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<桜を見る会>ウソと「ならば、ならば」の攻防戦

メディアゴン / 2020年1月21日 7時30分

<桜を見る会>ウソと「ならば、ならば」の攻防戦

両角敏明[元テレビプロデューサー]

***

この冬スタートしたドラマの中で、主人公・吉高由里子さんが言いました。

「この国はトップが平然とウソつきますけど、ウソ言った者勝ちの世の中はぜったいおかしいです」

この国のトップがウソをつくのはみんなの常識、といった感じでこのセリフが出て来たので驚きました。そう言えばメディアでは「いざとなったらウソをつく政府」とか「国のトップはウソをつくのに恥じらいも躊躇もない」とかのコメントがあちこちで。「桜を見る会」の影響でしょうか、これまでとはケタが違って「安倍はウソつき」の浸透度はすごいことになっています。

こうした「トップのウソ」で今すごいことになっているのが内閣府です。「桜を見る会」に関して安倍政権は、「招待者名簿をはじめ関連文書はぜんぶ廃棄したことにして事態を乗り切る」と決めたのでしょう。このやり口には森・加計や統計不正問題での成功体験があります。

こうなると官僚はこの大方針を貫かなくてはなりません。まず重要なのは招待者名簿をこの世から消し去ることです。万一名簿が明らかになれば、反社勢力、ジャパンライフとの関係をはじめ政権が吹っ飛びかねません。招待者名簿を消すために、ウソはウソを呼び、あちこちで膨大なウソの連鎖がはじまります。その一例をご紹介します。

内閣府は、紙の招待者名簿は5月9日にシュレッダーにかけて廃棄し、電子媒体も削除してデータ復元は出来ないと説明します。この言い訳はほとんどの人がウソだと思っていますが、残念ながら追求側には証拠も調査の強制力もありません。

ならば、バックアップデータがあるだろうと追求すると「8週間ほどはあったが廃棄済み」あげく「バックアップデータは公文書ではない」とまで言い出しました。「ウソー!」とほぼだれもが思いましたが、政府と内閣府は強引にこれで押し通します。

ならば、8週間でバックアップを廃棄するという根拠規程はどこにあるのかと問います。これには「明文化された規程はなく、運用でそうしている」と答え、実務にあたる業者への文書などはないと逃げます。こんな運用を国家がするはずもなく、ウソ見え見えなのですが、やはり証拠は内閣府側にしかありません。

ならば、電子ファイルを廃棄した時に記録されるログ(操作・通信記録)を出せと迫ります。サーバーに自動的に生成されるログを無いとは言えないので内閣府はなんと言ったか・・・『調査しない』。

役人が駄々っ子のように「調査しない」と言ったのですから「ヒエー!」です。出せば廃棄した事実が証明できるのに、ウソがバレるから調査しないと言っているとしか受け取れませんが、追求側は調査を強制できません。ならば、安倍政権になってからの2013~2017年招待者名簿は1年保存文書なので「行政ファイル管理簿」への記載が法律で義務づけられているはずだ、と迫ります。

[参考]<桜を見る会前夜祭?ホテル見積り検討 5000円は違法?脱法?ニューオータニのおかげ?

この管理簿には名簿の記載日と廃棄日が記されているので、これによりすべて廃棄したという内閣府の主張が公式に裏付けられるはずです。逆に不正があれば悪質な改ざん・隠蔽という重大な不祥事がはっきりするかもしれません。はて、内閣府はどう答えたのか・・・。

「2013~2017年の名簿は行政ファイル管理簿に記載していなかった」と安倍政権になってからの違法行為を内閣府が自ら明らかにしたのです。またまた「ヒエー!」です。でも、これもほぼ確実にウソです。違法行為というヤバイことを上級国家公務員が進んでやるはずがありません。しかも、記載しなかった理由を一度は「担当者のエラー」と説明します。5年連続でエラーしたという話です。そんなこと信じられるわけがありません。

すると数日後に「担当者のエラー」としていた言い訳の風向きを変えてきます。新たな言い訳は、

「2011年、12年の民主党政権時に『桜を見る会』の招待者名簿を行政ファイル管理簿に記載していなかったから、2013年以降もこの前例を漫然と踏襲した」

こんどは安倍政権の大好物、民主党政権ディスリです。しかし、これも99%ウソです。2011年と2012年は東日本大震災と北のミサイルで「桜を見る会」は中止です。中止決定時点では名簿は未完成で決裁もうけていません。よって前例になるはずがありません。これを内閣府は名簿について「その時点での完成版」があったと言い張ります。「その時点での完成版」とは「作成途中の未完成版」ということのはずですが、これを「その時点での完成版」と強弁し続けます。

ようするに、民主党政権時も管理簿不記載の罪を犯しており、2013年以降の安倍政権はこれを踏襲しただけと言っているのです。東日本大震災による「桜を見る会」中止年度まで持ち出して、不記載は民主党政権から始まっているという明らかな印象操作です。このやり口はシュレッダー騒ぎの件で安倍首相が参院本会議で「障害者雇用の職員」という言葉を持ち出して印象操作したのと酷似しています。やり方があまりに姑息です。

実は同じ民主党政権時代の2010年度は「桜を見る会」が開催され、招待者名簿は管理簿に記載され、2015年2月まできちんと残っていました。こちらを前例踏襲するのが当たり前なのです。さらに、奇妙な説明も。

内閣府には管理簿への記載をチェックする部門があるのですが、ここがなぜかチェック漏れをくり返していたというのです。結局、担当課は5年連続で管理簿記載漏れ、チェック部門も5年連続でチェック漏れがあったと。そんなバカなこと信じる方います?

以上が「桜を見る会」のある側面を追求している経過の一部です。

この状態、たとえがやや不謹慎かもしれませんが、殺人事件を隠すために別の殺人事件を起こし、追いつめられた犯人はもはや訳がわからないまま次々と手を汚し続ける・・・。まるで安手のミステリードラマのような展開ではありませんか。この下劣なドラマは森友、加計、統計不正と続き、「桜を見る会」でシリーズ4作目です。

これまでの3作では哀れな実行犯だけが罪をかぶり、陰の大物は大手を振って闊歩しているどうにもスッキリしない結末だったのですが、今回の結末は後味の良いものになるのでしょうか。おそらく世の中の圧倒的多数の人々はこう思っています。ドラマにおける吉高由里子さんのセリフです。

『ウソ言った者勝ちの世の中はぜったいおかしいです』

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