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『パクリの技法』ジブリに許されて女子高生社長に許されないパクリの違い

メディアゴン / 2019年2月12日 7時30分

『パクリの技法』ジブリに許されて女子高生社長に許されないパクリの違い

安達元一[放送作家]

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最近、テレビ業界でもパクリにはナイーブになっています。

テレビがネットに脅威を持ち始める以前(ほんの数年前です)であれば、テレビ番組制作でパクリは常套手段というか、ひとつの手法でした。まったく同じものを作ることはさすがにありませんが、似て非なる企画、エッセンスだけ抜き出した企画、などもオマージュという言葉で許されていた時代でした。パクる方もパクられる方も、テレビづくりにパクりはつきものという感覚があり、無許可で素材を流用するようなもの(いわゆる著作権侵害)でもない限り、細かいことをガタガタと言わないものでした。

しかし、今日の状況は大きく異なります。パクリは許されず、少しでも類似があれば「パクリだ」「盗作だ」と騒がれます。たとえそれが違法なものでなくても、社会的に断罪されたり、出演者までが謝罪することも珍しくありません。テレビに限った話ではないかもしれませんが、クリエイティブに関わるあらゆる業界の人は、今、パクリには慎重です。あらゆるコンテンツが、世に出された瞬間に、ネット民たちの粗探しにあうからでしょう。テレビ局のような発注元も、納品されたコンテンツに不正がないか、調査にはエネルギーを使います。

そんな中、先日発売された藤本貴之著『パクリの技法』(https://amzn.to/2Dtnesa)は、業界人であれば、絶対に気になる本だろうな、と思わされた一冊です。タイトルだけを見ると「盗作の指南書」のようですが、その内容は逆で、「楽をしようと思ってパクっても絶対バレる」ということが、ロジカルに説明されています。逆に「パクリとは技術であって、悪いことではない」ということが本書に一貫したメッセージです。いろいろなパクリの事例(良い意味でも悪い意味でも)から「パクリとは何か」ということを明らかにしてゆくあたりは圧巻です。

今日、何か似ているモノがあれば「パクリ、パクリ」とすぐにネットで騒がれます。しかし、全てのパクリが悪いわけでも、批判の対象になっているわけではありません。例えば、憧れやリスペクトの気持ちから、似てしまうことはあります。意図的に似せるということすらあります。このような場合、よほどでなければ批判されることはありませんし、むしろ裏話、面白エピソードとして語り継がれています。

一方で、些細なパクリであっても、パクったことを否定したり、あたかも自分のオリジナルであるかのように見せるような場合は、必ずと言って良いほど炎上し、批判されてしまします。そこから展開して、作品とは無関係な部分の粗探しや、時に人格否定にまで至ることすらあります。

つまり、パクリには「許されるパクリ」と「許されないパクリ」がある、と言い換えることができるのかもしれません。本書『パクリの技法』で言及されるエピソードでも、その違いがどこにあるのか? についても詳しく分析されています。「なるほどな」と思わず納得させられるとともに、自分が関わった作品を思い起こして、考えさせられるページもありました。あれは「許されるパクリ」の範囲を逸脱していなかったか・・・。

『パクリの技法』でも詳述されていますが、スタジオジブリのアニメ作品には、宮崎駿監督が影響を受けたり、参考にしたと思われる「過去の作品」からのパクリがさまざまに登場します。代表作である「風の谷のナウシカ」や「天空の城ラピュタ」、そして名言「バルス!」すらそうです。しかし、その事実は隠されていることでも、宮崎監督本人が否定していることでもありません。もちろん「世界のミヤザキ」の評価がそれによって下がることもありません。

一方で、些細なパクリから、大きな問題へと発展しているような事例は近年、非常に増えています。例えば、東京オリンピックの公式エンブレムの問題などは記憶に新しいかもしれません。他にも女子高生社長として有名だった人物(現在は女子大生社長)が、自らの会社で制作した商用ホームページで、デザインだけでなく、ソースコードまでも他の商用サイトから丸パクリをする、という事件がありました。もちろん、彼女が著名人であったということもありますが、非常に厳しい批判を受けました。あまり詳細に書くと『パクリの技法』のネタバレになってしまうので控えますが、これは「著名人による最悪なパクリの事例」として紹介されていますので、興味のある方はぜひ、ご一読ください。勉強になります。

「似ている」という現象に対して、私たちは「パクリ」というひとことで簡単に表現してしまいがちですが、実は、それが意味することは異なり、様々です。作家が他人の文章を盗用することはいけないパクリですが、ファッション雑誌を見て、読者がモデルの真似をすることだって問題ないですがパクリなのです。

この違いがみなさん、わかりますか?

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