安倍内閣あいまい優柔不断支離滅裂コロナ対応-植草一秀
メディアゴン / 2020年3月25日 21時31分
植草一秀[経済評論家]
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「これから1、2週間が、感染が急速に進むか収束できるかの瀬戸際」と宣言されたのが2月24日のこと。この2週間は3月9日に終わった。その時点から、さらに2週間の時間が流れた。全国一斉の学校休校が要請されて実施されたが、その効果の判定もなく、一斉休校は取り下げられた。3月19日に専門家会議が開かれたが、専門家会議が提示した方針は不明確なものになった。
「瀬戸際」とはなんだったのか。
「瀬戸際」を通過して、どちらに移行したのか。
専門家会議は、国内は持ちこたえているとしながら、欧州のように患者が爆発的に急増する「オーバーシュート」が起きかねないとの懸念も示した。大規模イベントについては主催者に慎重な対応を求めつつ、どうしても必要と判断する場合は、密閉空間の回避など十分な予防対策などを講じた上で実施すべきだとした。何も言っていないに等しい。
学校は、感染が確認されていない地域では再開も可能とする一方、感染拡大地域では、「一定期間の休校も選択肢」とした。「瀬戸際の1、2週間」がどのような結果になったについての説明もない。
3月22日にはキックボクシング団体「K-1」の大規模なイベントが当初の予定どおりさいたま市で開かれた。また、3月1日には東京マラソンが、3月8日には滋賀県、愛知県でマラソン競技が実施された。東京マラソンでは7万人の市民が濃厚接触する状況が生み出された。
オリンピック組織委員会は「復興の火」展示などを強行しているが、これらのイベント開催によって多数の市民の濃厚接触状態が生み出されている。感染を防止しようとしているのか、感染を促進しようとしているのか判別がつかない。
安倍首相は2月29日の記者会見で、「かかりつけ医など、身近にいるお医者さんが必要と考える場合には、すべての患者の皆さんがPCR検査を受けることができる十分な検査能力を確保いたします」と述べたが、PCR検査は拡充されていない。安倍内閣は「もちこたえている」と主張するが、広範な検査を実施していないのだから、「もちこたえている」のか、「もちこたえていない」のかの判定もできない。
「かかりつけ医など、身近にいるお医者さんが必要と考える場合には、すべての患者の皆さんがPCR検査を受けることができる」と表現しながら、検査の窓口を固く閉ざしたままだ。日本に存在する医療機関は11万を超えている。しかし、安倍内閣は全国に850しかない「帰国者・接触者外来」にしかPCR検査実施の権限を与えていない。「帰国者・接触者外来」で診断を受けることができるのは、「帰国者・接触者相談センター」が許可した者に限られている。国内でのPCR検査実施累計人数は3月5日時点で約6000人。
3月21日時点で約18000人である。3月5日から3月21日までの期間の1日当たり検査人数は700人程度でしかない。
安倍首相の発言をよく見ると、「かかりつけ医など、身近にいるお医者さんが必要と考える場合には、すべての患者の皆さんがPCR検査を受けることができる」だ。「ようにいたします」とは言っていない。
「かかりつけ医など、身近にいるお医者さんが必要と考える場合には、すべての患者の皆さんがPCR検査を受けることができる」
「十分な検査能力を確保いたします」としか言っていない。これは「詐欺師の作法」だ。
「かかりつけ医の判断でPCR検査が行われない」と批判が生じたときに、「検査能力を確保する」とは言ったが「検査を実行する」とは言っていないと反論するのだ。日本では重症患者と接触者にしか検査を行わない運営が貫かれている。したがって、確認感染者数と死者との比較から算出される致死率が極めて高くなっている。日本政府が公表している感染者数は感染者の一部に過ぎないわけで、安倍内閣は国民に対しても、海外に対しても、この点を明確に説明する責任を負っている。
最大の問題は、無症状と軽症の感染者が確認されないために、この人々が感染の爆破的拡大をもたらす可能性が高いこと。感染抑止を最優先に位置付けるなら、各種イベントの開催を全面的に抑止するべきである。通勤時の満員電車などの状況を排除する施策を示すべきだ。感染防止を掲げながら、各種マラソン競技、聖火リレー、復興の火展示行事などを強行することに根本的な矛盾がある。矛盾だらけの支離滅裂対応を続けるなら、結局は重要な目標を何一つ達成できないことになる。
安倍内閣のあいまい、支離滅裂、優柔不断な対応が、「二兎を追う者は一兎をも得ず」の結果をもたらす原因になる。
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