やはりプロレス興行だった大阪ダブル選 -植草一秀
メディアゴン / 2019年4月13日 19時2分
植草一秀[経済評論家]
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4月7日に投開票日を迎えた統一地方選第一弾は懸念していた通りの結果になった。注目された北海道知事選、大阪ダブル選、浜松市長選で、安倍内閣が望む結果がもたらされた。知事選で唯一の与野党対決になった北海道では前夕張市長の鈴木直道氏が当選した。
元衆議院議員の石川知裕氏は敗北した。大阪では維新の候補が知事選、市長選で勝利した。自公は独自候補を擁立したが敗北した。浜松市では水道民営化を推進してきた鈴木康友前市長が再選を果たした。
統一地方選第一弾の最大のポイントは投票率が極めて低かったことだ。4月7日午後9時半時点での毎日新聞社集計では、11道府県知事選の投票率平均が、2015年に続いて50%を下回り、過去最低を更新する可能性が高いとのこと。41道府県議選も軒並み低調で、過去最低だった前回15年の45.05%を下回る可能性があるとのことだ。政令市長・市議選も低い水準にとどまった。政治を私物化している既得権益勢力は、投票率が限りなく低くなることを望む。
その一方で、我が陣営からは一人の棄権者も出さないように努める。自陣営の全員参加と、限りない投票率の低下推進。これが彼らの勝利の方程式である。メディアは有権者が政治に関心を持たぬよう情報工作を展開する。同時に、既得権勢力の優勢を伝える。このことによって、反既得権勢力陣営の主権者の投票意欲を削ぐ。実際に投票率が下がれば、自陣営が勝利し、事前に流布した既得権勢力優勢の情報流布と齟齬を来さない。
大阪ダブル選は「プロレス興行」の可能性が高いと指摘してきたが、この推察は間違っていなかったようだ。自民党の二階俊博氏が維新に対して「いささか思い上がっているのではないか」と述べて、独自候補を擁立したが、そもそも勝利を狙っていなかったと考えられる。
自公は維新の勢力挽回を手助けしたのだと思われる。自民党の一部を割り、維新勢力、国民民主の一部と結合させて、第二自公を創設する準備作業が始動したのではないか。自公と第二自公による二大勢力体制を構築すれば、日本の既得権勢力は安泰になる。
米国の共和、民主二大政党体制と類似した政治体制が確立されることになる。安倍内閣は、憲法改定に突き進むには、維新および国民民主との連携が有効であると判断していると見られる。
維新と国民民主の一部、さらに、先に創設された希望は、自公と水面下、あるいは水面上でつながっている。この勢力が動き始める可能性が高い。自民党の二階俊博幹事長は、こうしたことを計算に入れて、大阪ダブル選を仕切ったのだと思われる。
維新と敵対した演出を施したが、実際には敵対していない。本当に勝利をもぎ取りに行く候補者擁立を行っていないことが何よりの証拠だ。野党陣営の結束力の弱さも北海道、大阪での敗因のひとつだ。
浜松では水道民営化を推進してきた前市長が、選挙に際して水道民営化を一時的に凍結した。しかし、選挙が終われば水道民営化に突き進む可能性が高い。
安倍政治の選挙の乗り越え方は、
*第一に低投票率推進
*第二に野党分断作戦
である。新元号発表をはさみ、政治問題への関心を低下させることに成功した。
もう一つ、選挙では、何より候補者が重要だ。有権者の心を掴める候補者を擁立しなければ、体制だけでは勝利できない。そして、選挙結果を生んだ最大の要因は、主権者の姿勢だ。主権者が全員参加しなければ、主権者が望む方向に政治の現状を変えようがない。
道府県議選では、945の選挙区のうち、39%にあたる371の選挙区で612人が無投票当選になった。野党勢力が疲弊し切ってしまっている。既得権勢力の思うつぼになり始めている。野党陣営の全面的な刷新が強く求められる。
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