小川彩佳TBS「news23」の懸念と改善点
メディアゴン / 2019年6月21日 7時30分
高橋秀樹[放送作家/発達障害研究者]
***
大前提として、筆者はTBSの新生「news23」に成功して欲しいと思っている。それでこんな提案を本音で書いていてみることにした。
テレビの枠(番組)が「これまでと変わった」と視聴者に認識されるには、何を変えれば良いのだろうか。たった100人余だが、筆者はアンケートを採ったことがある。それに寄れば上からの順位は以下のようなものであった。
1. 番組タイトルが変わる
2. 出演者が変わる
3. セットが変わる
この結果は、放送作家としての筆者の経験則と一致していた。
6月から一新した「news23」の場合、「1.番組タイトルが変わる」はそのままであるから、変わったことのインパクトは弱いと判断するべきである。番組が変わると、ご祝儀視聴率というものがあって、1回目の放送は通常それまでの視聴率より上がるのだが、そうなっていないことがそれを証明している。
さて、そんな「news23」は、「2.出演者が変わる」「3.セットが変わる」ことで、新しい番組を認知させようと目論んだ。それは成功したのだろうか。
まずは「3.セットが変わる」はどうだろう。おそらく「暗い」、「乱立する金の棒がチラチラして見にくい」など評が寄せられていることだろう。セットは、大きな予算をかけて作られるものだから、評判が悪いからと言って簡単に変えるわけにはいかない。そんな外野の意見は放っておけ、明確な意図を持って作ったセットだと言う意見も、作った当事者にはあることろう。
だが、このセットを見ていて、マイナスイメージを持つ視聴者が多いと判断するなら即刻できるところ手から直しすべきだ。心配することはない。手直ししても視聴率は落ちないのだから。視聴率が落ちないなら、ひとりでも嫌だと思う人がいるなら変えてなんの損もない。
「2.出演者が変わる」についてはどうだろう。メインキャスターの小川彩佳は、これまでの雨宮塔子よりは数倍良い。数倍良いが、ごく普通である。いやらしい言い方をすれば、成城大学文芸学部から、青山学院大学国際政治経済学部に変わっただけと言うことだ。ジャーナリスティックだと言われる小川彩佳には、これから才能をさらに鍛えてもらいたい(聞くところによると専属の女性ディレクターが付いたということだが、この女性ディレクターは、山のような資料と、磨かれた言葉を小川のために絶えず与えることだ)。
さて「ごく普通の小川」を支えるのは、番組の重しとして配された本物のジャーナリスト、星浩(元朝日新聞特別編集委員)であるべきなのだが、星は残念ながらコメントが甘い。状況の解説だけでなく自分の意見をもっと前に出すべきだ。短かく強い言葉を意識せねばならない。座っていれば勤まる仕事ではない。
そして、この小川彩佳と星浩の座りの位置関係が残念ながら最悪である。離れすぎていて、ふたりが話し合っていると、テレビに映るのは両人の横顔だけである。1ショットを撮っても星は横顔だ。テレビを見ている人が一番上客の筈なのに、横顔しか見せないのは失礼極まりない。こういう、つまらないセットの間違いは、出演者達が意識せずとも正面顔が見えるようにすぐ変えてあげるべきだ。
ところで、当たった番組には必ず「主人」がいる。この「主人」というのは、番組スタッフ皆が従う人、という意味での主人だ。主人の資格を持っているのは、チーフプロデュサー、チーフディレクタ−、出演者。これら3者の内の誰かひとりだ。この主人がいなくなると番組は終わる運命を歩み始める。チーフプロデュサーやチーフディレクターの場合、バカな上司が訳も分からず配置転換したりするので、それでたちまち崩れ去った番組を、筆者はいくつも見てきた。
以前の「news23」の場合、番組の主人は明らかに出演者だった。筑紫哲也である。今の「news23」の場合、主人は誰なのだろうか。大体、主人自体が存在するのだろうか。小川彩佳では、いささか荷が重い。
内容については一言だけ。
番組は「一日の出来事を過不足無く伝える」ことが使命だと思うが、現状では独自映像が少なすぎる。3項目めで始まったりする特集で小川彩佳が取材に出ているが、納まりかえった特集で取材に出てもあまり効果は無い。なぜ、その日の出来事にしがみつかないのか。遊軍のディレクターを何が何でも現場に出し、独自映像を撮ることだ。独自取材・独自情報とは言っていないことに注意して欲しい。
ヒットするニュース番組には独自の映像が必要だ。政治部社会部外信部経済部地方局、この人たちの努力には頭が下がるが、番組はこれらの人が撮った映像をただもらって編集しているだけでは番組は上昇しない。独自の映像は番組に力をくれる。
繰り返すが、筆者は新生「news23」に成功して欲しい。でないと23時台に見る番組がないのである。
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