<朝日新聞の違和感>荻生田文科相夏の甲子園無理発言を報道し、足立康史の商業的観点は報じない?
メディアゴン / 2019年12月11日 7時30分
奥村シンゴ(ライター)
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日本高校野球連盟(高野連)は11月29日、理事会を開き来春のセンバツ大会から投手1球の投球数を1週間500球以内を実施するのを決めた。3年間は試行期間でその後のルール化を目指すとしている。
荻生田光一文部科学相が11月27日の衆院文部科学委員会で、高校野球の過密日程や投球制限などについて日本維新の会足立康史議員から問われ「IOCのアスリートファーストの観点からいえば、もはや夏の甲子園は無理だと思う」と答えた。
これを今まで高校野球のネガティブな記事をほとんど報じた印象がない夏の大会主催者の朝日新聞が報道しているのに驚いた。高野連の八田英二会長は会見で「報道などで(荻生田)の発言は承知しているが、スポーツ庁と意見交換などをさせてもらっているが、大会開催については高野連で決める認識だ」と改革を求めた。
ところが、足立氏が朝日新聞が商業的観点で高校球児から搾取していると指摘した点については現在もスルーのままで違和感が残っている。
<荻生田氏、足立氏の質疑に夏の高校野球は無理と発言>
足立氏は「ピッチャーが一人の地方の公立高校が地方大会から甲子園を勝ち上がり、高い球数を繰り返し投げても最後まで戦いきれる日程を組めるか阪神球団と交渉するのが入り口」と提案した。
背景を補足すると、高校野球の本選を開催する甲子園球場はプロ野球阪神タイガースの本拠地であり、ペナントレースの日程の都合上、あまり日程が長引くのは難しいが余裕がないわけではない。現に今春の本選大会は4月3日に終了し、阪神の試合が開催されたのは4月9日と6日あ間、今夏の本選大会は8月22日に終了し、阪神の試合が開催されたのは27日と5日間余裕がある。雨天中止などを考慮し2日間余裕を設けても今春なら4日間、今夏なら3日間の日程にゆとりがあり足立が指摘する通り阪神球団と交渉の余地は十分にある。
[参考]<「所属」という病気>ジャニーズを離れない「解散SMAP」
足立氏の提案に対し、荻生田光一・文部科学大臣は「高野連がプロ野球の養成所であってはならない。プロ野球の為にこの選手をつぶすのは勿体ないという視点は大きな間違い」と前置きした上で、「選手の健康管理を考えるのが一番大切な視点」と一定の理解を示した。その上で「IOCのアスリートファーストの観点からいえば、もはや夏の甲子園は無理だと思う。本来高等学校の最終の決戦は秋の国体の場」と、持論を展開した。
その後、清原和博氏、佐々木主浩氏ら元プロ野球選手によるイベント「レジェンド・ベースボールフェス」が開催され、荻生田が参加。
私は夏の大会をやめろと言ったわけじゃない。球団(阪神)と相談すれば、もう少し緩やかな日程も組める。特に日中、最も気温が上がる時間をオフタイムにするとか、朝1試合を早めにやるとか、夕方からナイターをやるとかいろんな方法がある」と提案している。
<朝日新聞、夏の大会無理発言報道>
夏の高校野球の大会主催者の朝日新聞がどのように報じるか注目されたが、「萩生田文科相『もはや甲子園で夏の大会無理』衆院委で」と朝日新聞本紙とデジタル版で触れた。
荻生田氏の「夏の甲子園大会無理」発言に加えて、岩手の大船渡高の佐々木朗希投手が、今夏の岩手大会決勝で登板せず、チームが敗退した件を「プロ野球のためにこの選手を今つぶしたらもったいないと議論されているなら大きな間違い。選手の健康管理を考えるのが一番大切な視点」と述べたところも報じている。
また、元プロ野球選手の桑田真澄氏が投球制限について「決断は小さな一歩だが、小手先の改革。僕は何年も前から導入すべきと言ってきた。やらない方がいいと思う改革、なぜもっと改革できないのか」と批判したことも報じている。
荻生田氏や桑田氏の発言を取り上げたのは今まで朝日新聞から高校野球のネガティブな報道はあまり記憶にないので、評価できるだろう。官房大臣や文科大臣からコメントが出て、報道せざるおえなかったのか。あるいは、SNSの発達やネット配信の発達で個々が発信できあっという間に情報が拡散されるさ昨今、意識改革の現れなのか。
<足立氏の朝日新聞商業的観点の指摘はスルー>
ところが、足立氏が「高校野球で1週間500球以内の球数制限を設けるだけでは私立・公立の強豪校が有利になる。なぜ大会スケジュールに余裕をもたせないのか?朝日新聞の商業的観点があるのではないかと」と荻生田に質疑。足立氏の指摘に荻生田氏は「文部科学省が高野連に直接指導するというわけにはいきませんが、問題意識は共有します」と前向きな回答をした。
この部分について朝日新聞はスルーである。
背景に夏の高校野球を中継する朝日新聞社のグループ会社のテレビ朝日や朝日放送テレビはタダで数十億円の利益が転がりこんでくるのがあるのではないだろうか。同じ期間位の大会でいえばWBC(ワールドベースボールクラシック)は80億円の売上でプロとアマチュアの違いはあれど、おそらく高校野球の大会毎に数十億円の収益が手に入ると予想する。ましてや高校球児をダシにし毎年のようにタダで数十億の収益が手に入る構図は、朝日新聞にとってイメージダウンに繋がり販売部数低下を恐れているのか。
「夏の大会無理発言」や桑田氏の朝日新聞からすればネガティブな印象をもたれかねない報道をしたのは一歩前進したといえるだろう。ただ、足立氏が指摘する朝日新聞が高校野球を「商業的観点」で捉えている点も徹底検証する報道や紙面作りに期待したい。それこそが球児ファーストの高校野球改革に繋がるのではないだろうか。
高野連と共に朝日新聞の今後の取り組みに期待を寄せたい。
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