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ワイドショーは政治を動かす?安倍・加計・統計デジャブ

メディアゴン / 2019年4月14日 7時30分

ワイドショーは政治を動かす?安倍・加計・統計デジャブ

両角敏明[元テレビプロデューサー]

***

4月4日木曜日、近ごろ政治に「完黙」だったテレビのワイドショーが「忖度道路」問題をガッツリ取り上げました。

折しも3日後の7日日曜は統一地方選前半の投票日。こんな時に新聞やニュースを見ない人でも視るワイドショーが「忖度!忖度!」と言い続けては自民党の選挙現場はたまらなかったでしょう。さすがの安倍政権も折れて塚田国交副大臣は辞職となりました。ワイドショーは侮れません。

問題の塚田演説ですが、ツッコミどころ満載です。まずは冒頭のツカミから。

「私は麻生太郎命でやってきた。かわいい弟分の大家敏志参院議員が小倉に来て激励してくれと。渡世の義理には勝てません」

当の親分、麻生副総理も会見で「大きな声で言えや!」「さっき言ったじゃないか!」と記者を怒鳴りつけます。怯えた?記者が思わず「失礼しました」とわびるシーンも。ちょっと情けないです。問題の演説、このツカミの後、塚田副大臣は大ウソをつきます。

「(道路計画は)11年前に凍結されているんです。何でか、わかります?コンクリートから人へっていうとんでもない内閣があったでしょ。総理は悪夢のようだと言いましたが、(中略)民主党の悪政権ができて凍結しちゃったんです」

14年前に凍結したのは自民党福田康夫内閣です。次の内閣が麻生内閣、その次が民主党内閣です。麻生命の子分が親分内閣を忘れるはずがないので、これは確信犯的ウソです。凍結時の国交大臣は公明党の冬柴鐵三氏。当時国会でこの問題を追求した共産党の仁比聡平議員が冬柴大臣の答弁を先日の国会で明らかにしています。

「(冬柴大臣は)今後調査は行わない。格上げする時には国会に諮るとくり返し答弁した。1本1本法案にして諮るとまで言った」

ところが今予算では国の調査に格上げされ4000万円の調査費が付いています。昨年8月の概算要求には無かったようですが、不思議です。冬柴大臣の国会答弁を、同じ公明党の石井現国交大臣が無視し、予算成立前、知事選告示2日前の3月19日に福岡・山口の両県知事に調査費予算成立を伝えています。この経緯には忖度がニオイますから、国会では公明党・石井大臣の怪しい動きも追求されます。身ぎれいがウリの公明党にとっては早く火を消さないとマズイ問題であるに違いありません。

一方で、安倍総理、麻生副総理にとっても早く鎮火させないと、風向きによっては自身が火の粉を浴びる怖れがあります。そのせいか釈明には森友・加計・統計の問題トリオで駆使された「いつもの手法」が多用されています。

安倍総理ですが、2018年10月25日の首相動静に「11時1分、自民党の吉田博美参院幹事長、大家敏志参院副幹事長と面会」とあります。翌26日の西日本新聞はこの面会で「安倍総理が道路の早期建設に向けた活動にしっかり取り組むようにと意欲を見せた」と伝えています。その半年前にも、3月31日付け「関門会」名で出された石井国交大臣宛の要望書の筆頭に安倍総理の名前があります。しかし安倍総理は

「関門会は親睦会で、この要望書は知らなかった。総理としてではなく、メンバーとして名前が載っているのだろう」

と弁明します。そして無断で名前を使われてもまったく怒りません。あの加計問題と同じです。受け取った石井大臣は要望書に安倍総理の名前があるのを最近まで気がつかなかったそうです。驚きです。だから逆に怪しく思えてきます。

一方の麻生副総理も期成同盟の要望書に6回も顧問として名前が使われていますが、

「(副総理・財務大臣としてではなく)地元選出の国会議員として名前が出ているのではないか」

と安倍総理とまったく同じお答えです。安倍、麻生のお二方は、この道路実現を目指す会合に出席していないかと問われても「これだけが単独の目的の会には出ていない」と妙に含みのある答えをしています。単独目的ではない会には出ているのかもしれません。

この論法は、森友問題で、籠池さんからの電話に昭恵夫人は「直接は応えていない」とした説明と同じです。この時は「直接」ではなく、夫人付きの谷査恵子さんが応えています。こうした巧みながら狡い狡猾論法は安倍政権のお得意わざ、言わばアベノテグチです。

同じ文言を念仏のようにくり返して野党の質問をスルーする手もおなじみです。今回しつこくくり返したのは以下の文言。ご本人もウンザリなのでしょう、猛烈な早口になります。

「発言の詳細は承知しておりませんが、発言をしたことは問題ではあります。すでに本人から撤回し謝罪したところと承知しておりますが、まずは本人から説明すべきであり、そのことを肝に銘じて職責を果たしてもらいたいと考えております」

早く詳細を承知しろよ、ですが問題の責任をできるだけ自分から遠いところに印象づけるのもいつものアベノテグチです。安倍・加計・統計デジャブはまだまだあります。塚田国交副大臣の釈明です。

「嘘を言っているつもりはなかったが、事実でないことを発言していた」(忖度道路問題)

「隠蔽したつもりはなかったが、本当のことは言えないので嘘をついていた」(統計不正問題)

一般社会では絶対に通用しない屁理屈です。そう言えば、吉田自民党参院幹事長が大家参議院議員を伴って塚田副大臣に面会した時に発したと言われたひと言と、加計問題で和泉総理補佐官が当時の前川文科次官に言ったというひと言もそっくりです。

「塚田、分かっているな!」(吉田自民参院幹事長)

「総理は自分の口から言えないから、私が代わって言う」(和泉総理補佐官)

こうして見ると今回も「忖度」とい言葉だけでなく、森友・加計・統計の未解明問題で使われたのと同じ数々の「狡猾技」がくり返されています。国会では何もまともに答えず、証人は呼ばず、資料は出さず、ただ時間を稼ぎ、問題が消えて行くのを待つのでしょう。それがチーム安倍によるいつもどおりの「アベノテグチ」です。

もはや安倍総理は在任期間と一強ぶりで歴史に名が残る大宰相です。そろそろ狡猾なテクの数々はお忘れになって正々堂々と横綱相撲を取っても良いのでは。平成と令和を股にかけた内閣総理大臣・安倍晋三が日本の歴史にどんなイメージで残るのか・・・。このままでは、「人格が信用されなかった長期在任総理」として後世に語られるのでは。

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