麻生の辞書に『責任』という文字はない?
メディアゴン / 2019年6月21日 5時37分
両角敏明[元テレビプロデューサー]
***
麻生太郎という方の辞書に『責任』という言葉は無く、『反省』『謝罪』という言葉も字が小さくてほとんど読めないようです。
金融庁の『金融審議会 市場ワーキング・グループ報告書「高齢社会における資産形成・管理」』は麻生金融庁担当相の諮問に応じた専門家が検討、作成した報告書です。現実の高齢化社会と家計を分析し、その対応について提言したものです。
6月10日の参議院決算委員会。この報告書から年金の不安を追求する野党にイラだった安倍首相は「じゃあ、どうしたらいいというのか」とまで言い出しました。
安倍首相のその問いに対するささやかな対応策が書かれているのがこの報告書です。年金だけでは老後の生活が危ういのだから、若いうちから資産形成に努めるべきで、それには比較的リスクの少ない金融商品による資産形成という方法もありますよ、という主旨の提案です。銀行、証券会社、保険会社、株式市場などを所管する金融庁の所管範囲からの提言で、これは6月3日(月)に麻生金融庁担当大臣をはじめ金融庁政務三役に報告、説明されていました。
6月4日(火)。報告を受けた翌日、ぶらさがり会見で、ピンクの半袖シャツでゴキゲンそうな麻生さんは記者にいつもの上から目線でいつもの麻生節、
「100まで生きる前提で退職金計算してみたことがあるか?」
「人生設計をお考えになるのでしたら少なくとも残り100まで計算されないといかがなものでしょうかと言って、(中略) それの手伝いをする金融機関というものもそれなりの対応や設計をしてやるというようなことを考えるのが、金融庁としての、(中略) 基本的な考え方。」
と得意げに語っておりました。実は報告書を読んでもいないのに。
6月5日(水)。世間は山ちゃん・蒼井優さんの結婚会見、丸山穂高議員の話でもちきりの陰で、この報告書にある「老後2000万円」問題がじわじわと拡がり続けています。
6月6日(木)。一部のテレビニュースがかなりのボリュームでこの問題を取り上げ、大問題化しそうな雰囲気がヒタヒタと・・・。
6月7日(金)昼。麻生大臣は会見で報告書を腐して火消しに動きます。
「いわゆる月々20万円のところを豊にするために25万円でやってどうたらこうたらいうのを掛けると5万円足りねえ。65才で90ぐらいまで生きると5万円掛ける12ヶ月掛ける35年で1800万円か?単純計算すればそんなもんじゃネェかなと。あたかも赤字なんじゃないかという表現自体不適切だと思いますけどね。」
誰に向かって野卑な口調でしゃべるのか、内容はまったくいい加減。90-65は25ですよ麻生さん。5×12×35は2100です。それよりも圧倒的に無礼でいい加減なのは、「赤字なんじゃないかという表現自体不適切」と言っていますが、この時点では麻生大臣は報告書を読んでいないことです。読んでもいない報告書の表現を不適切と断じるのは明らかに不適切でしょう。
6月8日、9日の土日。国会議員は一斉に地元へ帰り、有権者の厳しい反応にびっくり仰天、これは重大問題と認識します。
6月10日(月)。週明け早々に首相をはじめ全閣僚が出席するする参院決算委員会。
安倍、麻生コンビは、誤解や不安を広げる不適切な表現だったが年金制度は安心、と答弁します。しかし、麻生担当大臣は報告書を読んでいない事実が発覚して、火の手はより高く上がります。いくら多忙な麻生さんでも、問題となった報告書を読んでいないというナメ切った態度では誰もが呆れます。
この日、自民党役員会でも批判が噴出します。おなじみの田崎史郎氏によれば、安倍首相・菅官房長官は、報告書を受けとらない形にするしかないと判断して、財務省幹部に11日の朝までに麻生大臣を説得するよう指示し、まさに「麻生さんを羽交い締めにして」納得させた、とテレビで語っています。
6月11日(火)。羽交い締めにされて無理矢理納得させられた?麻生大臣は記者を前にいかにも不機嫌そうな表情を滲ませて切り出します。
「著しい不安とか誤解を与えており、政府のこれまでの政策スタンスとも異なっている。金融相として受取を拒否する」
えーっ! びっくり。国民の不安は自分の年金がどれだけもらえるのかですから、報告書を読んでも誤解のしようがありません。また麻生大臣は「年金制度自体が危ないかのように聞こえることが政府の政策スタンスと異なる」と言いますが、報告書のどこを読んでも年金制度自体が危ないなどと書いてありません。麻生さんはこの日になってもまだ報告書を読んでいないのかもしれません。
6月12日(水)、13日(木)。自民党二階幹事長は金融庁に選挙前なのにと抗議。自民党森山国対委員長は報告書はないわけだから予算委員会は開かない、菅官房長官はワーキンググループの独自の意見、と発言。いずれも照準がズレているので、火勢は増すばかり。
6月14日(金)。参院財務金融委員会。自民、公明の議員は、多くの国民を不安に陥れた、反省しろと金融庁を攻撃。反省しろ!と金融庁に迫ったなら麻生大臣も反省するのかと思ったら、反省するのはお役人だけ。TOPの麻生大臣は年金をもらっているかどうかも知らないと脳天気な答弁の上、責任の所在を問われると、担当者に問題があったとくり返し、すべて悪いのはお役人というご見解。責任をぜーんぶ押しつけられた金融庁の担当局長は、
「対応が配慮を極めて欠いたものと深く反省しております」「5万円部分を赤字であるかのように表現したのは意味もなく、またミスリーディングであり、不適切であったと反省してございます」
と、ひたすら頭を下げ続けたのでした。この間、麻生大臣は椅子にふんぞり返ってただエラソーにしておられました。
麻生さんはこの日の記者会見でも責任の所在を聞かれますが「現場でいろいろ作業していた人たちがきちんとやれば良かったというのが基本的な理解」なのだそうで、おまけにこう言い放ったのでした。
「平均して割り算しているんだろ、何の意味があるのかね?」
コントなら全員コケます。これまで何度も何度も非常識な放言を続け、いつも人を見下しながら、いっさい責任はとらず、誠意をこめた謝罪も出来ないのが麻生太郎という政治家だと多くの人が感じています。
財務省の決裁文書改竄の時も書きましたが、組織の長が負うべき「責任」というものがこの世の中にあることぐらい、だれか麻生さんに教えてもらえないでしょうか。できれば人に上下はないことも。昨今、官僚になろうとする優秀な学生さんが減っているそうです。そりゃそうだろう。
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