<安倍首相、腹を括くって戦え>コロナに強権も忖度も通用しない
メディアゴン / 2020年4月17日 18時51分
両角敏明[元テレビプロデューサー]
***
『えっ?本気で戦ってるんじゃないんですか?「本気で戦って下さい」って総理大臣が言ったんじゃないんですか?』4月9日TBSテレビ「ひるおび」で司会の恵俊彰が投げかけた言葉に、コメンテイターの田崎史郎、八代英樹がたじろぎました。
4月7日安倍総理大臣は緊急事態宣言を発しました。長い「瀬戸際」が「崖っぷち」になり、「緊急」に厳しい対応をすべき「事態」になったという宣言です。だから特措法を適用し、出来ることを「緊急」にやるのだと国民は受けとめました。ところが、
「まずは「自粛」をお願いして、その効果を2週間ほど見てから・・・」
ウソでしょ、「自粛」のお願いなら国民はとっくに聞いてました。しばらくその効果を見るなら緊急事態宣言なんていらないじゃありませんか。緊急なのに2週間も様子見でいいんですか、って誰しも思います。
安倍総理は、専門家会議の意見を論拠として、国民が8割の行動自粛をすれば感染拡大は防げると言いました。同時に2週間程度その自粛効果を見定めるとしたのです。あたかも専門家会議が2週間の様子見を進言したかのように聞こえました。しかしこれは安倍政権お得意の印象操作でしょう。「2週間様子を見る」などと専門家会議が言うはずがないのです。
これを証明する事実があります。安倍総理が論拠とした8割説を計算したのが北海道大学教授・西浦博氏です。その西浦氏ご自身が政府の様子見説明を知ってこう言っているのです。
『休業要請などを2週間待ってからというニュースに耳を疑いました』(4月9日BS-TBS「報道1930)
さらに安倍政権の方針に対し怒りの発言が続きます。
『日本は手遅れに近い。対策を強化しなければ日本では数十万の死者が出る可能性がある』 WHO上級顧問・渋谷健司氏(4月9日テレビ朝日「羽鳥慎一モーニングショー」)
『2週間様子を見るでは東京はもたない』 東京都医師会会長・尾﨑治夫氏(4月9日TBS「ニュース23」)
なぜこんな事になったのか、理由は明快です。オリパラ開催を強く意識して世界に感染実態を小さく見せることに腐心していた政府は、感染の世界的蔓延により延期はするものの来年7月23日開催という確約を素早く取り付け、すぐに安倍総理の任期中オリパラ開催が決まります。これでやっと日本の感染対策は1段ギアが上がりますが、それでも安倍政権は経済への影響懸念を優先し、後手後手でぬるい対応に終始していました。しかし、感染拡大は止まらず、危機感の高まりに追い込まれて発出したのが緊急事態宣言です。
[参考]コロナ被害「補償」は自己申告?! 支払日不明の緊急施策では生命が危ない
緊急事態宣言により発布される特措法上で強い権限を持つのは都府県知事です。しかし危機感のうすい安倍総理の頭の中は「コロナ」より「経済」です。小池都知事が考える感染抑止手段は安倍官邸の考えとはかけ離れたものでした。あわてた安倍政権は緊急事態宣言を発する当日になって、特措法の「対処方針」を変更するという荒手に出ます。各知事に「国との協議」を義務づけ、「総理の自粛要請の効果を見極めること」という一文を加えて知事権限の主要部分を縛ったのです。これを知った小池都知事が言ったのが
「社長だと思っていたら、天の声がいろいろ聞こえてきて、中間管理職になったようだ」
冒頭の恵俊彰の言葉にもどります。
『えっ?本気で戦ってるんじゃないんですか?「本気で戦って下さい」って総理大臣が言ったんじゃないんですか?』
自民党・二階俊博幹事長 『8割にするとかってできるわけないじゃないですか』
自民党コロナ対策本部・新藤義孝議員 『緊急事態という観点から憲法議論を進めたい』
これでは自民党がコロナと本気で戦っているとはとても思えません。
2ヶ月もたって、PCR検査実績は進まず、医療従事者はマスクはおろか感染防護具の枯渇に悲鳴を上げ、病床確保はままならず病院代替施設不足も明らか、保健所をはじめ現場スタッフは疲弊しきっています。加藤厚労大臣はいつまでたっても「進めていきたい」「文書でお伝えをしている」「検討を進めている」などと言い続け、西村特措法大臣はぺらぺらと中身の薄い説明をするばかり。菅官房長官は存在の気配を消し、麻生副首相や閣僚も本気で戦っている姿は見えません。肝心の安倍総理からして覇気なくやってるフリばかり。事業規模108兆とゴマかしても真水はその1/4ほどのケチぶりがばればれです。
新型コロナとの戦いに政府の誰が、満身の迫力と熱を持って国民に訴えたでしょうか。緊急事態宣言の安倍総理の言葉に人々を突き動かす溢れるような危機感がありましたか。
政府はやってるフリと出来ないことの言い訳ばかり。政策決定がどこで行われているのか、誰が公式のスポークスマンなのかも分かりません。まるで政策決定は総理周辺の官邸官僚の思いつき、厚労省や各省庁は下請機関、スポークスマンはテレビで安倍さん擁護に汗をかく田崎史郎氏であるかのようです。そして毎日感染者はぐんぐんと増え続けています。
そんな中、もうすぐ466億円の布マスク2枚が届くそうです。466億円あれば、危険な現場で疲弊するスタッフ20万人に23万円づつ配れます。軽症者隔離用ホテルなら1万室を2ヶ月間借りられます。保健所職員応援アルバイト10万人を1ヶ月半雇えます。布マスクなら自分で作れます。
また、恵俊彰の言葉に戻ります。
「本気で戦って下さい」って総理大臣が言ったんじゃないんですか?
この期に及んで、くり返し責任逃れを口にする安倍総理。もし無為により多くの命を失えば、その責任から逃れることはできません。ウィルスは忖度をしません。ウィルスは強権にひれ伏しません。
安倍総理、ご自分こそ本気で戦って下さい。
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