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<佐川氏証人喚問>前線陥落で敗走に次ぐ敗走迫られる安倍官邸 -植草一秀

メディアゴン / 2018年3月25日 7時20分

植草一秀[経済評論家]

* * *

佐川宣寿元財務相理財局長に対する証人喚問が3月27日に実施されることになった。佐川氏は3月9日に突然辞意を表明し、国税庁長官を辞任した。財務省による公文書改ざんの事実を安倍首相官邸が正式に把握したのは3月11日とされ、財務省がこれを正式に認めたのが3月12日である。

この時系列で考えれば、佐川氏の国税庁長官辞任は3月11日以降であるべきだったのではとの声が聞かれる。テレビの報道関係番組で出演者がこのような感想を述べている。これらのコメントはものごとの本質をまったく理解していないものである。

3月2日の朝日新聞スクープ報道以降、安倍首相官邸は完全に後手に回っているのである。財務省も安倍首相官邸も、事態の進展全体を読むことができず、問題の拡散、拡大を回避するために、対応を小出しにして、真相を隠蔽し続けているが、その防衛線がことごとく突破され続けて、防戦一方に回っているのだ。

3月9日の佐川宣寿氏国税庁長官辞任は官邸の命令によるものである。ここで佐川氏による辞任を実行させて、幕引きを図ろうとしたのである。財務省は3月6日にすでに開示していた公文書と同じものを提示した。この時点では、これで押し通す判断だったのである。

しかし、朝日新聞側は、改ざんされる前の元の公文書を「確認」していたから、「元の公文書が改ざん後のものである」との主張は通用しない。3月6日の「改ざん後公文書」の提示は一顧だにされずに轟沈してしまった。

3月9日に、突然佐川氏が辞任を表明したのは、近畿財務局職員の死亡が判明し、公文書改ざんの事実が明らかになることを察知して、佐川氏辞任で幕引きを図ろうとする浅はかな判断に基づくものであったと推察される。

しかし、これで問題が決着するわけもなく、12日に改ざんの事実を認める事態に追い込まれた。そもそも、安倍首相官邸は3月5日の時点で国土交通省からの報告によって、公文書改ざんの事実報告を受けていたが、3月9日までは、隠蔽路線で押し切る可能性に賭けていたのだと見られる。

ところが、後手に回る逃亡作戦はことごとく失敗し、改ざん事実の認定が行われ、佐川宣寿元理財局長の証人喚問にまで到達しているのである。防衛線が突破され、遁走態勢に移行した安倍首相官邸は極めて脆い状況に陥っている。

防衛線は後退を迫られ続け、最後は白旗を上げて投降ということになるだろう。公開された公文書には、安倍昭恵氏が当該国有地について「いい土地なので前に進めてください」と発言したとの記述がある。この発言は籠池氏による引用形態の発言であるが、近畿財務局側が公文書にこの記載を載せた意味は、この安倍昭恵氏発言に有意性を認識したことの表れである。

「自分や妻がかかわっていたら総理大臣も国会議員も辞める」という安倍首相発言に抵触する部分であることは間違いない。

安倍首相は「妻に確認したところ、そのような発言はしていないということだった」で済まそうとしているが、この主張は、「籠池氏の発言が伝聞であるから安倍昭恵氏が言ったということにならない」との主張と同じ論理構成で矛盾を来している。

籠池氏の発言は「安倍昭恵氏の発言を籠池氏自身が引用しただけのもので信憑性がない」のなら、安倍首相の発言も「安倍昭恵氏の発言を安倍晋三氏が引用しただけのもので信憑性がない」と指摘されて反論できないことになる。

公表された改ざん前の公文書では、「安倍昭恵氏がかかわった」事実を示しており、これを否定するには、安倍昭恵氏自身の説明が必要不可欠になる。国会はこの点を明確にして、安倍昭恵氏の証人喚問を実施するべきである。

安倍首相夫妻と森友学園との関係において、重要な行動が示されたのが2015年9月3-5日である。9月3日に安倍首相は財務省の迫田英典理財局長および岡本薫明官房長と面会している。翌9月4日に安倍首相は大阪へ日帰り出張に出かけ、夜、故冬柴鉄三元国土交通相の次男である冬柴大氏が経営する大阪市北区の海鮮料理店「かき鉄」で今井尚哉秘書官、冬柴大氏らと会食をしている。

そして、その翌日の9月5日に安倍昭恵氏が新設小学校の名誉校長に就任し、ここから森友国有地問題が急進展し始めた。安倍昭恵氏が指示をして財務省と折衝させた公務員秘書が谷査恵子氏であるが、谷氏は経産省からの出向者である。

この案件における首相官邸のキーパースンは経産省出身の今井尚哉秘書官である。今井氏は9月4日の大阪出張に際して、森友学園と接触、あるいは、近畿財務局における森友事案の打ち合わせに顔を出している可能性がある。

谷査恵子氏、今井尚哉氏、迫田英典氏の証人喚問ないし参考人招致が必要不可欠である。安倍首相官邸は完全に遁走態勢に移行し、防衛線を次から次に突破される事態に直面していると判断できる。

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