メディアも出遅れ!台風15号被害で政府と県の驚愕発表?
メディアゴン / 2019年9月18日 9時10分
両角敏明[元テレビプロデューサー]
***
台風15号が去って8日もたった9月16日毎日新聞朝刊1面に驚愕の記事がありました。千葉県が15日に発表した住宅被害状況です。なんと、この日までに千葉県が把握した住宅被害は、全壊3、半壊4、一部損壊1255。
そんなアホな!
この3日前の12日にNHKが伝えた鋸南町の一部の地区の住宅被害だけでも、全壊5、半壊52、一部損壊309。県の発表数字にはいまだに県への報告のない17市町の数字は含まれないのだそうです。それでよくもまあ全壊3、半壊4、などと発表できたものです。千葉県庁のアホぶりが丸出しです。
森田知事さん、夕日に向かって竹刀振っているだけじゃ勤まらないよ、とSNSにありました。
要は、情報収集がまったく出来ていないということです。東電の不正確な情報提供が問題だと国も県も言っていますが、基本的な被災状況情報を国や県が東電に伝えなければ、東電だって正確な判断のしようもないのでは。警察、消防、自衛隊、地方整備局、その他の情報源を握っているのは国であり、県ではありませんか。
国は、15号上陸前の8日に、大きな被害は出ない、と関係閣僚会議の開催を見送り、安倍総理は台風通過後の9日、一部の官邸幹部との会議で、2~3日で復旧するだろうという見方を共有した、とTBS「ニュース23」が伝えています。呑気なものです。
テレビ朝日「報道ステーション」は、官邸に災害対策本部が設置されていない異常さを指摘しています。そして、政府が千葉41市町村に災害救助法を適用と発表したのは災害発生から4日目の12日になってからでした。
この間に、
『災害備蓄はもう尽きます。あとは一般の方々からの援助にたよるしかありません。』(被災3日目・役場幹部)
と悲鳴が上がり、住民からも、
『こっちの方の被害がぜんぜん報道されていない』(被災4日目・住民)
『災害にはラジオが必要と言うから用意した。ラジオつけても千葉の事なんか何もやってないじゃないか!』(被災4日目・住民)
『自衛隊は動かない、なにやってんの!今まで報道も政府もなんにもこない。内閣改造?ふざんけんなって言うんだよ!』(被災5日目・住民)*筆者注 実際は規模はともかく自衛隊は災害出動し活動している地域もあるが、あまり報道されていない。
では、政府は何をしていたのか?
台風通過直後のコメント『政府一丸となって被害状況の把握に努めるとともに、災害応急対策などに全力で取り組んでいる。』(9日・台風通過直後・菅官房長官)
それから3日たって内閣改造を終えた12日、この日になっても災害への総理の関心は薄く、『それぞれの持ち場持ち場で全力でやっていただく』(12日・安倍首相)とだけ言うとさっさと記者団を無視して踵を返しました
翌13日になっても政府の強引な態度は続き、菅官房長官は会見でこう言い放ったのでした。『対策については、大雨の前から災害発生後にかけて、迅速かつ適切に行ったと考えている。』・・・この呆れるばかりの傲慢なコメントには被災4日目、9月12日の千葉市長のコメントをご紹介するのが適当でしょう。
『当初からもっと日本全国をあげた応援態勢や支援体制を敷いて欲しかった。』
筆者には被災から数日たった鋸南町のある映像がひっかかりました。住宅街の比較的広い道路上を塞ぐように3本のコンクリート電柱が倒れています。そこを何人もの住民が切れた電線をくぐり、電柱を跨いで通行しています。そこに警察や消防、役所などの姿はなく、注意を促す看板やトラ柄テープもありません。
要はほったらかし状態です。道路を塞がれ車を出せない住民が困っていると言います。災害当日や翌日ならともかく、これが被災数日後の映像です。まず道を通す事は災害復旧の第一歩です。しかし、何日もこの異常な状態が放置されている事実が今回の千葉災害の一面を表しているように感じます。
[参考]TBS『あさチャン!』台風中継が凡庸以下だったわけ
警察、消防、自衛隊、地方整備局、市町村役場、その他の公的機関や東電などの情報が集約されておらず、司令塔なしでてんでんバラバラになっているのでしょう。その意味では指揮系統を統べるべき政府の責任者である安倍総理、県の責任者森田知事の責任は重大だと感じます。
一方でメディアの対応も気になります。筆者は千葉県在住者ですが、12日ごろから台風お見舞いをいただくことが多くなりました。一般の方々が今回の災害の大きさに気づかれたのが、11日以降だった事がうかがえます。ニュースでは9日、10日も千葉災害を伝えてはいたのですが、メディアが本気になって災害報道をはじめ、ワイドショーなどが本格的関心を持ったのは11日以降でした。その間、メディアはお隣の国のタマネギ男に異常な関心を示し、加えて内閣改造、とりわけ小泉進次郎氏の入閣などに多くの時間を割いていました。
南房総を真剣に取材すれば災害の深刻さに気づいたはずのメディアの出遅れは、被災者により苦痛を与えてしまったかも知れません。東京からたった1時間、日帰り取材できる隣県でおきた大災害対応になぜこうなってしまったのか、考えてみる必要がありそうです。
それにしても『対策については、迅速かつ適切に行ったと考えている。』と言い切る政府の傲慢な言葉には、迅速かつ適切にやってこの有様かよ、と寒気さえおぼえます。関東直下型地震や南海トラフなど、大型災害は必ずやってきますが、私たちには自助と共助しかないのかもしれません。
安倍総理は、残りの任期は災害対策と改憲とどちらに取り組むべきか、国民にお聴きになったらいかがでしょうか。もし残りの任期を、全霊をこめて災害対策に邁進したらそれがレガシーとして永遠に讃えられる総理大臣になるかもしれません。少なくとも、過半の国民が熱望してもいない改憲を強引に進めるよりは、成功確率の高い名の残し方なのでは。
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