選挙を通じての日本政治の刷新は十分可能 -植草一秀
メディアゴン / 2018年5月16日 7時40分
植草一秀[経済評論家]
* * *
もりかけセクハラ事案がありながら、安倍内閣が総辞職しないことは、日本の主権者にとって悲しむべきことである国権の最高機関である国会において嘘が平然と重ねられ、政治権力が政治を私物化している現実が露わになっている。
日本に自浄能力があるなら、このような事態を放置することはあり得ない。国会で多数議席を占有する勢力が、メディアと刑事司法を支配し、「数の力」で国会での議決を強行して暴走を続ける。議会制民主主義が機能不全に陥ってしまっている。
森友事案も加計事案も疑惑はまったく払拭されていない。疑惑は疑惑ではなく、不正が実際に実行されたことはほぼ明らかになっている。本来は、刑事司法が機能して、犯罪を適正に摘発することが必要であるが、刑事司法が政治権力によって不正に支配されてしまっているために、刑事司法までもが機能不全に陥っている。
このようなときに、本来、社会の木鐸としての機能を発揮するべき存在がメディアである。しかし、メディアの大半が政治権力によって支配されてしまっており、暴走する政治権力を追及する活動が停滞してしまっている。
その結果として日本の議会制民主主義が機能不全に陥り、深刻な危機に直面している。事態を打開するための行動を始動させ、日本の議会制民主主義を再生しなければならない。森友疑惑、加計疑惑の真相を完全解明し、責任問題を処理しなければ先に進むことができない。問題の真相解明は日本の主権者国民が求めている重要事項である。
共同通信社が5月12、13日に実施した世論調査結果が公表されている。加計学園の獣医学部新設を巡り、安倍晋三首相の関与を否定した柳瀬唯夫元首相秘書官の国会での説明に関する調査結果は、「納得できない」が75.5%、「納得できる」が14.7%だった。
加計学園の獣医学部新設に関する手続きについては、「適切だったと思わない」が69.9%で、「適切だった」が16.9%だった。
主権者の大半は、加計疑惑に関する安倍内閣の説明にまったく納得していない。加計学園関係者と柳瀬唯夫首相秘書官が2015年3月から6月にかけて、首相官邸において3回面会を重ねていた事実が明らかにされた。
今治市が申請する国家戦略特区における獣医学部新設について、事業決定後の公募で応募する立場の加計学園関係者が首相官邸で柳瀬唯夫氏と面会していた。4月2日の面会には愛媛県職員、今治市職員も同席し、説明しているが、柳瀬氏はその記憶がないとしている。
この案件が当初から「加計ありき」で動いていたことを示していると同時に、安倍首相官邸が加計学園に対して異例の便宜を図ったということになる。加計学園による獣医学部新設に安倍首相が深く関与してきたと考えられているが、安倍首相は、加計学園が獣医学部新設の意向を有していたことを2017年1月に初めて知ったと強弁し続けている。
嘘と隠ぺいで塗り固めなれた安倍内閣の説明を主権者はまったく信用していない。だからこそ、国会が関係者の証人喚問等を積極的に実施して、事案の全容を完全解明することが強く求められている。
共同通信社の世論調査では、福田淳一前財務事務次官のセクハラ問題を巡り麻生太郎財務相が女性記者にはめられた可能性を否定できないとの見方を示し、その後撤回したことに関する麻生氏の責任について、「辞任すべきだ」が49.1%、「辞任の必要はない」が45.5%だった。
麻生太郎氏の辞任を求める意見が極めて強い。同時に発表された政党支持率を見ると、自民党37.1%、立憲民主党も13.3%、国民民主党1.1%、公明党3.7%、共産党4.5%、日本維新の会11.5%、自由党0.7%、新「希望の党」0.7%、社民党0.8%、支持政党なしが34.2%だった。
立憲民主党、共産党、自由党、社民党の支持率を合わせると19.3%になる。自公の支持率を合計すると40.8%で、上記野党4党の支持率の2倍を超えているが、野党4党の支持率が約20%存在していることは特筆に値する。
支持政党なしが34.2%も存在しており、いざ国政選挙となれば、風の吹き方によって選挙結果は大きく変動し得る。国民民主党が創設されたが、これまでの言動を見る限り、自公政権の補完勢力を目指しているとしか見えない。
だからこそ、結党直後であるにもかかわらず、支持率が1.1%にとどまっているのだと思われる。参議院で国民民主党が野党第一党の地位にとどまったために、参院における安倍内閣追及の勢いが大きく後退する恐れが浮上している。
日本政治を再生させるためには、選挙を通じて安倍政治に対峙する勢力が国会多数議席を確保することが何よりも重要である。安倍政治に対峙する政治勢力の結集が強く求められるが、それを誘導するのは主権者国民の役割である。新しい野党共闘のあり方を明確に確立する必要がある。
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