への謝礼などの質問を含め、文科省の嫌がらせとも思える問い合わせだったが、授業を行った当事者の上井(うわい)靖・八王子中校長は気負うこともなく淡々とメールで回答。

まず、前川氏の人選については「天下り問題は、文部省ひいては国家公務員全体の問題」「バー云々については、良心的な目的であったことが報道されている」「いずれも今回の講演を依頼する障害になるとは考えなかった」と、しっかり切り返す。

【参考】<森友文書改ざん問題>改ざん前文書に見る近畿財務局の叫び

さらに、生徒・保護者らの反応や授業の目的・内容では、(1)生徒から「不登校の出来事を教えてもらい、人は変わることができると分かった」「いくつになっても(夜間中学などで)学びたい人がいることが分かった。

中学生の僕も一生懸命学ぼうと思った」などの感想があった(2)受講した生徒や保護者、地域の人からは講演に対する否定的な反応は一切ない③地域の人々が「開かれた学校」として学校に関心を持ってくれている-ことなどを紹介し、前川氏の講演は授業目的にかなった内容であったことを報告。「政治的な偏向」などを突きたかったであろう文科省の思惑は見事に論破された形だ。

<教育現場への不当な介入には今後も警戒が必要>

その後、今回の講演を自民党の国会議員が問題視し同省に働きかけたことが報じられる一方、前川氏は18日の記者会見で、文科省が個別の授業内容に踏み込むのは「禁じ手」と断じている。教育基本法にも抵触する教育現場への不当な介入には、今後も警戒が必要だ。

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