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<サンデー・モーニングと関口宏>流行に背を向けたキャスターはこうしてできあがった

メディアゴン / 2018年6月1日 7時30分

<サンデー・モーニングと関口宏>流行に背を向けたキャスターはこうしてできあがった

高橋秀樹[放送作家/日本放送作家協会・常務理事]

* * *

筆者は、関口宏に、面と向かってつぎのような失言を発してしまったことがある。

「関口さんみたいに、ちゃんと大学出てて、といってもG−MARCH程度でいいんですが、俳優で、昔は売れてて、今は俳優で行くのも将来はあまり明るくないなあ・・・と思っている芸能人はいませんかねえ」

あきらかに失礼な発言である。関口は「おれは役者で売れなくなったわけじゃないよ」と冗談めかした怒り顔で答えた。「そうですよね」筆者も慌てて言葉を継いで誤魔化した。当時の関口宏と言えば『クイズ 100人に聞きました』(TBS)や、『知ってるつもり?!』(日本テレビ)『サンデーモーニング』(TBS)といった人気番組で、司会を務める押しも押されもせぬ大物である。

その大物司会者誕生の端緒となったのが『クイズ 100人に聞きました』。当時、フジテレビ系列で放送されていた芸能人トーク番組『スター千一夜』では、田宮二郎、高島忠夫、石坂浩二、関口宏、吉永小百合、山口崇と言った俳優陣が、司会を務めていたが、その中で『クイズ 100人』のプロデューサーが目を付けたのが、ちゃんと大学を出ていて育ちも良い関口宏である(関口は往年の大二枚目・佐野周二の息子)。筆者なら、ほかでは石坂浩二も、候補に挙げるだろうがこの人は頭が良すぎるのが難点だ。

【参考】NHK「ノーナレ」が証明するテレビのナレーション過剰

本人の努力も、その3倍はするスタッフの努力もあって『クイズ 100人』の関口宏は司会者として、めきめきと力を付けていくが、ディレクター、プロデューサー、放送作家達は、「関口の司会がもう少し上手ければ番組の魅力もアップするのになあ」と、ぜいたくな悩みを言っていたものである。

関口に司会をしてもらうに当たって『クイズ 100人』のスタッフが、留意したのは関口が徹底してフリーなトークをする部分をなくすことである。

*オープニングジョーク

*解答者のプロフィール紹介で何を話すか

*解答のフォローの少数意見として何を発表するか。

スタッフは、それらすべてを用意した。用意した上で、長い時間を掛けて関口と討論した。当然、関口から拒否されるスタッフ側の案もあり、そんな時はスタッフは大慌てとなった。納得すれば関口は予定通りの司会をする。スタッフはそれを見て安心したが、一方で「破綻のない司会は物足りないなあ」とも思っていた。それらが関口の司会の原型をつくっていったわけだ。

突然だが「あたりまえ」のことを書く。

「企画がだめなテレビ番組はすべてつまらない」

この命題は真か? 実は「真」ではない。

「企画がだめでもおもしろくなるテレビ番組はある」

これが「真」である。

芸人系の演者の場合は特にそうだが、明石家さんまやビートたけしは、おもしろくないまま舞台を去るのは自分の名折れだと思っている。だから、おもしろくない企画の司会者になってしまった時も自分で何とかおもしろくしてしまって、はちゃめちゃな、当初は考えもしなかったおもしろい物が出来あがることがあるのだ。

一方、タモリは企画がおもしろくない時、それは自分のせいではないので、別におもしろくしようとは思わない。

「企画がダメなら番組はつまらない」

この点に於いて、すぐれた企画を自分に引き寄せて業界を乗り切ってきたのが関口宏である。関口のやった番組は企画がすぐれている物が多い。

「どっちの料理ショー」(読売テレビ)

「知ってるつもり?!」(日本テレビ)

「クイズ100人に聞きました」(TBS)

「関口宏の東京フレンドパーク」(TBS)

「わくわく動物ランド」(TBS)

「サンデー・モーニング」(TBS)

もちろんヒットしなかった番組もこの10倍以上あるわけだが、これだけの数の「企画の良い番組」を引き寄せられたのは関口の才覚である。

【参考】<現在のテレビに与えた功罪>久米宏が語る「ニュースステーション論」

さて、これらの番組の関口の司会ぶりの特徴は「自分の意見は言わない」「仕切るのではなく差配する」「突差に考えた発言ではなく事前に用意しておく」「実際に仲裁に入るかはおくが、『まあまあ』と言える位置に自分を配置する」「トリッキーではなく、愚直である」などが挙げられる。

トリッキーは「ズル賢い、チャラい」であり、その反対の意味が「愚直」(foolishly honest)であることや、関口の司会術の「差配」は、常日頃から面倒を見ることが主であり、そのなかで必要なときに指図することを言い、「采配を振る」自ら先頭に立って指揮することとは、別物だということが分かって戴けると思う。

しかし、考えてみれば昔の司会者は、皆こうだった。昔は皆、関口宏のような司会者ばかりだった。そうは思えないか。

オレがオレが、と前に出るみのもんた型。経験があるばかりに自分の経験からしかモノが見られなくなってしまった一般遊離型。なめらかな進行ばかりがいいと思っている如才なし型などは近年よく目にするパターンだ。

一方、サンデー・モーニングの関口宏はご隠居さんだ。八つあんと熊さんの喧嘩に、寺の和尚さんの意見も聞いて、寺子屋の学者先生の意見も聞いて、80年生きているお種婆の意見も聞いて、さあ、どれがいい、あとは、八つあんと熊さんふたりで考えて決めなさい。隠居は何にも決めていない。

だから、関口宏の司会には安定感がある。

やっぱり、今新しく番組の司会をしてくれる人に「関口さんみたいに、ちゃんと大学出てて、といってもG−MARCH程度でいいんですが、俳優で、昔は売れてて、今は俳優で行くのも将来はあまり明るくないなあ・・・と思っている芸能人はいませんかねえ」を探してしまう。例えば、中井貴一などを浮かべては見るが、残念ながら彼は俳優として今もバリバリ売れてるので違うか。

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