<こんな不運があるのか>テレビで視た滋賀大津・園児死亡事故
メディアゴン / 2019年5月27日 18時39分
![<こんな不運があるのか>テレビで視た滋賀大津・園児死亡事故](https://media.image.infoseek.co.jp/isnews/photos/mediagong/mediagong_28154_0-small.jpg)
両角敏明[元テレビプロデューサー]
***
園長の泣き崩れる姿に胸を突かれる、ほんとうに痛ましい事故でした。
テレビの伝えるところ、事故に遭われた方々にとってはほんのわずかな不運の連鎖がこのような結果を生んでいることが明らかで、その無念さはいかばかりか、お気の毒でなりません。
直進車と右折車はお互いの右ヘッドライト部分がぶつかっています。あと20cm、いや両車があと10cmずつハンドルを左に切れていれば回避できたかもしれない事故です。最悪の衝突事故を回避するために両車ドライバーがとった瞬間の反応がコンマ何秒か及ばなかったことが残念でなりません。
もし筆者が事故のドライバーだったら、ハンドルを逆に切れば良かったと考えるかもしれません。両車のヘッドライト部分だけが衝突するのではなく、逆にもう20cmほど正面衝突に近い形でぶつかっていれば、両車は交差点内で停止した可能性もありそうに思えるからです。その分だけドライバーが受ける衝撃は強くなりますが、エアバッグが作動しますから無傷、あるいは軽傷で済み、園児を傷つけることはなかったのかもしれません。
両車の挙動はどうだったのでしょうか。お互いの右ヘッドライト部分がぶつかり、その衝撃で両車とも左へ振られます。右折車はそのまま右斜め前方へ進んで交差点内に止まります。各社映像ではこの右折車のブレーキ痕は確認できないので、衝突時はアクセルを踏み曲がり始めていたのでしょう。
一方の直進車ですが、衝突の反動で斜め左に振られ、そのまま園児のいる歩道へ突っ込んだように見えます。テレビレポーターによればブレーキ痕はありません。当のドライバーは右折車を避けようと「ハンドルを左に切った」と証言しているそうです。もし、より一瞬早く右折車の挙動に気づき回避していれば避けられたのではないか・・・、あるいはぶつかる瞬間にドカーンと急ブレーキを踏み、左にはじかれた瞬間に右急ハンドルを切っていれば、最悪の事態を回避できた可能性があるのではないか・・・、などと素人考えが浮かんで消えません。様々な場面で、あとコンマ何秒か違っていれば・・・と悔やまれます。
報道によれば、この保育園のお散歩時の安全対策は現実的対応としてはこれ以上は難しいほどに万全であったとされています。それほどであっても防げなかった今回の痛ましい事故には、上記以外にも、不運が重なっていたように思われます。
まずはガードレールやガードパイプの不備です。いわゆる『右直事故』と言われる右折車と直進車がぶつかる事故ですが、問題の交差点は丁字路ですから『右直事故』は今回の位置関係でしか起きません。したがって『右直事故』の衝撃で直進車が突っ込んでくる可能性があるのはほぼ園児たちのいたコーナーだけですから、園児たちが信号待ちしていた場所は問題の交差点では危険度の高い場所だったことになります。
しかし、この交差点の北側のコーナーには琵琶湖側に渡る横断歩道がありません。よって園児たちが琵琶湖側に渡るには、『右直事故』で直進車が突っ込んでくる可能性がある場所で信号待ちする以外、選択肢はありませんでした。
近隣住民の「あそこではよく事故が起きていた」とい証言も複数ありましたから、もしその交差点の曲がり角の部分だけでもガードレールやガードパイプがあれば、あれほど安全に配慮するこの保育園ならば、ガードされた場所で園児を信号待ちさせたに違いありません。行政の判断が残念でなりません。
今回の事故とは無関係なのかもしれませんが、この交差点にはさらにひとつの要素があるようです。琵琶湖沿いの道路の制限速度です。一部報道によれば、右折車が進行してきた方向の制限速度が50キロなのに対して、直進車が進行してきた方向の制限速度は60キロだと言います。
ドライバーの感覚として、一般道は50キロ、市街地・密集地は40キロか30キロであり、制限速度をわざわざ60キロに上げている一般道は少々スピードを出しても安全度の高い道路と受けとめるのではないでしょうか。もし報道どおりならば、この10キロの差が、直進車の挙動やドライバーの反射行動に微妙な影響を与え、最悪の結果につながったという可能性をゼロとは言えない気がします。
また、この10キロの差が右折車の判断を狂わせた可能性もあります。自分は直進車が来る前に右折できると判断したが右折車が思わぬ早さで来てしまった、という感覚のズレです。別の番組では直進車が来た道は緩い下り坂になっているという報道もありました。であれば、両車ドライバーの速度感覚のズレは尚更のことになります。すべては遠からず警察の調べで明らかになることですが、いずれにせよ、冷酷な悪魔はほんのわずかな隙間から忍びこみます。
今回の事故は酒酔いや、薬物や、粗暴さなどの、際だった悪意や悪行が引き起こしたわけではなさそうです。日常ありがちな判断ミスや不運が、これから楽しいことがいっぱい待っているはずの小さな命を奪うという大きな不幸を生んでしまった事故のようです。二人のドライバーの判断ミスと反射行動の結果にはその二人の責任が問われます。一方でガードレールなどの設置や信号、速度制限などについて、行政が必ずしも正しい判断をしていたと言えないならば、やはりその責任も問われるはずです。
そして一般ドライバーである筆者もこの出来事で自分の運転に思いを致さぬわけにはゆきません。筆者は高齢ドライバーの一人ですから、自車には自動ブレーキをはじめ、可能な限りの安全補助装置を備えています。今回の事故を受けて、自分が躊躇なく思いきり急ブレーキを踏めるかどうか、安全な場所で再確認してきました。そして安全な運転のために改めて気持ちを引き締め直したところです。せめてそんなことでもしないと、理不尽に未来を断たれた幼な子に申し訳ない気持ちが治まらないからです。心よりご冥福をお祈りします。
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