エンタメ商業イベント化した東京五輪開催の是非
メディアゴン / 2020年2月12日 7時30分
物部尚[エッセイスト]
***
筆者は、商業主義、エンタテイメント第一主義に堕したオリンピックは縮小すべきではないかと考えている。
「近代オリンピックの始祖クーベルタンは『オリンピックは参加することに意義がある』と述べた」という有名な文章には2つの誤りが含まれている。ひとつめは発言した人物について。実際は礼拝のためにセントポール大寺院に集まった英米両チームの選手を前に、主教が述べた言葉がもとだ。ただし、クーベルタンが、近代オリンピックの理想を『参加することに意義がある』と思っていたことは確かである。
近年のオリンピックを見て、「そうはなっていないなぁ」と感じているのは筆者だけではあるまい。オリンピックをやらなくても世界的レベルの競技会があるゴルフ、テニス、サッカー、野球、バスケットボール、マラソン、自転車、陸上短距離、ラグビー、ボクシング、フィギュアスケートなど、商業的に成功しているスポーツなどは、改めてオリンピックで世界からプロを集めて世界一を決める必要もあるまい。
[参考]2020年の東京五輪はオリンピックとパラリンピックを同時開催すべき
ましてや、トッププロの中には、新型コロナウイルスの感染地域である日本に来ることを拒否する人もいるだろう。過去には実例もある。新型肺炎の流行は不幸だが、これを時機ととらえて、2020東京オリンピックは小さな大会にして(それでも充分大きいが)延期開催すればよいと思う。
さて、クーベルタンの言葉『オリンピックは参加することに意義がある』の2つ目の誤り。それは分かりやすく簡潔にしたために潜り込んでしまった誤謬である。
1908年のロンドン大会は英米両チームのあからさまな対立により険悪なムードだったと言われる。開催中のある日曜日、礼拝にやってきた対立する英米選手を前に、さきほどの主教が述べた戒めの言葉が「オリンピックで重要なことは、勝つことではなく参加することである」なのである。
クーベルタンも思いを同じくし「オリンピックの理想は人間を作ること、つまり参加までの過程が大事であり、オリンピックに参加することは人と付き合うこと、すなわち世界平和の意味を含んでいる」と、考えていたとされる。
しかし、その思いは無視され、1936年ベルリンオリンピックは、ヒトラーによってナチスドイツの国威発揚に利用された。大会は「ナチス党のお抱え監督」と呼ばれた女流映画監督レニ・リーフェンシュタールによって2部作の記録映画『オリンピア』となった。
この、国家による争いという形式が筆者は嫌いだ。選手達はなぜ国家を背負って戦わなければならないのか。2019ラグビーワールドカップ日本大会における、国籍を超えたチーム編成の、なんと清々しかったことか・・・と筆者は痛感した。(もちろん多国籍チームの編成が大英帝国の植民地主義を起源とすることは知っている)
アメリカなどによって国家第一主義が世界を覆いそうになっている今だからこそ、「オリンピックの見直し元年」とするべきなのではないか。
外部リンク
この記事に関連するニュース
-
植民地時代の国籍は日本?金メダリストは? 韓国で歴史観巡り対立激化、「親日批判」も
共同通信 / 2024年11月16日 8時4分
-
日本総合研究所・寺島実郎の「日本は真っ当な資本主義を取り戻すべき」
財界オンライン / 2024年11月8日 7時0分
-
パリ五輪7人制ラグビー 浦安市ゆかりの選手に特別表彰
チバテレ+プラス / 2024年11月6日 16時57分
-
選挙干渉、フェイクニュース...「デジタル技術は民主主義に合わない」を再考する
ニューズウィーク日本版 / 2024年10月28日 11時0分
-
なでしこジャパン 韓国女子代表戦メンバー発表 佐々木則夫監督代行会見要旨
ゲキサカ / 2024年10月26日 2時50分
ランキング
-
1兵庫女児刺傷事件には入念な計画があった 下見に数カ月、防カメの位置は把握と容疑者
産経ニュース / 2024年11月23日 7時20分
-
2【続報】自民・田畑議員巡る疑惑 無断党員登録 複数の事業所で
KNB北日本放送 / 2024年11月22日 20時37分
-
3百条委員長がN党立花氏を告訴=SNSなどで名誉毀損容疑―兵庫
時事通信 / 2024年11月22日 22時42分
-
415年以上前に閉院した姫川病院が“心霊スポット”化 解体もままならず 地域住民が頭を悩ます中で迷惑行為も 新潟・糸魚川市
BSN新潟放送 / 2024年11月23日 7時25分
-
5【判決】“不倫を続けるため殺害” 妻と1歳の娘を殺害した男に無期懲役 裁判長「酌むべき点は皆無」と断罪 《新潟》
TeNYテレビ新潟 / 2024年11月22日 19時22分
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
エラーが発生しました
ページを再読み込みして
ください