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高橋維新の「2019年M-1決勝・全批評」テレビ的に売れる人は?

メディアゴン / 2019年12月24日 7時30分

高橋維新の「2019年M-1決勝・全批評」テレビ的に売れる人は?

高橋維新[コラムニスト]

***

2019年のM-1です。去年も言いましたが、私はどうせならテレビで売れる人に優勝して欲しいと思っています。以下の感想も、そういう観点から書いています。

<1>ニューヨーク

ボケの嶋佐のおかしなオリジナルラブソングに屋敷がツッコミを入れていくというネタです。一人が歌を歌ってもう片方がそれにツッコミを入れるという形式は巨人も言っていたようにそんなに珍しいものではありません。ナイツだってそういうタイプの漫才をやっています。

この手のネタで注意すべきなのは、ずっと同じ歌を歌うことでボケの種類が一本調子になってしまうことですが、今回ニューヨークが披露したネタはきちんと変化も入れていました。伏線回収みたいなクダリもありました。松本は屋敷が笑いながらツッコミを入れているのが個人的に好きではないと言っていましたが、それは好みの問題です。確かにヘラヘラツッコミを入れると「ボケのことを本気で正そうとしている人」を演じ切れない場合があるのですが、そこはクリアしていました。演じることはできていたと思います。

それでもM-1で上に来るスタンダードな漫才と比較すると変化球という感は否めず、トップバッターになってしまったのは不運だったと思います。中盤で箸休め的な感じで登場したらもっとハネたかもしれません。それでも、箸休めにしかならない気もしますが。

ネタ後の松本のコメントを聞いて本気で嫌がっている2人が一番おもしろかったです。あのお芝居が色々なシチュエーションでできるのであれば、テレビからはたくさんお声がかかることでしょう。

<2>かまいたち

おもしろかったですよ~。松本が大得意な言いがかりキャラを山内が完璧に演じ切っていました。それを正そうとする普通の人を演じる濱家も良かったです。間も完璧でした。まあ、決勝に残ってるからにはそこらへんはバッチリ決めてくるんでしょうけど。

山内が自分の言い間違いを濱家になすりつけた瞬間が2回あったのですが、そのクダリが一番おもしろかったです。出てきた言い間違いは2つだけだったのですが、どうせならもっとたくさんの種類を見てみたかったです。4分と言わずもっと長いこと見たいネタだということですね。

<3>和牛(敗者復活組)

クオリティは非常に安定しています。不動産屋(水田)と内見に回る客(川西)という使い古された設定であそこまで魅せてくれるのはさすがです。

ボケの中核は、「水田が紹介する不動産が既に居住者のいるところばかり」というものなんですが、ずっと同じように見えて細かく変化をさせています。それに合わせて川西の「お邪魔しました」の言い方も細かく変わっていくところが個人的には好きでした。後半はネタの内容がちょっと変化します。松本はそれを評価していましたが、私はずっと前半の感じでやって欲しかったです。ただもうここは好みの問題です。

技量(=漫才の登場人物を演じる演技力)は十分です。それが和牛です。ただ技量が十分なだけでは優勝できないのがM-1です。そして、ネタの中身がハネるかどうかはもう運なのです。これまでM-1では運に見放されてきたのが和牛なのです。

<4>すゑひろがりず

袴に鼓と扇子という出で立ちで、合コンという現代の設定を古風に言い換えていく漫才です。私は母心の歌舞伎漫才を思い出しました。「江戸時代の人が合コンをやったらどうなる?」という大喜利への回答が散りばめられたネタでしたが、巨人も言っていたように大喜利のクオリティは全体的に高く保てていたと思います。

ボケの三島がかなり老けた顔立ちをしており、ネタ自体も古風でかつ単品のキャラクターに頼っていることもあってか、あんまりM-1で優勝させたくありません。こういった単品の強いキャラクターはテレビでは扱いづらいので、優勝しても先が見えないからです。上沼も言っていたように、大ベテランのやるネタだと思います。むしろ、なかなか売れない苦労人の風格を帯びていた方がおもしろく見えるネタだと思います。

それと、ネタ中にイッキコールをやっていました。本人たちも今の時代そういうのはアカンというツッコミを入れていましたが、本当に大丈夫なのかということがちょっと心配になりました。その心配が少し笑いを阻害したので、再考してもいいかもしれません。まあ、古風な言葉に言い換えているので大丈夫な気もしますが、それだけで大丈夫になるのもどうかと思います。

<5>からし蓮根

ボケの伊織のフランケンシュタインみたいな風貌としゃべり方といい、2人の身長差といい、カミナリっぽいなと思いました。巨人は伊織が普段からあんなしゃべり方だと言っていましたが、もっとおもしろくできると思います。もっととぼけた感じを出して欲しいんですよね。でかくてしゃべりが若干ヘタクソだというのはまなぶの他にしずちゃんにも似ていると思います。

なので、とぼけた感じをわざと出していく方向性も、敢えてこのヘタクソさを残してキャラを立たせる道もあるとは思います。ヘタクソさを立たせるのであれば、もうちょいヘタクソだということを誇張して演じて欲しいです(しずちゃんはそれができていると思います。伊織が敗退決定時にコメントを求められて言った「頑張るぞ~」の感じです)。そして、どっちにしろもうちょい声は張って欲しいです。

あと2人の登場前の煽りVTRでツッコミが方言ツッコミだと紹介されていましたが、あんまりピンと来なかったので肩透かしを食らいました。ネタに集中できなくなるのでそういう煽りはやめてください。

<6>見取り図

盛山が誰かにずっと似てるなと思ったんですが、ロッチの中岡ですね。清潔感のない髪と甲高い声がそっくりです。

二人の風貌を例え合う漫才でしたが、まず風貌にくるよや稲ちゃんほどのインパクトがないので、ハネきりません。笑いが頭打ちになってしまいます。あと盛山はあのガラの悪い風貌であれば声にももっと怖さを出して欲しいんですが、出てくる声がロッチ中岡なので、あんまりマッチしません。盛山が何か声を発するたびにリアクション芸でヘタレている中岡が脳裏に浮かんでしまい、リリーの例えも上滑って明後日の方向に飛んでいってしまいます。声と風貌の噛み合わなさをイジった例えを出しても良かったかもしれません。

<7>ミルクボーイ

漫才の構造的な話をすると、ボケは駒場じゃなくてコーンフレーク(と、駒場のオカン)なんです。コーンフレークのおかしなところにツッコミの内海が1人でツッコミを入れている漫才です(駒場は終盤に若干ボケる以外は、相槌を打って内海の漫談を先に進めさせる役です)。ずうっとしゃべっている内海の負担が大きそうなのですが、内海が1人でコーンフレーク漫談をしてもここまでおもしろくはならないと思います。駒場は、必要です。

煽りVTRで言われていた通り内海は顔立ちも含めてものすごく昭和の芸人然としています。これは、本人の個性が見えないということです。昭和の芸人というだけであれば似たような師匠連中がたくさんいるので、テレビで使いたいということにならないと思います。もうちょっと、個人のパーソナリティを出して欲しいです。駒場は前述の通りネタ中はあんまりしゃべっていなかったので、べしゃりの実力は未知数なのですが、そっちがダメでも春日みたいに筋肉キャラで売っていけるでしょうか。どうでしょうか。

このネタは文句なしにおもしろかったですが、録画したものを見返したらツカミのベルマークのクダリが本題のおもしろさと全然釣り合っていなかったことに若干腹が立ちました。

<8>オズワルド

審査員も言っていましたが、関西の若手みたいにワ―キャー騒ぐ感じではなく、落ち着いた漫才でした。ボケは少々トリッキーで、ツッコミもそのトリッキーさを真正面から受け止めず斜に構えており、シュールな印象を受けました。

ただよく見ると畠中のボケは大体全部ツッコミを入れられて処理されています。伊藤の斜に構えたツッコミは「何で真正面からいかないのか」というズレを作出するボケでもあるので、ここに全くツッコミが入らない(それを全部スルーすることが、畠中のボケキャラが際立たせるという構造にもなっています)からこそ、シュールな印象を受けるんだと思います。伊藤の一番のボケは「理論上はそう」というツッコミなのですが、畠中はこの発言のおかしさを全スルーしていたじゃないですか。

こういうネタなので、M-1だとハネきるのは難しいでしょうか。せめて仕事が増えてくれればいいですが、風貌以外に二人の個性が見えてこないネタだったので、まだ時間がかかりそうですね。ヒゲメガネだけならファラオとかマツモトクラブとか色々いますから。

<9>インディアンス

田渕はザキヤマっぽいんです。でもM-1で優勝した時のアンタッチャブルよりおもしろくなかったんです。田渕が一人でふざけてる時間が長くて、ツッコミが少ないからです。そして、ツッコミも田渕を制止する内容だけで一本調子だからです。優勝したときのアンタッチャブルは、ザキヤマがボケて柴田がツッコんでという一小節一小節をきちんと見せていた記憶があります。

礼二は田渕のキャラがもっと見えたらいいと言っていましたが、素もザキヤマみたいにああいうキャラなのかもしれません。そうだとしたら、まずはザキヤマの代わりという形で仕事が入ってくると思います。

<10>ぺこぱ

ツッコミの松陰寺は、ツッコむと思わせておいてフォローを入れるというボケをやっていました。シュウペイのボケよりこのボケが笑いの中核になっていました。このボケにツッコミが入らなくてもおもしろいのは、普通の漫才であれば入るであろうオーソドックスなツッコミが視聴者の脳裏に刻み付けられていて、それがナチュラルにフリとしての役割を果たしているからでしょう。だからツッコミで事後的な説明をしなくてもズレの存在と内容が認識できるのです。

礼二はシュウペイのキャラが固まっていないと言っていましたが、まだ演じ切れていない感じはしました。表情(特に笑顔)が貼りついた感じなんです。松陰寺も、あのビジュアル系バンドのナルシストみたいなキャラクターを完全に乗りこなせてはいません。汗をかきすぎで顔がテカっていることや、前髪がちょっとくたびれていることも一因かと思いますが、無理してやっているように見えます。審査員の面々も「松陰寺がこれまでに色々なキャラを試している」というのを暴露していましたが、そういうことなんでしょう。ホストネタをやる英孝ちゃんみたいな痛々しさがあります。
なので、ドッキリとかにかけてみたらおもしろいかもしれません。

*最終決戦

<1>ぺこぱ

やっていることは1本目と一緒でした。なので、「さっき見たよ」という感想しか出てきませんでした。飽きちゃったんですね。よく見るとボケの内容はちゃんと色々変化させていたので、大喜利力の下地があることは感じられました。

<2>かまいたち

言いがかりで口喧嘩を仕掛けてくるネタの構造は一本目と一緒です。「手品ができる」と自慢してくる濱家に対して山内は「トトロを見たことない」という自慢を口八丁だけで勝たせようとしていました。是非、松本みたいにこの手の言いがかりがアドリブでできるようになってほしいです。

<3>ミルクボーイ

1本目と同じ構造のネタを「最中」という題材でやっていました。コーンフレークより爆発力がなかったのが残念でしたね。コーンフレークほどのクオリティが出せる題材が何個も見つかったら苦労しないですけどね。

*総評

優勝はミルクボーイでした。松本以外の6人全員がミルクボーイに入れていました。ぺこぱと一緒でやっていることは1本目と変わらなかったのですが、1本目の勢いのままにウケをとっちゃった感じでしょうか。ただまあ、かまいたちのネタにコーンフレークに伍するほどの爆発力がなかったのも確かです。

テレビ的に使えそうな人は去年よりはいました。以下にまとめておきます。

・からし蓮根:カミナリに似ています。伊織のフランケンシュタインキャラが活かせないでしょうか。

・インディアンス田渕:ザキヤマ的にひたすらボケ続けるひょうきんものでいけると思います。

・ぺこば松陰寺:英孝ちゃんや永野みたいにオッサンが無理してキャラをやっている痛々しさがあります。取り敢えず一通りのドッキリをかけてみたいです。

ミルクボーイは・・・うん。内海は、顔は落語家で衣装は40年前の漫才師なので、若い人からの人気が出にくそうなのです。もっと年をとってからNHKの昼間とかで落ち着いた仕事をやってそうなイメージなのです。ずっとネタをしゃべってるだけで個性が見えなかったので、テレビに定着したいのであればこれから増えるであろう露出でそれを出していくしかありません。

駒場も個性が見えなかったのは同様です。筋肉キャラが活かせればいいですけど、春日並みの変人には見えないんですよね。

頑張って欲しいです。今後のM-1というブランドはあなたたちにかかっていると思います。

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