<「働き方法案」の正体>ここにきて「労基官」の外注とは?
メディアゴン / 2018年6月16日 13時55分
山口道宏[ジャーナリスト/星槎大学教授/日本ペンクラブ会員]
* * *
「働き方」=「高プロ(高度プロフェッショナル制度)」ではない。メディアは、すっかりそれ一点を報じていないか!?
「共謀罪」の時もそうだった。しれっと幾つかの法案を潜り込ませ一緒くたに通過させようという、国が仕掛けるあの手口である。今回、政府が提案する「働き方改革法案」は8つの法案から成る、
(1)残業時間上限規制
(2)有休取得義務化
(3)勤務制インターバル
(4)割増算定率猶予措置廃止
(5)産業医機能強化
(6)同一労働同一賃金
(7)高プロ
(8)裁量労働制拡大
・・・であるが、それらすべてに問題はないのか? どこまで検証済か? と思うからこそ、野党の国会運営への怠りが目立つ。
【参考】「働き方改革」は「働かせ方改悪」だ
労働基準法は70年の歴史がある。それは我が国が戦後に民主主義の道を歩むに際し労働者の基本的な人権をうたったもの。しかし昨今、「長時間労働」「過労死」「非正規」「雇止め」「サービス残業」など表沙汰になると「働き方が悪いから」と財界の意を受けた国が<逆利用> するのが「働き方法案」になっている。
どうやら、労働基準監督官の「働き方」が先のようだ。ここにきてハッとする今回法案に関係する出来事が伝えられた。本件が国会審議中の最中に、なんと同じ政府が労働基準監督官の丸投げ策である。
この悪しき労働実態の改善に同監督官の増員こそ必定が、来年度から外注(民間委託)すると発表したから驚きだ。それも「ОB」や「弁護士」や「社会保険労務士」らがいいとか。年金も労働も、その後の管理は「みなし公務員でいい」という、一連の魂胆だった。また受注する彼らも「仕事になるから」と、まんざらでもない気配だから呆れる。
これだけで国は過労死防止を本気で考えていないことの証左で、労働者保護の視座など全くない本音が分かる。労働基準監督官は全国でわずか3,219人(平成27年度)。管理職は臨検に出ないから実際はその数の半分くらいと伝えられる。一方で、我が国の事業所数は約410万だから労働者1万人当たり労基官は0.15人で、「監督なんて形ばかり」と、これまでも揶揄されてきた。
そこで今般の業務委託先なのか。とはいえ「士」であっても民間である。企業との「づぶづぶの関係」はいまから予想がつく。人事労務に切り込むはずの公務員が労基官のはずが「長時間労働」「過労死」といった事態なら「労基法違反」すら取り締まれない。まずは、れっきとした公務員としての労基官の増員こそ急がれる。本件は既に圧力に屈しない公務員を条件にするILO条約81号に違反する、と国際的に取りざたされている。
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