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安倍首相は記者会見でマスク着用せよ -植草一秀

メディアゴン / 2020年4月22日 1時0分

植草一秀[経済評論家]

***

安倍首相は記者会見でマスクを着用するべきだ。会見場での人と人の距離を確保したというが、最前列の記者と発言者である安倍首相の距離は2メートル程度しかない。発言するたびに飛沫が空中に飛び散る。その飛沫を記者が浴びることになる。カメラ写りを気にしてのことなのか、布マスクの小ささを気にしてのことなのか。マスクを着用しない姿勢に自己利益優先の姿勢が浮かび上がる。

多くの関係者が記者会見するが、ほぼ全員がマスクを着用している。飛沫を他者に浴びせないための配慮だ。マスク着用についてさまざまな見解が示されているが、マスク着用が他者への感染を防止する効果を有する点については異論がない。大きな声を張り上げて発言するのだからマスク着用は最低限のエチケットだ。記者会見でイタリアの記者がこの点を指摘したにもかかわらず、安倍首相はこの日もマスクを外して記者会見を行った。マスク着用を国民に呼びかけていることとも矛盾する。

会見に出席する記者は安倍首相のマスク着用を求めるべきだ。記者クラブ制度があるなら、記者クラブからマスク着用を要請するべきだ。マスクを着用しないなら会見を開かないと申し入れるべきだ。安倍首相の行動は最低限の常識をも踏まえない暴挙だ。

安倍内閣の最大の誤りはPCR検査を妨害してきたこと。

・入院病床数に限りがあり検査を拡大すると医療崩壊が生じる

・検査に伴う感染が懸念される

・検査の誤差が存在する

・感染が確定しても治療法がない

が理由とされた。

入院病床数の問題は、感染者を必ず入院させるとしていたことに問題がある。コロナウイルス感染を指定感染症に指定し、全員入院隔離としたことが問題なのだ。感染者の8割が軽症とされているのだから、軽症者は入院させずに対応することとすればよいだけのこと。現実に、感染確認者が増加して入院させない対応が取られ始めている。初めから、この方針を採用すべきことは誰にでも分かる。検査に際して二次感染が生じることは防がねばならない。

しかし、これも諸外国の事例を参考にすればよいだけで、二次感染の発生を防ぐ検査方法は存在する。理由にならない。感染が確定しても治療法がないというのも理由にならない。早期に感染を確定できれば、重篤化する恐れの高い感染者に対して予防的措置を講じることができる。最大の問題は軽症感染者が感染拡大の主因になっていること。この点を踏まえてWHOも世界各国も「検査と隔離」を基本に据えてきた。

日本感染症学会と日本環境感染学会は4月2日に「新型コロナウイルス感染症に対する臨床対応の考え方」を発表して、「PCR検査の原則適応は、「入院治療の必要な肺炎患者で、ウイルス性肺炎を強く疑う症例」とする。軽症例には基本的にPCR検査を推奨しない」としたが、PCR検査抑制を正当化する合理性のない主張だ。

「軽症でも入院が必要になるなど、医療資源を逼迫(ひっぱく)させてしまう可能性が学会では危惧されて」おり、「限られた資源は生命の危機に陥る可能性が高い重症者に集中的に投入すべき」というのが理由とされているが、軽症者を一律に入院させるという対応に誤りがあっただけのことだ。軽症者は入院させずに対応することを基本とした上で、検査を拡充することが当初から必要だった。

繰り返しになるが、軽症感染者が感染を拡大させる可能性は高く、現に軽症感染者が日本における感染爆発をもたらしている可能性が高い。感染が拡大していれば重症患者がもっと多いはずとの反論があるが、肺炎で死亡している者の多くがコロナウイルス感染による死者である疑いが濃厚に存在する。コロナウイルスによる死者が実態よりもはるかに少なくしかカウントされていない可能性が高いのだ。安倍内閣はPCR検査を抑制してきた誤りを認めて、PCR検査の拡充を直ちに実行する必要がある。

そもそもの誤りはダイヤモンドプリンセスの乗員・乗客3711人に対して273人にしかPCR検査を実施せず、全員を船内に監禁したことだ。そのためにダイヤモンドプリンセスの悲劇がもたらされた。同じ悲劇がオールジャパンでいま引き起こされている。PCR検査抑制の方針を定めた関係者の責任を問う必要がある。

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