<映画「ペンタゴン・ペーパーズ」>日本の報道機関・官僚・政治家のすべてが見るべき映画
メディアゴン / 2018年4月17日 7時40分
![<映画「ペンタゴン・ペーパーズ」>日本の報道機関・官僚・政治家のすべてが見るべき映画](https://media.image.infoseek.co.jp/isnews/photos/mediagong/mediagong_25386_0-small.jpg)
高橋秀樹[放送作家/日本放送作家協会・常務理事]
* * *
映画『ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書(The Post)』(監督スティーヴン・スピルバーグ、主演メリル・ストリープ、トム・ハンクス)を見た。
舞台は1971年のアメリカ。時の大統領はニクソン。宗主国フランスの後を引き継ぐ形で始まったアメリカによるベトナム戦争は泥沼化している時代である。アメリカ政府はこのベトナム戦争の惨状を国民にひた隠しにしたまま、アメリカの若者を戦場に送り出し続けていた。
その戦場を目の当たりにした軍事戦略の研究機関ランド研究所のダニエル・エルズバーグは、自らも加わってまとめた国家最高機密文書(ペンタゴン・ペーパーズ)を持ち出し、新聞2紙に持ち込みんだ。まずはニューヨーク・タイムスが記事を掲載する。ところが、アメリカ政府はこれを記事にすることは、国家の安全保障を干犯するとして連邦裁判所に提訴する。ここから国家対報道の戦いが始まった。
本作を見て思ったことは、「アメリカの自由はまだまだ健全だったのだなあ」ということである。
まず、国が戦況についてウソの発表をし続けることを座視できず、いわば、命がけで文書を持ち出すシンクタンク職員の存在である。しかも、軍の設立したシンクタンクなのである。そして、例え国が自分たちを牢獄に放り込んだとしても、記事は書かなければならないと主張する記者の職業意識。これを凜として認める新聞社主の存在がある。
【参考】<行政から報道への脅し>暴言にメディア各社は反撃を
今の日本なら、どうなるだろう。筆者は知る限りの記者や報道機関のトップの顔を思い浮かべて想像してみたが、7対3で記事化しない派が多いだろう。そう考えると、やはり今話題の放送法第4条の二項「政治的に公平であること」は廃止すべきなのだろう。これを根拠に介入されたら腰砕けになるのがテレビ局という報道機関だ。
アメリカには次のような合衆国憲法修正第一条がある。
「連邦議会は、国教の樹立を支援する法律を立てることも、宗教の自由行使を禁じることもできない。 表現の自由、あるいは報道の自由を制限することや、人々の平和的集会の権利、政府に苦情救済のために請願する権利を制限することもできない」
これを根拠にヒューゴ・ブラック判事は次のような新聞勝訴の判決を書いた。
「合衆国健国の父は、憲法修正第一条をもって、民主主義に必要不可欠である報道の自由を守った。報道機関は国民に仕えるものであり、政治や政治家に仕えるものではない」
日本にはこんな勇気のある判決を書ける裁判官は少ないだろう。大半が、国におべっかを使う裁判官ばかりである。三権分立はどこに行ったのかと思いたくなるときが時々ある。民主主義の先輩アメリカはいま、危ういながらも民主主義を堅持出来そうな気配だが、そのアメリカからもらった民主主義を(310万人の戦没者の犠牲をもって手に入れた民主主義という見方も出来るが)日本は大事にしているのだろうか。
それを考える意味でも、この映画『ペンタゴン・ペーパーズ』は、日本の記者・報道機関トップ・官僚・政治家…すべてに見て欲しいと思う。
この記事に関連するニュース
-
「開発独裁が効率的」「脱炭素も進む」...中東の「民主国」クウェートで何が起こっているのか
ニューズウィーク日本版 / 2024年7月17日 18時40分
-
トランプもバイデンもイスラエルを支援する理由 聖書と冷戦が生んだ米国とイスラエルの同盟
東洋経済オンライン / 2024年7月17日 9時0分
-
ハンガリーの強権首相オルバンを「模範」と崇めるトランプ主義者のトンデモ構想
ニューズウィーク日本版 / 2024年7月9日 17時31分
-
ジュリアン・アサンジとウィキリークス...機密情報漏洩から自由への道程
ニューズウィーク日本版 / 2024年7月2日 15時40分
-
「反共主義」のためならナチスの残党も利用する…長らく"孤立主義"だったアメリカを大きく変えた「2つの脅威」
プレジデントオンライン / 2024年6月25日 9時15分
ランキング
-
1トヨタの新型「ランドク“ルーミー”」初公開!? 全長3.7m級「ハイトワゴン」を“ランクル化”!? まさかの「顔面刷新モデル」2025年登場へ
くるまのニュース / 2024年7月23日 11時50分
-
2ダニ繁殖シーズン到来…アレルギー持ちや痒くてたまらない人はカーペットと畳に注意
日刊ゲンダイDIGITAL / 2024年7月24日 9時26分
-
3父親と“彼女の母親”がまさかの…両家顔合わせの食事会で二人が「固まった」ワケ
日刊SPA! / 2024年7月24日 15時54分
-
4いい加減にして!何でももらってくる“自称・節約上手”の母のせいで衝撃の事件が…
女子SPA! / 2024年7月24日 8時47分
-
5【520円お得】ケンタッキー「観戦バーレル」本日7月24日から期間限定発売! SNS「絶対に買う」の声
オトナンサー / 2024年7月24日 12時40分
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
![](/pc/img/mission/mission_close_icon.png)
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
![](/pc/img/mission/point-loading.png)
エラーが発生しました
ページを再読み込みして
ください
![](/pc/img/mission/mission_close_icon.png)