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安倍総理、図星を突かれた地団駄の響き?

メディアゴン / 2020年2月22日 2時10分

安倍総理、図星を突かれた地団駄の響き?

両角敏明[元テレビプロデューサー]

***

またまたヤジで世間を騒がせている安倍総理、来週2月17日に国会で「謝罪」するのかしないのか、「謝らない男」が何を発言するのか注目です。問題の総理ヤジ音声を文化放送がクリア化していました。単に『意味のない質問だよ』と言っているわけではありませんでした。

正確には、

『馬鹿みたいな質問だよ』

『意味のない質問だよ』

『意味のない質問だよ』

のヤジ3連発でした。これを聴くとあらためて安倍総理の悔しさの激しさがわかります。一方で「タイは頭から腐る」と言われたぐらいで歴戦の強者がヤジを3連発するまで悔しがるか、という気もしたのです。総理は「一方的に罵詈雑言を浴びせられ、反論する時間もなかった」と説明しました。これも、辻元議員の発言は終了時間が来たらまとめとして議員なら誰でもやる「答弁を求めない発言」ですから、反論できなかったからと言ってあそこまで、という気もしたのです。

ほかにも気になることがあります。「タイは頭から腐る」は『総理、最後に申し上げます』ではじまるまとめ発言で、総理に答弁を求めないのがふつうです。それを分かっていながら、総理は3連発のいずれも『~質問だよ』とヤジっています。どうも総理のヤジの源泉は「タイは頭から腐る」発言ではなく、それまでの質問にあったのではないかという気がしました。

辻元議員の質疑終了の言葉は「タイは頭から腐る」発言ではなく、以下のフレーズです。

『私の手で憲法改正をなし遂げたいと。総理の手でなし遂げることは、そろそろ総理自身の幕引きだということを申し上げて、終わります。』

今国会で辻元議員が安倍総理に質問するのはこの日が2回目です。1回目の2月3日は桜を見る会の前夜祭について「安倍方式」という言葉と、同じ事を誰がやっても構わないという暴論を安倍総理から引き出しています。その質疑の最後は『次は憲法をやります!』という、あたかも覚悟しろよ!と言っているかのような総理への捨て台詞でした。その9日後、第2戦が『意味のない質問だよ』が飛び出す質疑です。この日の質疑時間はおよそ48分でしたが、予告どおりおよそ35分を憲法改正論議に当てています。

*コロナウイルスに関連して緊急事態条項の話

*国政選挙と憲法改正国民投票との関係

*自衛隊明記理由は憲法違反とする憲法学者が多数だから、と安保法制に9割の憲法学者が憲法違反とした時は数じゃないとした矛盾

*国民投票で改憲が否定されたら自衛隊はどうなる

*自衛隊海佐が風俗業を兼業

・・・と質疑は進みます。そしてかつて安倍総理が熱心に唱えた96条(改正手続条項)が自民党の示した改正案たたき台四項目に入っていないことに攻め込みます。発言が長いので筆者が発言を一部カットした大意です。

辻元議員「総理大臣が施政方針演説で、憲法について何条を変えるということまで言った言葉は、そんなに軽いんですか。できそうにないから引っ込めました、では、自衛隊の明記も、できそうになかったらまた引っ込めるんですか。」

安倍総理「自民党結党以来、九条を念頭に置き憲法を改正すべきだ、これを党是として掲げてきたわけでございます。しかし、九条において、三分の二の多数を得ることが果たしてどうかという中において、これを掲げた、現実問題として掲げたわけでございます。」

質問者と答弁者という立場もあってか攻める辻元、守る安倍という雰囲気が否めません。そしていくつかの質疑応答の後、辻元議員は安倍総理の改憲姿勢を以下のように断じます。

辻元議員「今は自衛隊明記に御熱心なんですけれども、つい前まで私は九十六代の首相で、九十六条を変えたいと山のように発言して、熱心だったんです。結局、できそうなところないかしらと探しているんじゃないですか。党是だからから始まって、あるときは九十六条、あるときは緊急事態、あるときは憲法九条。ほかの政策もそうでしょう。三本の矢がだめなら女性活躍、女性活躍がだめだったら一億総活躍、あらまあ、人づくり改革。外交もそうじゃないですか。ロシア、北朝鮮、ふらふらふらふら、あっちかな、こっちかなって。憲法もふらふら…(一部筆者省略)」

推測ですが、『意味のない質問だよ』とくり返しヤジった悔しさの源泉は「腐ったタイの頭」ではなく、ここだったのでなないでしょうか。総理は図星を突かれた上に有効な反撃ができなかったのです。押しつけ憲法論を展開し自主憲法制定を唱えた有力者が岸信介元総理でした。かつてその孫安倍晋三氏も、日本国憲法を『いじましい、みっともない憲法なんですよ。日本人が作った憲法じゃないですからね』と切って捨てています。

[参考]危機管理能力欠如を露呈する安倍内閣

現憲法が戦勝国から押し付けられた憲法かどうかの議論は様々にある中、祖父岸信介ゆずりで押し付け憲法と信じる安倍総理にとっては、日本人が作りさえすれば、その内容には特別の思いはなさそうでした。そして今では自主憲法にもこだわらないようで、96条、9条、緊急事態条項や教育無償化など、何でもいいから、とにかく憲法改正をやりたい、というのが本音のようです。憲法に限らず安倍政治はコロコロ変わります。言葉は強く、信念と論理性は弱いと言う人がいる所以です。

今回、安倍総理が投げつけた、『馬鹿みたいな質問だよ』『意味のない質問だよ』というヤジは、とても激しく、あまりに執拗です。こうした、この人大丈夫か、とさえ感じる反応は、図星を突かれた悔しさの表れであり、これといった政治的成果を残せない痛ーいところを射貫かれた悔しさに地団駄を踏んでいる姿と観るのは推測が過ぎるでしょうか。

ヤジの源泉は何か?

総理が言うような、馬鹿みたいで、意味のない質問があったのかどうか、議事録をお読みになることをお薦めします。

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