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<森山氏「裏事情文書」はどこにある?>村木厚子さんえん罪事件や森友の佐川さんまで出てくる関電裏金話

メディアゴン / 2019年10月20日 8時40分

<森山氏「裏事情文書」はどこにある?>村木厚子さんえん罪事件や森友の佐川さんまで出てくる関電裏金話

両角敏明[元テレビプロデューサー]

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なんと、元厚労省の村木厚子さんえん罪事件で証拠品のFDデータ改ざんに関連し、懲戒処分を受けた元検事・小林敬弁護士が委員長としてまとめたのが関電の報告書です。コンプライアンスに問題があった人をコンプライアンス問題の調査委員長にした、関電の魂胆が透けるほどに公正公平とは言えない報告書でした。

この報告書は残酷なまでに元助役森山栄治氏ひとりに責任を負わせています。しかも調査当時ご存命であった森山栄治氏からはまったく話を聞いていません。その理由が「そこまで思い至らなかった」からというのですから笑えます。その報告書には2ページにわたる「小林弁護士所感」なるものが付属しています。報告書のシメが小林弁護士の「所感」なのも奇妙ですが、ここには取って付けたようなこんな文言があります。

『森山氏が、原発設置に尽力したのは事実ではあろうが、それも何十年も前の話であることに加え、仮に森山氏に暴露できるような当時の裏事情がありえたとしても、その露見の影響は限定的であろうことは容易に推測できることであった』

何十年も前の話で、森山氏の露見できる影響が限定的ならば、なぜ関電は森山氏にひれ伏したのでしょうか。この「なぜ」が焦点なのに、そこはスルー。でも「容易に推測できる」と断じています。

森山栄治氏は1928年生まれ、元助役と言っても助役を退職したのははるか40年も昔です。その後は民間人としての公職や地元企業の役員、顧問、株主などをして、北陸の小さな町で隠然たる力を持っていたそうですが、今年3月に90才で亡くなったおじいさんでもあります。報告書はこのおじいさんをメッタ斬り、まるで鬼のように書いています。

森山氏は『自己顕示欲の表れでとして』『意に沿わないことがあると急に激昂し「無礼者!」などと長時間にわたり叱責、罵倒する事が多々あり』『お前の家にダンプを突っ込ませる』とか『お前にも娘があるだろう、可愛くないのか』とすごまれたという伝聞情報や、『あまりに激しい恫喝の影響もあって半身不随となった』という話や、『身の危険もあることから経緯を書いた遺書を作って貸金庫に預けていた』という逸話など、こうした報告書にはなじまない裏付けなしの伝聞情報や真偽不明の噂話まで総動員して、森山氏異常言動てんこ盛りの人格攻撃に徹しています。

さらに、『関電の役員・社員は、森山氏は高浜町、福井県庁、福井県議会および国会議員に広い人脈を有し、機嫌を損ねいったん反対に回るとさまざまな影響力を行使して、原子力発電所の運営や再稼働に重大な支障を及ぼす行動に出るおそれがあると考えていた』としています。

[参考]<上級国民は逮捕されない?>刑事司法の不正を放置してはならない

しかし森山氏の背景に反社勢力のような暴力装置があったという証明もなく、70、80の老人が自らダンプを運転して突っ込んだり、娘を襲うとも考えられません。森山氏と人権活動や部落解放同盟との関連報道もありますが、金品授受との関係を指摘されているわけではありません。森山氏の幅広い人脈、とりわけ国会議員との関係を伝える報道も、稲田朋美議員は献金はあっても森山氏と面識はないのだそうですし、○○ドロボー事件で知られる高木毅議員をはじめとするほかの福井選出議員との関係も不明です。結局、報告書は、関電が怯えに怯えた森山という「鬼のような」おじいさんの力の源にはまったく触れていません。

関西電力は資本金4893億円、連結売り上げ3兆3076億円、従業員数20351名、グループ企業77社という巨大企業です。もし森山氏が単なる異常行動じいさんならば、対処はいとも容易だったはずです。そういうトラブル処理のために警察OBなどの人材や部署を用意しているのが大企業の常です。にもかかわらず、短気の森山おじいちゃんがキレルと怖いから、会長、社長、役員みんなで出所の分からない多額の金品を受け取っちゃいましたし、年始会、お花見会、お誕生日会でヨイショしまくりました、なんて寝ぼけた話が通用するわけもありません。

報告書は森山氏の人格攻撃ばかりで、露見の影響が限定的なことを示す事実などまったく書かれていないのに、

『仮に森山氏に暴露できるような当時の裏事情がありえたとしても、その露見の影響は限定的であろうことは容易に推測できる』

と、わざわざ小林委員長個人の「所感」を付け足してまで、〝決めつけ〟をしたのはなぜでしょうか。それはこの報告書には、関電としては削除したいが、削除の同意が委員全員からは得られなかった〝不都合な記述〟が残されているから、と考えてもまんざら不自然ではないでしょう。その不都合な記述とは、

『森山氏は、高浜3・4号機増設時の高浜町助役であったが、当時、当社の経営トップと何度も面談し、当社の経営トップから増設に関して依頼を受けたと話していた。森山氏は、その際に当社の経営トップから受け取ったという手紙やはがき等を保管しており、発電所立地当時の書類は、今でも自宅に残っており、これを世間に明らかにしたら、大変なことになる。」などという発言があった。』

これは、その気になれば森山氏が〝暴露できる裏事情〟とは何かを示しています。それは『その露見の影響は限定的であろうことは容易に推測できる』ような生やさしいものではなく、原発再稼働を吹っ飛ばすほどの破壊力があるからこそ関電幹部は惨めなまでに森山氏にひれ伏したのではないか、という推測を呼びます。

ではその裏事情が書かれた重要な森山氏の文書類はいまどこにあるのでしょうか。今回の問題が露見したのは昨年1月、吉田開発に国税の税務調査が入ったことからでした。当時の国税庁長官は森友問題で出世したあの安倍政権御用達の佐川宣寿さんです。査察で国税か検察かがこの裏事情文書をおさえた可能性が高く、ならばその情報を官邸に上げないはずはありません。それから1年以上経っています。もはや官邸にとっては、内閣や政治家や原発政策に影響しそうな危ないところはすべて手を回し、3月には森山氏が亡くなり、あとは関電が世間の非難を浴びて責任をとればいいという〝処理済み案件〟となっているのでしょう。もちろん『世間に明らかにしたら、大変なことになる』ような裏事情文書を安倍内閣が国民に明らかにするわけもありません。

それにしても、あれほど森山氏に怯えていた関電が、なぜ今回の報告書では悪口三昧を書けたのでしょうか。それは、森山氏が亡くなり、森山氏の力の源である裏事情文書も関電にとって安全な者の手に移り、森山氏の関係者とも何らかの条件で手打ちが済んで、もはや怖れるべき呪縛から解き放たれたからではないでしょうか。

しかし、長年にわたり関電にも地域発展にも大きな貢献をしたという自負があるはずの森山氏サイドが、いつまでもただ一方的に故人の名誉を毀損されたままで済ませるのかどうか。さらに、森山氏サイドからの情報を真っ先に追いかけるはずのメディアが、森山氏のご家族、関係者の証言や関係文書などを何ひとつ報道できず、メディアは牙を抜かれた、という誹りを受けたままで済ませるのかどうか。まだ事実解明の勝負は100%決まったわけでもないでしょう。

辞意を明らかにした関電の会長・社長は問題の本質をこのように語っています。

「底深いもの、歴史的なもの、過去のしがらみ」

少なくとも森山氏の裏事情文書には「底深いもの、歴史的なもの、過去のしがらみ」に光をあてる事実があるに違いありません。政府はもちろん、国会にも、第三者委員会にも事実解明が期待できない日本の悲しい現状では、深い闇の歴史に光をあてるかもしれない超絶スクープをメディアやジャーナリズムの「残された牙」に期待です。

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