切なすぎる国会に女芸人も呆れ果てる?
メディアゴン / 2018年12月2日 7時15分
両角敏明[元テレビプロデューサー]
* * *
ニュースコメントのシメは「ナリチュウ(成り行きが注目されます)」とか「~の方針です」とかの常套句がおなじみです。先日、たしかフジテレビだったと思いますが、めずらしく「切なくなるようでした」と結んだニュースコメントに涙が出るほど共感しました。ニュースは出来事を1分、2分にまとめますが、40分ほど続いたその出来事のすべてを筆者は視ていましたので、切なさが一入だったのです。
それは参議院文科委員会における蓮舫議員と桜田義孝オリパラ&サイバーセキュリティ担当大臣との質疑でした。蓮舫議員は時間のほとんどをオリンピック関連政府予算について質問しました。蓮舫議員の質問姿勢に対する好き嫌いはそれぞれでしょうが、この日の質問内容はどなたも大きな違和感を感じないものであったと思います。もちろん事前通告もありです。
相変わらず桜田大臣の答弁は不安定でした。ここでつまらぬ言い間違いをあげつらう事はしません。しかし、初めから桜田大臣には自身で質問に答える意志がうかがえませんでした。桜田大臣は蓮舫議員から質問を受けるとすぐに後ろを向き、役人たちの助言とペーパーを待ちます。
大臣への説明は手間どり、委員長が速記を止めざるを得ない光景が何度となく繰り返されます。途中から桜田大臣は質問の意味を理解することすら放棄したようでした。その姿は黒子3人に操られる人形浄瑠璃の人形の体です。その結果、蓮舫議員の質問は人にではなく人形に向けられているという空しさが議場を覆い、もはや嘲笑すらも起きません。少なからぬ議員には哀しみの表情が浮かび、まさにニュースコメントを「切ない」と結ばざるをえないような議場だったのです。
翌日の TBS系「ゴゴスマ」はこの光景を取り上げました。短いVTRであったにもかかわらず、これを視たスタジオは、誰もがうつむいて声もなく、ややあって、女性お笑いコンビ、ニッチェの二人がこの哀しい光景に、
「あーあ・・・心臓がキュっとなるような・・・」
「サイテー限やってもらわないと・・・。ちょっと点数が低すぎませんか・・・」
桜田義孝氏は安倍総理によりオリパラ担当およびサイバーセキュリティ担当大臣に任命されると「なんで指名されたかわからない」と言って物議を醸し、その後「私の使命は役人の書いた文章を正確に読むことだと認識している」と答弁して顰蹙を買った方です。
【参考】<東海テレビ「さよならテレビ」>東京キー局では絶対放送されない衝撃作
「それを言っちゃあオシマイだよ!」は寅さんの名台詞ですが、桜田大臣の悲劇は自分の発言が「それを言っちゃあオシマイ」発言であることすら理解していないことにあります。人柄が良かろうが、この程度の人物を行政府の一翼の長として議場に立たせるとは、安倍総理も日本国の国会を舐めたものです。
もはや日本の国会は安倍政権によってその価値をどん底までおとしめられたのではないでしょうか。11月28日の参院本会議。立民議員の質問に正面から答えなかった安倍総理は同じ事を再度質問されると、一回目とまったく同じ原稿を1.3倍速の早口で棒読みするという、人を小バカにしたような態度に出ました。安倍総理にとっては国会同様、野党議員も無意味な存在なのでしょう。
安倍首相は最小限しか国会を開かず、議論を避けます。さらに国民の反対が強い安保法制、共謀罪、働き方改革などの重要法案はすべて強行採決。時には委員会採決を吹っ飛ばすなどの乱暴狼藉。何本もの法律案をまとめて提出して審議を深めない束ね法案。度重なるデータの改竄、捏造、不公正な取り扱い。モリカケ問題での嘘と不誠実な対応。決裁文書改竄をはじめとする財務省の不祥事に財務大臣の辞任なし。すべてがこれまでにないほどの国会軽視です。
そして、今国会は新手の悪巧みで、誰が見ても中身未定の法案を議長職権を振り回して強行採決です。中身は後に各省庁が省令で定めるという手法は国会での議論を回避し、行政府の意のままに法律を作るようなものです。もはや安倍政権にとって国会という立法府は不要となりました。こういう状態を「独裁」と呼ぶのではないでしょうか。
単なる通過儀礼にすぎなくなった国会では、安倍総理のみならず、自民党からも舐めきった発言が続きます。入管難民法について、自民党の平沢勝栄・法務委員会筆頭理事からして、「この問題は議論したらきりがない。いくらでも問題点は出てくる」とまで言い出す始末。これこそ「それを言っちゃあオシマイだよ!」ですが、何を言おうが法案はスイスイ通ります。
空しい国会が続く中、安倍総理はどでかい政府専用機に昭恵夫人とお手々つないで乗り込み、またまた外遊へ。「大丈夫なのか。首相は国会審議をおざなりにして海外に遠足ばかりに行ってるし。」(文芸評論家・斉藤美奈子「本音のコラム」11/28東京新聞)状態です。
石破茂元幹事長は言いました。
「成立させるだけなら圧倒的多数でできる。だが、それでは国会の意味がない。」
ならば、もう国会は意味がないのでは。
フーテンの寅さんは「それを言っちゃあオシマイだよ!」と言ったあとは、とらやを飛び出してまた旅に出ました。この圧倒的多数下では、もはや野党議員も国会を出て駅に向かった方がマシかもしれません。
国会議員に国会を出ろというのは、「それを言っちゃあオシマイだよ!」と言われそうですが、野党議員がひとり一駅、200を越える駅頭でこの惨状を毎日毎日必死に訴えれば、強い説得力を持つような気がします。「けっこう毛だらけ猫灰だらけ・・・」寅さんの啖呵売のごとく、野党議員も通行人の心をつかんでみたらどうでしょう。
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