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<ずるい統計数字のカラクリ>三原じゅん子「恥を知りなさい!」とは誰に言う?

メディアゴン / 2019年7月16日 17時45分

<ずるい統計数字のカラクリ>三原じゅん子「恥を知りなさい!」とは誰に言う?

両角敏明[元テレビプロデューサー]

***

「この愚か者めが!」「このくだらん選択をしたバカ者どもを絶対忘れん!」 丸川珠代議員
「愚か者の所業とのそしりは免れません」「恥を知りなさい!」 三原じゅん子議員

この二人、似ています。エラーイ国会議員はこういう言葉遣いをするもんだと思い込んでおられるのか、共にセリフが時代劇じみていてどうにも異様です。

また、丸川議員はアナウンサー出身の割には裏取りなしのいいかげん発言も多く、たびたび謝罪に追い込まれていますし、女優出身の三原じゅん子議員もびっくり発言の多い方です。神武天皇を神話ではなく実在の人物とみなして池上彰氏にツッコまれたり、国会で「八紘一宇」を持ち出して戦前生まれの麻生さんに質問し、あなたのような年齢の方が・・・と麻生さんを驚かせたりしています。お二方とも時折、常識はずれのセンスが露呈します。

そんな三原じゅん子議員が「愚か者の所業」、「恥を知りなさい」と声を荒げて野党を罵ったのは6月24日の参院本会議における安倍首相問責決議案への反対演説でした。自民会派を代表しての演説です。この三原演説ではもっぱら時代錯誤フレーズばかりが注目されていますが、実は語られた「事実」がかなりオカシイのです。これを7月2日の毎日新聞がファクトチェックしています。おもしろい記事でしたので毎日新聞はこの記事をもっと派手に扱っても良かったのでは。

この日の演説で三原じゅん子議員は、民主党政権時代は年金支給額が引き下げられているが、安倍政権ではまったく違っており、今年は、支給額がプラスとなった、と演説しています。ところがこの記事にある厚労省への取材による年金支給の減額のファクトは、

民主党政権は 年平均 551円
安倍政権では 年平均 1348円

ですから、安倍政権は民主党政権時の2倍以上も年金支給額を減額しているのです。確かに今年の支給額は増えていますが、これも4年ぶりで、その額は月227円です。これが事実なら三原演説はあきらかに民主党政権をおとしめる、まやかしのミスリードです。

しかし、このまやかしは序の口です。このファクトチェック記事は、三原議員ばかりか安倍首相がくり返しくり返し得意げに語っているデータに、「ひえー!」と驚くまさかのカラクリがあることを暴いているのです。

「アベノミクスの効果により年金積立金は44兆円の運用益が出た。民主党政権時の運用益は10分の1にすぎない」

安倍首相はたびたび民主党政権をディスるこの文言を使います。三原議員も国会演説でこの文言を使い、「愚か者の所業」「恥を知りなさい!」と大ミエを切りました。ところが、記事のファクトチェックによれば、厚労省から公表されている年金運用益データは

民主党政権時=9兆円
安倍政権時=39兆円

なのです。44兆円でもないし、10倍でもありません。正しくは39兆円で4.3倍です。ならば国会で安倍・三原のお二方がウソをついているのでしょうか。もしウソなら安倍首相は虚偽答弁となりますが、この文言に潜むズルさはある意味ウソ以上に下品で、一国の首相ともあろう方がここまでやった数字を国民に語るのかと呆れるほどの「まやかし」なのです。

毎日新聞のファクトチェック記事にあるカラクリの事実はこうです。

年金の運用実績は四半期毎に公表されます。民主党政権から安倍政権への交代は2012年の年末ぎりぎりの12月26日でした。ですから2012年10月~12月の第3四半期3ヶ月間のうち2ヶ月と25日間が民主党政権で、残りの6日間だけが安倍政権ということです。

ほとんどの期間が民主党政権だったこの2012年第3四半期の年金運用益は5兆円でした。この5兆円を2ヶ月と25日担った民主党政権下の運用益9兆円からさっ引き、たった6日担っただけの安倍政権の運用益としてその5兆円を乗っけると、

民主党政権=9兆円 マイナス5兆円で 4兆円
安倍政権 =39兆円 プラス5兆円で 44兆円

でピッタンコ、安倍政権下での運用益44兆円、民主党政権時の10倍ということになります。安倍首相が得意げに語っているのは、第3四半期92日のうち86日を担った民主党政権から、たった6日担っただけの安倍政権がこの間の運用益5兆円全部をかっさらった形の数字なのです。これはいくらなんでもズルすぎません?まさかそんなことは・・・と思いますが、毎日のファクトチェック記事によれば、この驚くべきカラクリは厚労省資金運用課が説明した事実なのです。安倍首相も、三原じゅん子議員も、こんな数字をよくもまあ厚かましく国民に向かってイケシャアシャアと言えたものです。

政治の素人から見れば正直に4.3倍と言えば良いことを、これほどのデータマジックをやる必要があるのかと呆れるのですが、異様なほど野党蔑視と数字を都合良く見せかけることに執念を燃やすのが安倍政権です。

こうした数字いじりは2016年の経済財政諮問会議の骨太の方針に「経済統計の改善」という目標が加えられた事と無関係ではなさそうです。この「経済統計の改善」に対し、政権やその意を受けた官僚たちは優れた頭脳と忠誠心?で重箱の隅の隅までつついて「経済統計を政権に都合良く見せかける改善」へとひた走りました。

賃金統計はもとより、GDP、労働統計など、政府統計には多くのずる賢い操作が露呈しています。こんなまやかしの数字作りに腐心させられる官僚にとっては頭脳と知識とエネルギーの無駄な消耗ですから、真に国民を思う官僚にはほんとにお気の毒と申し上げるしかありません。統計をいくらいじっても実態経済が良くならないことを重々ご承知なのですから。

信用しがたい統計数字の数々ですが、三原じゅん子議員の「恥を知りなさい!」発言がきっかけで、そのカラクリの一端を知りました。とりあえず、「愚か者の所業」「恥を知りなさい!」は安倍首相と三原じゅん子議員ご自身にお返しするとして、今回の毎日新聞の記事のようにファクトチェックをしてくれる記事は大変おもしろく、いろいろ隠しまくるし、息をするようにウソをつくとまで言われる安倍政権下ではファクトチェックこそ特ダネの源泉でしょう。

ネットや電波メディアよりも新聞が頑張れる分野ですから新聞記者のみなさんに大いに期待です。そうだ、そろそろ映画「新聞記者」を観に行かなきゃ。

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