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<アートのオンライン購入?>8兆円市場をめぐる日本のアートの行方

メディアゴン / 2019年3月15日 7時30分

<アートのオンライン購入?>8兆円市場をめぐる日本のアートの行方

安達元一(放送作家)

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「アートの購入」をイメージすると、なんとなく入りづらいギャラリーの雰囲気に、一見さんには厳しそうなムードなどが頭に浮かぶかもしれない。展示しているアート作品に価格が表記されていないことも多く、客にも関わらず「入ってもイイのかな?」と思っている人も多いだろう。価格を聞いたいけど、購入意思がなければ冷やかしと思われてしまうのではないか・・・と聞きにくいケースもあるだろう。

そういったアート業界の敷居の高さが目立つ一方で、世界のアートマーケットは拡大を続けている。日本にいるとアート市場が拡大していることはなかなか実感しにくいが、世界で8兆円とも言われるアート市場は、米国や英国、中国などに行くとそのアート熱の高さが実感できる。日本人作家にも、草間彌生、奈良美智、村上隆など、驚くほど高値となっているものも少なくない。

もちろん、それはアートの専門家だけの話ではない。スイスで開催されるアートバーゼルというアートフェアでは、世界中のセレブが自家用ジェットでアート作品を買いに来るという現象が当たり前となっている。これはお金に限った話ではないのだが、富裕層にとっては、アートは小難しく考えるものではなく、意外と身近な存在になっている。

最近では、2017年にZOZOの前澤友作氏が123億円でジャン=ミシェル・バスキアの作品を購入したことは記憶に新しい。前澤氏のバスキア購入が話題となってマーケット全体の相場を押し上げ、戦後生まれのアーティストの中でバスキアの年間オークション落札額はダントツの1位となっている。メディアで目にする前澤氏といえば「アートで散財している金持ち」というイメージであるが、その実態は資産運用としても成功しており、彼の買い方はオークションの相場を動かす原動力にまで発展している。

日本国内でも、富裕層だけでなく若手起業家やアッパーミドルの一般層にも趣味としてだけでなく、資産価値を含め、色々な面からアート購入への関心が高まっている。先週開催されたアートフェア東京も来場者が6万人を超え、売上も36億円に達したと言われている。ここに来て遅れていた日本のアートマーケットにもようやく火が付き始めたと言われる。

日本のアートマーケットは若手起業家などを中心に盛り上がっているためか、現代アート作品を中心に、ネット売買などが盛んだ。従来の「大富豪が天文学的な金額のゴッホやピカソの絵をオークションで落札」といったイメージからすると、非常にスマートだ。

しかし、その一方で、信頼性などの点から、ネットでのアート売買への障壁は高い。そもそもネットのアートマーケットはできて間もないので、アートの専門性や知識・信頼性を持った企業が少ないからだ。いかに楽だからといっても、真偽も定かでないアート作品をネット通販で気軽には購入することに躊躇するのは当然だ。

日本におけるアートのオンライン販売業界の老舗として15年前から現代アートの販売を手がける「Gallery TAGBOAT」の株式会社タグボート(東京都中央区)・徳光健治社長は次のように述べる。

「急速に成長している日本の現代アートのオンライン販売は、そのやりやすさや情報の速さなどから、アート市場への敷居を大きく引き下げてくれました。しかし、新しい市場であるだけに、信頼性のおける企業は多いとは言えません。専門知識と高い信頼性、十分な在庫を持って運営している企業は数えるほどしかありません。手前味噌かもしれませんが、私ども株式会社タグボートはおそらく日本のアートのネット販売の代名詞と言われ、ウェブ上に2万点以上の取り扱い作品があります。これは現代アートのネット販売では国内でダントツのシェアで、アジアでも最大級の規模です。このように、海外のアート市場におけるエージェントにも見劣りがしないようなオンライン売買ができるのは弊社だけといっても過言ではありません。他は取り扱い作品の質や量において十分でないところが多いのです。これは弊社としては嬉しい話のように見えますが、市場全体で見れば、ちょっと残念なことです。」(徳光健治氏)

国内の現代アートのオンライン販売で圧倒的なシェアを誇るタグボート社ではあるが、自社の利益だけでなく、日本の市場自体をもっと大きくしなければならないという。そのためには、アート業界が一丸となって市場を盛り上げ、周知させてゆくことが何よりも重要であるという。

例えば、そのための試みの一つとしてタグボート社では、オンラインギャラリーから飛び出して、銀座の阪急メンズ東京に実店舗のギャラリースペースを3月15日にオープンする。これは、新しい顧客層の開拓のために、リアルの店舗とオンラインの世界をつなぐ新しい購入体験を提供するためには今後重要になってくる、と徳光社長は力説する。

確か美に、実店舗とオンラインギャラリーの2つのチャネルを結合することで、どの販売ルートからも同じように作品を購入できるマルチチャネル体制を構築でき、その結果、現代アートをギャラリーで見た後でオンライン上でも手軽に購入するといった新しい購入体験ができる場を作ることができれば、アート購入の敷居の引き下げは加速するように思う。

日本でも、アートがもっと身近になると同時に、オンラインの世界でアートの売買を当たり前になる時代がもう間近まで来ているのかもしれない。

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