<NHK「有田Pおもてなす」>滝沢カレン作コントはなんのために放送されたのか
メディアゴン / 2020年3月17日 9時3分
![<NHK「有田Pおもてなす」>滝沢カレン作コントはなんのために放送されたのか](https://media.image.infoseek.co.jp/isnews/photos/mediagong/mediagong_29874_0-small.jpg)
メディアゴン編集部
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この番組は何を目的に制作されたのだろうか? これは、見ている人にどう思ってもらおうと考えてつくられた番組なのだろうか。笑ってもらおうと思ってのような気はするが・・・。
「この番組」とは、NHK3月14日(土)よる10時10分『有田Pおもてなす』の中で放送された特別企画「コンコントントン」のことである。番組の内容はNHKのHPから引用しよう。
(以下、引用)滝沢カレンが、コント設定・キャラクター設定・キャスティングイメージ・台本執筆など、コント制作に関わるすべてを考え、2か月間かけて2本のコントを書き上げた。コントを演じるのは、有田哲平をはじめとする一流のお笑い芸人たち。アドリブは一切なし。滝沢が書き上げたコント台本の通りに一言一句違いなく演じるという本気ぶり(以上、引用)
有田が、滝沢カレンをコント作家に指名したのは「生まれも育ちも日本なのに日本語の会話や言語感覚がとびまくっている」というキャラクターに注目したからだろう。端的に言うと、この企画は「新しいことを考えろ」と言われ続けて、頭が混乱した新人の放送作家が出すような企画である。「逆に考える」という発想法の第一項。古手の演出家には一瞥もされない企画である。
おそらく何万回も提案されて実現しなかった企画のひとつだ。しかし、それが実現してしまった。しかも最もハードルが高いと思われるNHKで、だ。これはメディアゴン編集部としては興味を持たざるを得ない。
[参考]笑えないNHKバラエティ「LIFE!~人生に捧げるコント~」はなぜ続く?
<滝沢カレン先生 コント第1作品目は「ありがとうを伝える会」>
何気ない「ありがとう」の感謝の言葉を、もっとフィーチャーして世の中に広めようという団体をめぐるコントである。団体のリーダーにおぎやはぎ・小木博明、サブリーダーにくりぃむしちゅー・有田哲平、訪ねてくる学生にハナコ・岡部大。小木はテンションが低くても普通のセリフが言える役者で、岡部は手足のさばきがきれいなコメディアンで、有田は熱演派で作家の資質も持っている。キャスティングは見事だ。
さて、コントの内容だが、驚くことに(スタッフのサジェスチョンはあったとは思うが)きちんと設定が出来ている。「ありがとう」を普通に言わないという設定さえあれば、手練れのコメディアンなら台本なしのアドリブ入れまくりで笑いをとることが出来るだろう。ところがこれは一字一句台本通りというルールである。
NHKの番組ホームページに滝沢カレンが書いた台本が掲載してあるが、本当に台本通りである。
客入れなしのスタジオ収録だから、演者にはコントのリアクションは伝わらない。スタッフ笑いも消してある。淡々とコントは進む。見ている僕は一切笑えない、だが、コントが終わるまで、全く飽きることなく見てしまった。さすがに滝沢はカメラまで、担当していないからNHKは渾身のカメラ割りでコントを笑える物にしようとしている努力だけが伝わる。
総合的には笑いはなかったが、結果はつまらなくなかったのである。これは、設定と、芝居と、カメラワークの力であると思わざるを得ない。
<滝沢カレン先生 コント第2作品目は「罠と男とジャングルで」>
ジャングルに籠もって50年の師匠(有田)とその弟子(ミキ・亜生)は、ジャングル中に罠を仕掛けて観光客の邪魔をしていた。そこに探検隊員(アンジャッシュ・児嶋一哉)がやって来て…というコントであるが、残念ながらこれは設定が甘い。おもしろい罠のアイディアを100コ考えて添付しないと、コント会議は通らない。
こちらの方は、飽きた。飽きたが、目を見張ったのはジャングルのセットの豪華さである。さすが、皆様の受信料で運営されているNHKの予算の多さである。
このコント、見るべきものは美術さんの努力だけであった。コントのあいだには有田と滝沢のトークが差し込まれるが、それよりも聞きたかったのは、有田1人の番組をやってみての意義に関する独白であった。
有田哲平は番組の総責任者・プロデユーサーを名乗っているが、[有田P]の呼称は演出上のシャレであることを祈っている。番組が長くなると演者が本当のプロデユーサーのように振る舞うようになることがよくあって、それは番組にとって不幸なことであるからだ。
この企画をまたやるかの決定権はNHKのプロデユーサーが持っているべきだし、番組は自己満足する為につくるものではないことを有田哲平はよく知っているだろう。
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